第9話 遊びという名の訓練。
雪を育てると決めて早数ヶ月が経った。
初めは遊びと乗じて魔力を雪に流すところから始めた。俺もそうだったが力を使うにはまず魔力を感じるところから始める必要があり、最初は何かに触れられているような違和感がある。そして、その違和感がどんどん大きくなっていき明確な感覚を掴むことが出来るわけだが。
俺の場合は自分の魔力があると自認していたから、その感覚を掴むのは早かったが、雪は自分がそんな才能を持っているとは夢にも思っていなかっただろうから、そこは時間が掛かるだろう。
――と思っていたが、魔力を流し始めてからたった一日でその感覚を掴んでしまった。
◇
「ね?悠真‥‥最近、私‥‥変なの。」
「ん?何が?」
「そ、そのね、みんなには見えてない物が‥‥見えてるの。」
まさか、たった一日でかぁ!?一日でもうマナの視認まで出来るのかぁ!?
「そ、その‥‥見えてるって‥‥どんな感じのものが??」
「うーーん、どう言ったらいいのか分からないんだけど、その透明な波みたいな物が見えるようになったの‥‥私‥‥何かの病気になっちゃったのかな?」
間違いない。雪はマナを視認出来るようになってる。
そう確信した俺は雪の手を取り、
「いや違うよ。大丈夫だから俺を信じて。」
と励ましの言葉を掛けておいた。
◇
この出来事を機に雪の魔法使いとしての才能は完全に目を覚ました。
何も教えることなく感覚だけで自分の才能を伸ばしていき、最初は不安がっていたマナも今では日常の一部と化してマナに触れて遊んでいる。
そんな遊びを繰り返していれば当然、雪のスキルレベルは成長していき―――1か月後には。
白河 雪 5歳 Lv1
・スキル
・全属性適応→全属性完全適応。
・魔力循環効率強化→魔力循環効率強化Lv2。
・マナに愛される者→マナに愛されすぎる者。
に変わり、さらに称号には「最高の魔法使い」という称号まで獲得していた。
この称号にはある特殊の能力が備わっている。
「最高の魔法使い」には魔法の威力強化+3がついている。この能力について説明すると、火の魔法を放てば本来もっている威力よりも少し強化された火の魔法を放つことができるのだ。
これだけであれば特に強くはない能力だが、雪がこの称号を持つことでとんでもない化け方をするのだ。それは雪が持つ”全属性完全適応”があればこの能力はとんでもないものになる。
全ての属性の魔法を使うことが出来るということは、火の魔法と風の魔法を合わせることが出来るのだ。そしてプラスされる能力は2属性分の+6の威力の魔法を放つことが出来てしまうのだ。
つまり、雪が全て魔法を掛け合わせた魔法を使うとすると、掛け合わされた魔法の数だけ+3されるのだ。
本当に壊れた能力だと言える。ちなみにこんなに能力について詳しいことを知っているのかというと、俺の鑑定のスキルが成長したからで、初期のLv1から今はLv3まで成長している。
Lv3ではスキル詳細だけではなく勉強の問題の答えを解説つきで教えてくれるのだ。いや~ほんとうに鑑定様って感じで大切に使わせてもらっています。
話しが脱線したな。そんなわけで雪が一ヶ月で大成長を遂げてしまったので、このまま成長させていいのか少し考えることにした。
雪の力はまだ攻撃に関するスキルはまだ持っていない。その理由はまだ魔法を使っていないから。外の世界ではダンジョン内とのマナの濃度も量も圧倒的に少ないので魔法を発動するまでには至っていないが、このままのスピードで雪が成長を続けてしまうと、もしかしたらその壁すらも突破して外の世界で魔法を放つ可能性がある。
それは非常にマズイ。そんなことが出来ると政府が知れば雪は必ず国が管理することになる。それは雪が望む未来ではないと思う。
だから、雪にはある制限を掛けることにした。
制限と言っても俺が言葉で少し怖がらせるだけなので特に行動を制限できるものじゃあない。だが、雪とは赤ちゃんの時からの関係値があるせいなのか、なぜか俺の言うことだけは何の疑いもなく素直に聞くので、俺が「やめておけ」と言えば必ずやめるのだ。
そうして雪の成長を止めた。
◇
だが、この選択が‥‥良くないものであったことをこの時の俺はまだ知らなかった。
雪の成長を止めてから二ヶ月後のことだった。家族と白河家でいつものようにショッピングモールに出かけている時だった。
そのショッピングモールの近くのダンジョンで――ダンジョンブレイクが起きたのだ。




