第23話 side ①雪
「次、白河 雪。」
「はい。」
体内にあるマナを集約させて1つの魔弾を作り上げ、それをゆっくりと手の方へと動かして、最後の仕上げに一番得意の氷を魔弾へと混ぜて――氷魔法を作り上げた。
全ての手順を終えて目の前にある訓練用人形へと魔法を放った。放たれた氷魔法は冷気を放って通った地面を凍らせながら人形にぶつかり、人形はカチカチに凍っていた。
「数値は2300だ。流石は未来のSランク候補だな。」
「ありがとうございます。」
私は教員に感謝の言葉を述べて後ろへと下がっていくと、私の魔法を見ていた他の生徒からの言葉が聞こえてきた。
「やっぱり凄いな、氷姫は。」
「あぁ、あの容姿にあの魔法だもんな。やっぱり“天才”は違うな。」
「氷姫と付き合えるなら、俺は何だってしてやるぜ」
「やめとけ、お前なんて相手されるわけないだろう。」
「ああいう選ばれた人に合うのは、同じ“選ばれた人”だけだ。例えば――」
と、私はその先の言葉が耳に届かないように足早に部屋に戻って行った。
◇
私は部屋に戻るとベットに倒れて、昔のことを思い出していた。
私には大切な幼馴染がいる。彼の名前は白瀬 悠真で、私は悠真くんと呼んでいた。いつからそう呼ぶようになったのかは覚えていないけど、私のことだから何の脈絡もなく、いきなり呼び始めたんだと思う。
あの時の私はいつも悠真くんに迷惑を掛けていたと、母さんから色々なエピソードを聞かされていた。思い返してみると、迷惑を掛ける相手はいつも決まって悠真くんだった。
昔の自分に代わって謝るね‥‥本当にごめん。
そんな我儘を言えるのは、多分、私が悠真くんのことを安心できる存在として思っていたからだと思う。悠真くんは知らなかったと思うけど、あの頃の私の家は凄いギスギスしてて、子供ながらにその空気感を察知して何処か本音を隠していたんだと思う。
だから、ママと悠真くんの家族と居るときだけは、本当の自分になれていたんだと思う。
そんな大切な悠真くんと、ああいう別れになったのは‥‥辛いよ。それでも、悪いのは全部、私なんだ。悠真くんは何も悪くない。全部、私が勝手に決めて一方的にさよならした結果なんだよね。
でも、やっぱり私の隣に君がいない生活は本当に苦しい。私が本当の私で居られる大切な居場所が、お母さんだけしかなくて、そのお母さんとも会えてない。
探索者の学校は全寮制で、卒業するまでは帰ることはもちろん、敷地内から出ることも出来ない。この場所は、私にとっては孤独の監獄なのだ。
でも、逃げることは出来ない。なぜなら、この道を選んだのは私だから‥‥そろそろ起きて勉強をしないと。
私は無理やり体を起こして机に向かおうとした、その時だった。
プルプル~♪ プルプル~♪ プルプル~♪とスマホから着信音が鳴った。電話を掛けて来た相手は“天童 秀”からだった。
私はその名前を見て全身から鳥肌が立った。
「‥‥天童‥‥本当にこの男は‥‥気持ち悪い。」
天童 秀。
この学校で私と並んでSランク候補なんて言われてる、あの男。
大っ嫌いではあるがその実力は本物で、この男の性格は“女誑し”だ。既にパーティーを組んでおり、パーティーメンバー全員が女子なのだ。
ならば当然、この男は私にも声を掛けて来ている。
毎回、気持ち悪い声で「いい加減、僕のパーティーにおいでよ。」とか「もし僕のパーティーに入ってくれたら一番にしてあげるよ、姫」とか「その氷も僕が溶かしてあげよう」と言ってきて、とにかく気持ちが悪い。
今はその名前を見るだけで吐きそうになる。せっかく大好きな悠真の顔を思い出していたのに、こんなクズ男に邪魔されるなど不快過ぎて死にそう――と、私はスマホの電源を落として勉強を始めた。
この先で必ずもう一度、悠真と話をする為に、私は努力しないといけない。




