第1話 まさかのスタート。
ミスがあったので修正しました。
神様から与えられた第二の人生。
一回目の人生は最悪な物だった。その原因が神様のミスであったことには驚きもあり落胆もあったが、全てが神様のせいではないと思っている。
現に、父が連帯保証人になる前は裕福な生活を送れていたわけだし、その時点で未来のことを少しでも考えて行動していれば結果は変わっていたのではないかと思ってしまう。
だからこそ第二の人生では一回目のような最悪な物にしない為にも、自分自身の成長と努力を怠ることなく日々精進し続けることで、自分の幸せを手に出来ると俺は思っている。
だからこそ一度失ったものを、今度こそ掴み取りたい。小さくても確かな幸福を、自分の手で守れる人生を送りたい。
じゃあ、第二の人生を始めよう。
◇
目が覚めて一番最初に見たのは知らない天井だった。ここが第二の人生のスタートラインかとワクワクする気持ちで体を起こそうとするが、思うように動かなかった。
『あれ? 上手く体が動かない。それに、言葉も出ない。』
そう。体だけでなく言葉も発することが出来なかった。またあいつのせいかと神のせいにしたが、自分の手をよく見ると、その手は赤ん坊のような小さい手をしていた。
『待って。もしかしてだけど‥‥俺‥‥赤ちゃんからスタートしてる?』
そう。第二の人生は赤ちゃんからスタートだった。
いや、確かに第二の人生のスタートとは言ったけど、赤ちゃんからのスタートである必要はあったか?普通、高校か中学ぐらいの年齢からのスタートだろ。何で赤ちゃんなんだよ‥‥先が長すぎるだろ。
と自分が赤ちゃんであることに絶望していると。
「悠真、起きたの~? 見て、パパ。悠真が起きたわ。」
優しさを含んだ声で、母がそっと抱き上げてくれる。胸に触れる体温があまりにも温かくて、思わず息を呑んだ。母から“抱きしめられる”など最後いつだったのかも忘れていたが、体はしっかりとその愛を覚えていた。
母は俺の顔を覗き込みながら、そっと頬を指で撫でる。その仕草が本当に大切な宝物を扱うようで、胸の奥が少し熱くなった。
「やっぱり目元はママとそっくりだね。」
「ふふ、そうかしら。でも、鼻はパパにそっくりよ。」
父が笑いながら母の肩に手を置くと、母は照れたように微笑んだ。二人の間に流れる空気は穏やかで、どこか柔らかい。まるでこの部屋全体が温もりで満たされているみたいだった。
俺はその二人を見て、一回目の人生同様に両親に関しては“良い両親”のところに生まれることが出来たのだと思った。そう、両親が仲良くしている。それだけで一つの幸せだと言える。
二人が俺を見て話していると。
「パパ!! ママ!! 悠真は起きた!?」
と凄い元気な声が聞こえてきた。
「明音ったら、本当に元気ね。悠真がびっくりしちゃうでしょ?」
「ごめんなさい。」
少女は素直に謝り、そっと膝をついて俺を覗き込んだ。その目は好奇心と、家族に向ける無条件の愛情で輝いていた。
ほっぺをつんつんしたり、小さな手を握ったり、その仕草はどれも優しくて、嬉しさを隠しきれていなかった。
特に意識していたわけではないが、少女の指をぎゅーーと握り返した瞬間、小さく息を呑む声が聞こえた。
「か、可愛い‥‥この可愛い子が私の‥‥弟」
自分のことのように喜んでくれる姿に、胸が少し温かくなる。
どうやら姉も両親と同じように良い人間らしい。心が汚い人間は赤ちゃんを見ても何も感じるはずがなく、こんな風に愛を爆発させることなどありえない。
そして三人からの波状攻撃を受けていると、何の前ぶれもなく下腹部から猛烈な刺激を感知した。そう、うんちだ。人生初めてのうんちを感じた。
俺は母に抱かれながら、なんとかしてうんちのことを伝えようとするが伝わるわけもなく、あぁ‥‥と漏らしてしまった。そして気持ち悪くなったオムツに耐えられなくなり。
「うぇーん!! うぇーん!!」
と号泣するのであった。
◇
この世界は、かつて前世とさほど変わらない“普通の地球”だった。だが十数年前、世界各地で突然“ダンジョン”と呼ばれる領域が出現した。
地下や無人地帯にぽっかりと開いたその空洞は、内部で魔物を生み出し続け、人類に新たな脅威と役割をもたらした。
もちろん、この現象は日本も例外ではない。
北海道から沖縄まで大小のダンジョンが確認され、危険度の高い地域もあれば、比較的安全とされる地域もある。今ではダンジョンは世界の共通問題でとなっていた。
しかしダンジョンは“危険”という側面だけでは終わらなかった。
ダンジョン内部から採取される魔石──それは、石油や化石燃料に代わる“第三のエネルギー”として注目され、気づけば世界中の産業と生活の基盤を支えるほどの価値を持つようになっていた。
今では魔石を利用した新型発電所が全国に建設され、家庭用の魔石式ヒーターや調理器具も普及している。
企業は魔石の純度や安定性を競い合い、魔物の素材を扱う商社は株価が跳ね上がり、日本経済はダンジョン産資源を軸に再構築されていった。
魔石はコンビニで小型充電用のものが売られているほど一般化し、高純度の魔石は研究機関や大企業が奪い合うほど高額で取引される。
魔石一つで一家の一ヶ月分の生活費が賄えることも珍しくない。
だからこそ、ダンジョンに挑む“探索者”という職は、一気に人気職業となった。危険と隣り合わせだが、成功すれば一気に生活が変わる。
若者の間では“探索者は現実的な夢”として扱われ、専用の専門学校や育成機関まで作られている。
だが、そんな便利さの裏側では小さな不安も生まれていた。
近年、魔石の消費量が増えるほどに、ごくわずかだが世界のマナ濃度が上昇する傾向がある──と、学者や研究者の間で囁かれているのだ。
魔石を使うことで世界の魔力が活性化し、結果としてダンジョンの活動が活発になるのではないか。そんな仮説が専門家の中で静かに議論されているが、一般国民が知るのはほんの断片的な噂だけで、政府も公式発表は避け続けていた。
それでも、小規模な魔物出現や軽度のダンジョンブレイクが増えているのは確かで、ニュースでは数日に一度は小さな事故の報道が流れる。
“便利だけれど、どこか不安定” それが、今の世界の空気だった。
そして、この世界では、生まれ持つ“適性”によってすべてが決まる。
戦闘適性、探索適性、補助適性──それと何の適性もない者。その差は明確で、強い適性を持てば、それだけで未来の選択肢が広がり、適性が低ければ、どれだけ努力しても埋められない壁がそこにある。
才能が人生を左右する社会。それがこの世界の現実だった。
しかし――その“普通のルール”を適用されない者が一人だけいた。
前世で報われなかった人生を修正するために生まれ変わった魂。神の手によって軌道を正され、誰も持たない“特別な成長法則”を与えられた。
彼だけは、積み重ねた努力が確実に力へ変わり、迷わぬように“クエスト”という形で導きも与えられる。
世界中の誰一人として持たない、唯一の成長補助であった。
これは世界の仕組みではない。彼――白瀬 悠真 ただ一人にだけ許された“やり直しの道”だった。
そして今日、白瀬 悠真という赤ん坊が産声をあげ、静かに新しい人生を始めようとしている。




