耳切坊主(ミミチリボージ) ①
第81話
おう、おう、おう、おう。
力を失っていたのに、もうこいつが目覚めた。
こいつが眠っている内は、私も力を使えない。
だけどいつものことだ。
こいつは、いつもここで力を失う。
でも、私の力は渡さない。
だって、私はこいつを押さえておくんだから。
ああ、どうしてこいつを押さえておかなくちゃ、ならないんだろう。
こどもを守るため?
そう、私はこどもを守る。
だからこいつらを眠らせる。
ああ、でも今回はいつもと違うわ。
これは、結界?なにか懐かしい、こんなものを、私も作れた?
だめだ、こいつらを眠らせることが出来ない。この結界のせい?
ああ、人がいる。
なぜ人がいるの?
私は、この人たちを守るの?
ああ、懐かしい匂いがする。
あの中の、ひとりから?
誰だったかしら。
でも、この人たちは・・・
こどもじゃない。
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スズ子の結界の中、急激に集積した瘴気の束が渦巻いている。それは結界を圧迫し、内側から破壊しようとする。だが、いかなミミチリボージと言えど、この強力な結界は破れない。
「う・・うぁああ、顧問、見えますよね、あれは煙?雲、霧?じゃないですよね」
「ああ、違う、雲でも霧でも煙でもない。あれが瘴気か。与那国島のクブラバリで、奥間くんはあれに立ち向かったのか」
「いいえ、体に異変はありましたけど、見えなかったです。風樹館で受けた呪いのときもそうだった。でもあれは、ハッキリ見える」
「おお、真ん中に人がいるぞ!4人か?あれは、人か?・・ああっ!天音くんに襲いかかるぞ!!」
天音は最初から金色の霊気を練り上げて体に纏っている。並の瘴気なら触れるだけで霧散する濃度だ。だがミミチリボージの瘴気は、それだけで祓えるものではなかった。
4体のミミチリボージは強烈な瘴気の圧力で四方から天音を包む。だが、それも天音には想定済みだった。瘴気の中心で、天音はその金色の霊気を爆発させる。
「ううぁああああぁああああっ!!」
それと同時にミミチリボージの瘴気は外郭が吹き飛ぶ。天音の霊圧が瘴気の内から外に向かって衝撃を与えたのだ。
「神鈴さん、百合ちゃん、言葉!!吹き飛ばした瘴気を祓って!こいつは僕の霊気でも霧散しない!」
天音の叫びに3人は身構える。
「ことちゃん、百合ちゃん!私の攻撃はふたりより弱い、その代わり防御は強いの!私があなたたちを結界で包むから、思う存分闘ってきなさい!勇二、辺土名助教!私の傍に来て!」
そう叫ぶ神鈴に応え、奥間と辺土名が神鈴の後ろに回る。
「よし、行くわよ百合ちゃん!私が前に出るから、百合ちゃんは私と神鈴さんの真ん中でふたりを援護!!」
「はい!言葉さん、行きます!!」
言葉と百合子はそれぞれの霊気を研ぎ澄まし、降り注ぐミミチリボージの瘴気を迎え撃つ。瘴気はすぐに形を変え、子鬼の姿で襲いかかってきた。
言葉の竹刀に纏った霊気は、言葉本来の輝くような霊気に濃密な白い霊気を加え、より強靱な霊刃となる。言葉の父は、今も言葉を守っているのだ。
-行こう!おとうさん!!
女流剣士として全国クラスの実力、軽やかに舞う言葉の剣は、降りかかる瘴気を、襲い来る子鬼を次から次へと切り裂き、霧散させた。それでも、言葉の刃をくぐる子鬼はいるし、無数とも思える子鬼は、言葉を360度囲んでその動きを止めようとする。だが言葉の体は緑色の結界に包まれているのだ。瘴気が言葉の体に触れようにも、触れた瞬間蒸発した。
更に、百合子が自分を中心にして振り回す霊鞭は、言葉の周囲も、そして神鈴に近づこうとする瘴気や子鬼も仕留めていた。
-すごい、ことちゃんも百合ちゃんも、ここまで成長してるとは思わなかった。もうふたりとも一流ね。
神鈴の結界があるとはいえ、ふたりの戦闘力は神鈴の想像を超えていた。だが・・・
-いいぞ、このまま僕がミミチリボージの瘴気を削り飛ばして言葉たちが祓っていけば、いくらミミチリボージの瘴気が濃くても必ず倒すことが出来るはず!
そのとき、天音を囲む4体のミミチリボージは、そのうちの1体が急速に具現化し、はっきりとした人型を成す。耳のない丸坊主、まっくろな顔、そして更に黒く落ちくぼんだ双眸。その1体は天音の傍を離れた。
「ことは!!ひとつそっちに行った!気を付けろ!!」
その1体は瞬時に言葉の前に姿を現す。そして両手に持った鎌で言葉を襲った。
強力なミミチリボージ本体の攻撃に、さしもの結界も軋む。
「あっ!神鈴さんの結界が!!破られる!」
言葉が叫んだ瞬間、ミミチリボージの首に霊鞭が巻き付いて締め上げる。その隙に神鈴は結界の強度を上げた。
言葉と百合子の耳に神鈴の叫びが届く。
「ことちゃん!百合ちゃん!!こいつ、このミミチリボージは私たち三人でやるよ!!」
言葉と百合子は目と目を合わせて頷いた。
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つづく
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