第20話 雪のいない世界。
雪と離れてから俺の生活は、雪と出会う前の俺に戻っていた。
誰とも仲良くすることもなく、必要最低限の会話だけで常に一人で行動し、成績だけはトップを取る俺をクラスメイトも先生もどう接すればいいのか分からず、前世と同じように俺は孤立した。
だが、それは俺にとっても嬉しいことだった。
雪との別れを経験したことで、結局、友達や親友を作っても同じように離れ離れになって余計に辛い思いをするなら“もう誰とも親しくなる必要はない”と、固く心が決めてしまっていた。
その決意を元に、俺の小学校の六年は悲惨なものだった。誰かと仲良く写っている写真は一枚もなく、六年生の時に一言も“ありがとうございました”の一言で済ませていた。
そんな俺も今日から中学生になる。
中学生はまだまだ子供なのだが、年齢において今の日本では成人式よりも重要な式がある。
それは“鑑定式”だ。鑑定式とは12歳の子供を対象に自身の能力をチェックする式の事で、成人式と同じように地元によって式場が決まっており、その式場に鑑定のスキルを持った人がやってきて順番に鑑定をしていって、探索者としての素質を検査する。
本来であれば俺と雪は、このタイミングで探索者の素質を見出されて、その選択を一緒に決めることができたが、今は‥‥俺一人だ。
あと、姉に関してだが、姉は両親同様にスキルを所有していなかった。本人的に予想はしていたのだろう、探索者としての素質がないと分かっても特に落ち込む様子はなく「ふーーーん」ぐらいのテンションだったので、流石は能天気の姉だと思った。
「あんた緊張してる?」
と話しかけてきたのは、そんな能天気な姉だった。
姉は小学、中学の間でとてつもない変貌を遂げており、その顔は誰が見ても「美人」と言ってしまうほど整った顔に加えて、誰もが「憧れる」スタイルを手にし、成績に関しても研究者の両親の才能を濃く継いだのだろう、常にトップだった。
そんな容姿と頭脳を持った姉には当然、男子はこぞって告白をしていた。告白された回数は数千を超えているとも聞くが、今だに特定の誰かと付き合ったという報告は聞いていないので、まだ誰とも付き合ったことがないのだろう。
まぁ、俺から言わせれば、こんな凶暴で品位の欠片もない人と付き合える人物などいな――イテテ!!
「痛いよ。なんでいきなり抓るのさぁ!!」
「あんたにバカにされた気がしたから。」
「ほら?凶暴だろ?(小声)」
「ん?何か言った?ギロ!!」
そのメツキに俺は忠犬のような態度で「いえ何も言ってないです。」と返した。
「そう。それで、緊張はしてる?」
「いや別にだね。例え素質が無いとしても人生が決まるわけじゃあない。ただ可能性の一つが潰れるってだけだから緊張も不安もない。」
「‥‥可愛くない答え。まぁ、あんたらしいか。」
「可愛くないは必要ないでしょ。逆に聞きたいね、可愛い答えって奴よ。『あ~もう、最悪ぅ~素質なかったんですけど~~』みたいな答えですか?」
そうバカにした感じで答えると、姉は俺の肩を掴んで笑顔で「次、その喋り方をしたら‥‥殺す」と言ってきた。
流石の俺も「は~~い、分かりました~~。」と答える勇気はなく、すいませんと謝るのだった。
そんなバカなやり取りをしていると、とうとう俺の番になったので「いってくる」と言って鑑定士が待つ部屋に向かうのだった。
姉にはあんな答えを言ったが、ぶっちゃけ俺にとってはこの鑑定式自体が意味がない。自分のステータスもスキルもちゃんと把握出来ているし、日々のトレーニングを欠かしたことはない。つまりだ。俺に探索者の素質がないことなどあり得ないのだ。
それが分かってるから緊張も不安もないわけだが、周りの反応は全然違っていた。
鑑定を受ける前には希望を目に持っていたのに、鑑定が終わって出てくる時にはその目は希望ではなく絶望に変わっていたり、俺と姉が特別なだけで、酷いとこでは素質がないと鑑定されて子供を捨てる親までいるそうだ。
そのことからも分かるように、この式は子供だけじゃなく親にとっても人生を大きく左右するものなんだろう。まぁ、家の親は「適当に頑張ってらっしゃーーい」と言っていたので、本当にあの姉にこの親ありという感じだ。
と考えていると――ガチャと目の前の扉が開いた。
どうやら鑑定が始まるらしいと、部屋の中に入るのであった。




