第14話 人類最後の希望。
《八王子ダンジョン 視点》
黒の箱舟がブラッティーオーガを倒すと、それに続いて他のAランクパーティーもブラッティーオーガを倒して行き、最終的に6体全てのブラッティーオーガを撃破することが出来た。
だが、その戦いによってAランクパーティーにもかなりの被害が出ていて、戦闘の継続は不可能だった。
Aランクによってブラッティーオーガは撃破されたが、魔物はまだたくさん残っていた。それらの魔物をB、Cランクだけで相手しなければならず、その戦いは厳しい物であった。
このままでは突破される――と誰しもが思った時だった。
ダンジョン上空に一台のヘリコプターが止まり、誰かが飛び降りてそのまま地面に着地した。天から舞い降りた人は長く綺麗な黒髪をなびかせ、その美しさにここにいる全ての人が魅了された。
そしてそのうちの一人が「Sランク‥‥夜空 楓花。」と呟いた。
「Sランクの夜空 楓花。ギルドから要請を受けて援護にきました。ここから私が戦闘を引き継ぎますので、皆様は私が討ち漏らした魔物の排除をお願いします。」
楓花は相棒の「太刀」に手を掛けて抜刀と同時に魔物の群れに斬り込んだ。楓花が放った一太刀で無数の魔物が肉塊になっていく。
その様を見ていた他の探索者たちは全員が唖然としていた。テレビではその戦う光景は何度も見ていたが、実際に生で見るのとテレビで見るのとでは全然違っていた。
Sランクがもつ一撃の迫力、身に纏っているプレッシャーと何もかもが違う次元に存在していた。
「こ、これがSランク‥‥国が持つ最高戦力‥‥か。」
「は、はは‥‥討ち漏らしたら頼むって‥‥そんなのいるはずがないだろ。」
他の探索者が言うように、楓花は一匹の魔物すら討ち漏らすことなく全ての魔物を撃破していった。
そうして、このダンジョンブレイクVS人類の戦いは人類の勝利で幕を閉じるのだった。
◇
《主人公 視点》
そんな熱い戦いが起こっているなか、主人公と雪は誰かの家に隠れて助けが来るのを、ただひたすらに待っていた。
「もうじき‥‥助けが来るかな?」
「あぁ、もうじきだと思う。さっきの大きな声が聞こえなくなったってことは、探索者がその魔物を倒したんだ。だったら、もうこのダンジョンブレイクも終わりが近いと思う。
もう少しだ。もう少しだけ‥‥このまま待っていよう。」
「う、うん。」
俺達は手を繋いでずっと嵐が過ぎるのを待っていた。そして、もう終わることを信じていた。
だが、現実はそう甘くなかった。
ドン!!ドン!!と地響きが俺達の方に近づいて来ていて、雪は今にも泣きそうな目でこっちを見てくるので、大丈夫だと言って体を少し起こして窓から外を確認した。
目に入って来たのは“オーク”だった。
オークはCランクの魔物でその食性は雑食で何でも食べるが、特に好むのが人間の女性だ。そして一度、人の味を覚えたオークは匂いから人を探し出すのだ。
間違いない。あの緑色の肌‥‥オークだ。奴らは人を好んで食べる‥‥特に女の人間を。いや、待て!!焦るな。あいつらはバカだ。この場所は住宅街だ。俺達がいる場所以外にもたくさん家があるし、匂いも残っているはずだ。
このまま何もしなければ‥‥問題はない。とオークが居なくなるまで待つことを決めた。
ドンッ!!ドンッ!!とオークの足音がゆっくりと近づいてきて、じわじわと追い込まれているような圧迫感に体がぶるぶると震えてしまう。
俺と雪は一言も話すことなく手を力一杯に握ってその恐怖から耐えるが、雪が「もうだめ‥‥」と小声で言うと、雪のスカートから液体が流れてきた。
そう。雪はずっとおしっこを我慢していたが、オークの恐怖から我慢することが出来なくなり漏らしてしまった。すると、オークの足音が止まり「スンスン」と鼻を動かす音が聞こえてきた。
頼む‥‥見逃してくれ‥‥あっちに行ってくれ!!と願うが、その願いは届かなかった。
パリン!!と俺達が隠れている場所に向かってオークが壁を登って家に入って来た。こうして俺と雪は人生で初めての魔物と対峙することになった。




