第0話 プロローグ
新作です!!10話まで毎日2本投稿します。
暗闇の中、意識がふわりと浮かんでいた。息を吸う感覚もなく、痛みも温度も感じない。ただ、無だけがそこにあった。そんな世界で俺、村上 悠司は静かに人生が終わったことだけを理解していた。
その時、柔らかな光が差し込んだ。
「‥‥やっぱり、君はここに来てしまったか」
頭の中に声が響いた。その声に返事をしたくても言葉を発することが出来なかった。
ただ、心の中で『誰だよ‥‥』と必死に言葉を発していた。すると、その声の持ち主は。
「私は‥‥君の人生に関わった者だよ。」
と同じように脳内に話しかけてきた。俺の言葉が分かるのかと? 再び、心の中で発すると、その声の主は「そう」と返事を返してきた。
どういう原理でそれが成り立っているのかは分からないが、こうして誰かと話すことが出来ることに俺は嬉しさを覚えていたが、自分が置かれている状況を考えると“死んだ人間と会話が出来る存在って神か悪魔”のどっちかだ。
「あんたは‥‥神か? それとも悪魔か? どっちだ?」
その問いかけに相手は「神だ」と短く返してきた。それが真実なのか嘘なのかを確かめる方法はない。なら、この存在を神として考えることにした。
そう、俺には、神に聞かないといけないことが‥‥たくさんあった。
「何で‥‥だ。何で俺の人生はああも残酷な物にしたんだ。俺は前世で何か酷いことでもしたのか? なぁ、あんたは神なんだろ? 教えてくれよ!!」
その叫びは、この人間が歩んできた人生で味わった全ての不幸を表していた。
「それは‥‥全て私の責任だ。」
と神は短く答えると、その人間がこれまで体験してきた不幸な事を一つ一つ丁寧に述べた。
父が連帯保証人になった日、家は突然、赤字に染まり始めた。働いても働いても減らない借金。そして、日々の疲労が溜まり事故で亡くなった父親。父親の代わりに今までの倍以上に働く母親だが、結局は無理が募って過労死した。
「そして君自身も‥‥」
貧乏なことが原因で小学校で軽いイジメに遭い、それが大きくなるにつれて軽いイジメは大きくなっていき、高校生になった時には手を付けられないほどのイジメになった。そして学校側も、興味も同情もない、ただ面倒事を避けるように逃げた。
「それでも君は諦めず勉強した。アルバイトもして、母を助ける為に‥‥どうにか光を掴もうとした。けれど結果は変わらなかった。努力を積み重ねれば重ねるほど世界はより冷たくなった。」
そして最後の日‥‥誰にも気づかれず、誰にも呼ばれず、ただ静かに母と同じように過労死として、その人生が終わった。
神は、浮かんだ記憶を見つめながら目を伏せた。
「‥‥全部、私のせいだ。君の魂に本来与えるはずだった環境も、運命の糸も‥‥すべて誤ってしまった。本来、君はこんな絶望の中で生きるはずじゃなかったんだ」
神の声は震えていた。
「幸せな家庭、支えてくれる友、努力すれば必ず報われる人生。それが君の本来の世界だった。なのに、私は君を別の流れに落としてしまった。」
そんな真実を聞かされた彼は、何も返事をしなかった。いや、出来なかった。だって、既に彼の人生は終わっているのだ。全て遅すぎたのだ。神の謝罪も本当の未来も今さら聞いたところでだった。
だから、このまま魂が消えるのを待つしかないと思っていた。だが、神は違った。
「だから‥‥やり直してほしい。君の人生を、このまま終わらせたくない。今度こそ、君が幸せに向かえる世界へ送りたいんだ。」
神の言葉に光が広がり、心の闇が静かに押し流されていく感じがあった。
「君は、本来“報われるべき人間”なんだ。だからもう一度、やり直そう。私の手違いを正す為に君はもう一度‥‥君の人生を歩むべきだ。」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が熱くなった。
やり直せるのなら‥‥今度こそ守りたい。届かなかった声を、届けたい。報われたい。そして誰かを、報いたい。
光の中で、俺はゆっくりと目を閉じて“神に望んだ。新たな人生を歩む”ことを。
20時もう一本出します。




