第22話 訪問者。
「悠真くんの能力は素晴らしいものです!!この国を代表する探索者になれる素質があります!!ですので、その素質をもっと伸ばす為にも、我がクランにッ!!」
朝からこのようなクランの人やら政府の人間が家に来ては勧誘の言葉を掛けてくる――本当に嫌になる。誰かの為に行動するとか、力を使うなど嫌だ。俺は俺の為と自分の家族の為にしか、この力は使わない。
だから、これに対する返事も決まってる。
「お断りします。」
俺はキッパリと断ると、向こうは断られると思っていなかったのだろう。
出せるだけのお金と育成の為の設備と装備を用意していたというのに、まさかのNOという返答が返ってきて、なぜダメなのか?その理由を聞かざるを得ない。
「そ、その、どうしてなのでしょう?まさか他にもクランの勧誘があり、そっちの方が内容が良かったからでしょうか?でしたら、その内容の10倍の物を用意しますが?」
「他のクランの勧誘はありました。内容的にも、そちらが提示してきたものよりも良い条件を提示してくれましたが‥‥お断りしてます。」
「それは‥‥なぜですか?」
「うーーん。なぜと聞かれても、ただ入る気がないからですよ。じゃあ、自分はこれで。」
と俺は席を立って、後のことは両親の二人に任せることにした。
二人には俺の意思とやりたいことをちゃんと伝えて、向こうもその意思を尊重してくれているので、俺の意思を無視して独断でクランと契約することはない。絶対ない。
そうして俺は自分の部屋に戻ると、俺の部屋をさも自分の部屋のようにくつろぐ姉がいた。
「なにしてるの?」
「なにって、見たら分かるでしょ?横になってるの。」
「それは知ってる。何で俺のベットで横になってるのかを聞いてる。横になるなら自分のベットでなればいいでしょ?」
「別にいいでしょ。それより話はどうなったの?あんたクランに入るの?」
「その話は昨日したでしょ。何処のクランにも入るつもりはないよ。俺は受験して私立の中学に通いながら、一人でダンジョンに潜る。」
「そっ。別にあんたが決めたことだからとやかく言うつもりはないけど、本当に一人で大丈夫なの?あんたには探索者として素質がある。だけど、それがあるからと言ってダンジョンで怪我をしないわけじゃあないでしょ?」
「まぁ、そうだろうね。危険な目に遭うこともあるだろうね。」
「なのに、そのリスクを回避しようとしないのは、私が知ってる悠真らしくない。私が知ってる悠真なら、例え危険な道を選んだとしても必ず保険は掛ける。例えば、大手のクランのサポートを受けるとか、頭を使ってね。
でも、あんたはそれを拒んだ。私が知りたいのは、そこの部分だよ。」
姉の言葉に俺は何も言い返すことができなかった。なぜなら姉の言葉は正しいからだ。俺の行動は、姉の言葉で言うなら俺らしくないと自分でも分かっている。本当に探索者になるなら、ここで大手のクランや政府との関係を持つことは必然と言えるが――それはしたくない。
これは俺の‥‥プライドだ。
そう、根源にあるのは雪との別れだった。雪は企業と大手の力を使って成功を掴んだ。その行為と選択は間違ってないが、俺はこうも思った。そんなの“俺に頼ればいいじゃないか”と。
だから、俺は誰の力も借りずに、雪や他の探索者よりも高みへ行くことで、個人の力の価値を証明しようとしている。
もちろん、この行為には合理性もなければ筋も通ってないと分かっているが、それでも曲げることは出来ない。これは俺のプライドだからだッ!!
「そんなの‥‥プライドだよ。」
隠すことなく、思っていることをそのままストレートに伝えた。まさか、俺の口からプライドなどと言う言葉が出てくるとは思っていなかったのだろう。姉は驚いた表情をしていた。
「プ、プライド?あ、あんたが?」
「そう、俺が。俺は俺一人でダンジョンで成果を出してランクを上げて‥‥Sランクまで行く。これが、俺のプライドだよ。この考えには安全もないし、保険もない‥‥ただのエゴだ。でも、それでも俺はこのプライドを捨てない。絶対にやり遂げる!!」
俺がそう伝えると、姉は何故か嬉しそうな表情をしていた。そして――
「あんた‥‥まだ顔が出来たんだ。うーーん、そういうことなら好きにしな‥‥私的にも色々と理解出来たから満足だ。」
――と言って、部屋を出て行った。




