第32話 side ①学校。
『白瀬悠真』その存在は白王学校に新たな歴史を刻む者となった。
白王学校は『名のある名家が優秀な指導者と設備で更なる成長を遂げる』という目的で創立された学校であった。その目論みは見事成功し、名だたる名家がこの学校を卒業し、国を支える役割を担っている。
そしてその優秀な血を絶やさないようにと、白王を卒業した者達の子供に推薦権を与えるだけでなく、名家の中で最も優秀な子供には『首席』という目に見える地位を渡した。
この制度はOBにとって、自分の家だけでなく我が子が誰よりも優秀で優れた存在であることを示したものでもあったので、より多くのお金を学校に寄付していた。
だから今年もそうなると誰もが思っていたが、『白瀬悠真』という人間が、それら全ての思惑を破壊した。
「――バン!! 納得できません。一般入試からの生徒に首席を与えるなど愚行もいいとこです!!私が卒業した白王は『血と家と能力』の三つを元に人を判断してきたはずです。確かに白瀬悠真が持つ能力は認めましょう。
ですが、他の二つを満たしていません。そんな者に『首席』という地位を与えては、我が子だけでなく、他の生徒に対しても示しがつきません。ですので、校長‥‥ここは『首席の変更』をお願いしたい。」
そう校長に訴える人物は、かつて白王を卒業し今は製薬会社のCEOとして日本を支える存在となっていた。かつて自分が学んだこの学校に子供を入学させ、首席という地位を取らせる為に色々と動いてきたが、今日の入試の結果を見て納得できなかったのだろう。
何人かのOB生を連れて直訴をしていた。
だが、そんな直訴をしたところで校長の考えは変わらず、「――無理じゃ」と一言で返されてしまう。
「なぜですか!?私の言っていることは間違っていますか??」
「大いに間違っておる。まず、お主が言っておった『血と家と能力の三つ』を元に判断するという言葉じゃが、少し意味をはき違えておる。この言葉の意味は、この三つ全てを持っていなければいけないというわけではない。
この言葉の本当の意味は『優秀な能力を持つ者が名家に多く存在する。故に、その血と家を見る』という意味じゃ。白瀬悠真が持つ能力は本物じゃ。例え今は一般であったとしても、その先の未来では、あ奴はこの国を代表する者に成っておるわ。
それにじゃ、そんなに白瀬悠真の首席が気に入らんのなら、お主の子供が越えればいい話じゃ。あ奴の話では、首席には拘りがないどころか、めんどくさがっておったぞ‥‥言葉にはしておらんかったがなぁ。
だから次の試験では手を抜くと、ワシは思っておる。
そんな手を抜いている者に勝てぬほど、お主らの子供は能力が無いのか?ワシが親なら、こんなところにわざわざ足を運ばず、一秒でも多く子供の教育に時間を掛けるがの~~。
お主らも薄々は気付いておるのじゃろ?今だかつて誰も満点を取ったことがないテストで、満点を取った白瀬悠真の能力を。
だから、お主らはワシに直訴しておるのじゃろ?実力では勝てぬから、権力と金を使って、その場所から引きずり降ろそうとしておるのじゃろ?
だからハッキリと言っておこう。どれだけ圧力を掛けようとも、金を使おうとも無駄じゃ!!白瀬悠真の首席は絶対に覆らん!!とっとと家に帰れ!!馬鹿者がッ!!」
「クッ‥‥!!」
OB達は苦虫を嚙み潰したような苦しい表情で部屋を出て行った。そして部屋に一人残った校長は、「はぁ‥‥」とため息を吐いて外を眺めるのだった。
あのような者が、わが校の卒業生とは‥‥恥ずかしいのう。年々、その生徒の質が落ちておる。今の名家の人間は、ぬるま湯のような甘い生活で生きておる。そんな甘い生活では、この世は生きていけん。
絶対にという強い覚悟と根気が必要なのじゃ。だから、あ奴と初めて言葉を交わした時は驚いた。
子供とは思えんほどの立ち振る舞いに、服の上からも分かるほど鍛え抜かれたその体、あの入試で満点を取るほどの学力と、どの能力をとっても全ての生徒を上回っておる。
ただ、唯一の不満があるとすれば――その欲の無さじゃな。




