第16話 事後処理。
ダンジョンから出て来た最後の魔物を倒すと、辺りのマナ濃度がいつもの濃度に戻って行った。この変化はダンジョンブレイクの終わりを知らせるものだった。
「「よしゃーーー!!!」」と探索者達が喜びの声を上げた。
ダンジョンブレイクは無事に退けることが出来たが、それでもダンジョンブレイクが残した爪痕は大きく、破壊された家、倒壊したビル、焼かれた公園と、その恐怖を示すには十分なものだった。
そんな被害を見ていた“Sランク探索者 夜空 楓花”は喜ぶことも休むこともなく、自衛隊と警察に合流して救助に参加するのだった。
私が‥‥もう少し速く来ていれば‥‥ここまでの被害は出なかった。Sランクという役割を与えられながら、その役目を満足に果たすことも出来ないなんて‥‥本当に嫌になるッ!!
夜空 楓花はダンジョンブレイクに対して深い憎しみを持っており、探索者になったのもその憎しみを晴らす為だった。それほどまでの思いを持っていたからこそ、自分の不甲斐なさに対して強い怒りを持っていたのだ。
せめて、助けられる人は‥‥全員助ける!!
夜空 楓花は残された人がいないかを「誰か!!」と声を出して探していると、道で倒れていた二人の子供を見つけた。
「君達ッ!!大丈夫???」
声を掛けるが二人が目を覚ますことはなかったが、どうやら気絶しているだけで体への外傷は何処にもなかった。
「ふぅ~~気絶しているだけですね‥‥良かった。」
と二人を抱えようとした時だった。少し離れたところにオークが倒れていたので死体を確認すると、体の真ん中にドデカい穴が空いていて、コアごと抉られていた。
どうしてここにオークが?それに死体が残っているということは、まだ倒されて時間が経っていない。つまり、他の探索者が倒したわけじゃない‥‥もしかして?と二人の子供に目が行くが、首を横に振って否定する。
「そんなわけないか。あの歳でCランクのオークを倒すなんてあり得ないよ。でも、もし倒していたとするなら、それはSランクすら超える‥‥逸材の誕生だね。」
と楓花は二人を抱えて救護班に渡すのだった。
◇
《八王子 ギルド 視点》
「‥‥はぁ。何とかダンジョンブレイクは退けられた。」
「はい、そうですね。夜空さんが何とか来てくださったのが大きいです。」
「あぁ‥‥そうだな。とりあえず、被害の報告と警察・自衛隊と連携して、動ける探索者は民間人の救助に参加してくれと指令を出してくれ。」
「はい、通達します。」
そうして一人になったギルドマスターはポケットから煙草を取り出して吸い始めた。
「すぅーーふぅーー すぅーーふぅーー」
椅子に腰かけて煙草を吸うその姿はギルドマスターとしての余裕の表れに見えるが、実際はこれからのことを考えての絶望の現実逃避であった。
ダンジョンブレイクが退けられたこと自体は良いことだが、これからの八王子ギルドのことを考えると未来はかなり暗いもので、まず、今回の被害の修復に掛かる費用とダンジョンの警備についても大きな見直しがなされるだろう。
今までは何もなかったからこれで大丈夫という謎の安心があったが、今回のような事件が起きてしまった以上は、もう謎の安心ではダメで、明確な理由をもって安全だと八王子の市民に示す必要がある。
となれば、必要になるのはより強力な防衛設備になるわけだが、これは国に頼む必要があり、それなりの資金が掛かるだろう。
でだ、今回の探索者に対しての報酬とSランクの夜空への報酬も掛かる。
「そんな資金が何処にあるって言うんだ!!ダンジョンの利益だってそこまで多いわけじゃあない!!国からの援助だって年々減らされているこの状況で‥‥どうやって‥‥立ち直せばいいんだ。」
ギルドマスターの頭の中にあるのは“お金と自分の未来”についてだけで、それ以外のことは眼中にすら入っていなかった。




