第30話 探索者。
「えっ‥‥と‥‥探索者登録ですか?」
「はい、そうです。もしかしてここじゃ出来ないですかね?でしたら違うギルドに行こうと思っているんですけど。」
「全然出来ます!!ちょっと待ってくださいね‥‥すぐ準備しますのでっ!!」
と、受付の人は何処かに行ってしまった。
ここが八王子ギルドか。噂通り全く人がいないが、それがいい。それを狙ってここで登録することを決めた。ここで俺が活躍すれば八王子ギルドの評価は上がり、その功績は全て俺一人のものとなる。
そうなれば――Sランクへの道も近くなる。
と考えていると、受付の人が戻ってきて、その手には水晶と紙が握られていた。
「すいません、大変お待たせしました。なにぶん新規の登録者が来るのは久しぶりのことだったので、手際が悪くてすいません。
それでは登録の方を始めていきたいと思うのですが、まず登録を行う為にはいくつかの書類が必要となります。まずは鑑定式の時の『鑑定結果』です。これが無ければ登録者様が持っている能力を確認することが出来ませんので、絶対に必要となります。
そして身分を確認する為の身分証ですね。『免許証』『マイナンバー』『パスポート』『学生証』と、顔写真が付いていればどれでも大丈夫なのですが、登録者様が未成年だった場合に限り『親の同意書』が必要となりますが、これらはお持ちでしょうか?」
「はい。こっちが鑑定結果の書類で、これが学生証と親の同意書です。」
「は、拝見させて頂きます。」
問題ない。全て事前に確認済みだ。
こんな書類如きで足止めを食らうわけにはいかない。
「こ、これは!!」
と、渡された書類を確認している受付の人が大きな声を出して驚くと、今度は何か言いたそうに俺の方を見て来たので、俺は「何かありました?」と尋ねた。
すると受付の人は心配そうな様子で「‥‥本当にここで登録をしていいんですか?」と聞いて来た。
あぁ‥‥なるほど。俺の能力を見たのか。
そうだよな。7年前までの八王子ギルドであれば、喜んで俺のことを迎え入れてくれただろうが、今の八王子ギルドにはギルドとして俺に出来ることは余りにも少ない。
そんなギルドにあなたのような人が登録をしていいのかと、あなたの力ならもっと力のあるギルドを活動場所にする方がいいと、受付の人も分かっているから確認しているのだ。
なら、それは問題ない。俺はこの何もない場所から始めることを決めた。
「問題ないです。実は自分‥‥7年前のダンジョンブレイクの被害者なんです。」
俺がその事実を伝えると、受付の人の顔色が急に悪くなった。恐らくだが、過去にも俺と同じような人がやってきて、色々と言われてきたのだろう。
「あ、別に嫌がらせとか謝罪を求めてきたわけじゃないです。あれは自然災害と同じで、どれだけ準備をしていても被害者は出ると思っているので、全ては――運が悪かっただけです。
これは自分もですが、八王子に住んでいる人も‥‥そして、ギルドの方もね。
だから、今度はその運の悪いことが起きたとしても、自分の力でどうにか出来るだけの力が欲しいと思ったのと、自分と同じで運が悪かった八王子ギルドも何とかしたいと――俺はこのギルドから始めることにしたんです。」
「な、なるほど‥‥そ、それは‥‥本当に立派な考えだと思います。」
受付の人は過去のことを思い出して、涙を流していた。
彼女にも色々と思うことがあったのだろう。ギルドの受付の仕事は他の所でも出来るのに、彼女はこの八王子で働いている。それは彼女なりの謝罪でもあり覚悟で「私は逃げない」と、この事実に向き合い続けるつもりでいたのだろう。
「一緒にこの八王子ギルドを変えていきましょう。自分も手伝いますから。」
「は、はい‥‥よろしくお願いします。」
◇
この日、八王子ギルドに白瀬悠真が加わることになった。
この事実は他のギルド、そして大型クランにも伝わり、なぜ八王子を選んだのか――その動向を伺うことになるのだった。




