もののけが棲む所 ①
第76話
1月のある日、サークル棟の廊下に慌ただしい足音が響き、琉球弧伝承研究室のドアが開いた。
「天音さん!今、連絡が入りました、起きました!玉城南小学校です!」
大マジムン、ミミチリボージが起こす怪現象、ミミチリボージに取り憑かれた子供が暴れ、その子供を女性のマジムンが助ける。
知念西小学校を中心として螺旋状に移動するその怪現象が、知念にほど近い玉城の小学校で起こったのだ。
「玉城南小か、近いね、百合ちゃん」
この怪現象は2ヶ月に一度起こる。そう分析したのは言葉と百合子のふたりだ。そして分析どおり、この1月に怪現象は起こった。そして次は、螺旋の中心である知念西小学校にミミチリボージは来るはずだ。
その予測の元、天音たちは知念周辺の小学校で怪現象が起こったら連絡をもらえるよう、各学校に手配していたのだ。それには琉大OBの教師たちの協力や、日葵や智たちのような沖縄出身者の伝手、そして小学校教師である優梨の繋がりを頼っている。
「はい、すごく近いです。あとは3月に知念西小学校に集まる瘴気を監視すれば、ミミチリボージが来たことを正確に把握できます。そこで最後の・・・」
「そうだね、そのときが僕の、最後の闘いだ」
思わず拳を握りしめる天音だが、百合子はそう思ってはいなかった。
「天音さん、もう天音さんだけの闘いではないですよ。言葉さんも、それに神鈴さん。日葵さんと達也や、2年生のみんなだって一緒に行きたいはずです。あ、それと天音さんひとりでは身動きも取れませんよね。奥間さんにも行ってもらいましょう!運転手で!!」
百合子がそう言ったとき、部室の外で数人の足音が聞こえた。
「天音、起こったんだってな!ほらぐずぐずしないで行くぞ、玉城南小!神鈴も言葉ちゃんも行くってさ!」
「ああ、勇二が車を出すって言うからな、さぁ、行くか」
勢いよく入ってきたのは、神鈴と奥間、そして言葉だった。
「天音、ようやくだね。ようやくお母さんを助けられる。もうすぐだね」
言葉も集まったデータを必死に分析したのだ。少し涙ぐむような言葉を見て、天音も頷きながら立ち上がった。
「うん、もうすぐだ!じゃあ奥間さん、お願いしていいですか!」
「ああ、いいぞ。勇二の仕事って言えば運転くらいだからな」
「え?ああ、神鈴さん。はい、ありがとうございます・・え?僕は今、奥間さんにお願いを・・」
「ん~、まぁいいじゃないか。さあ行くぞ勇二」
「おう、運転ならまかせろ神鈴!」
ぴったり息の合った神鈴と奥間を先頭に、天音たちは玉城南小学校に向かった。
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この景色、知っている。またここに来たのか。
どんなに遠くに飛んでも、またここに戻ってくる。
おう、おう、おう、おう。
ほら、またこいつの目が覚める。
こいつが目覚めたら、また子供を襲う。
ここは子供たちがたくさんいるから。
こいつが子供たちを襲ったら、私が助けなければ。
でも、子供を助けるには、力がいる。
だから私も、子供たちから力をもらう。
大丈夫、私が助けるから。
力を、ちょうだいね。
そしてまた、ここから離れるのよ。
遠くへ、遠くへ。
でも、何回ここに来ればいいのか。
分からない。
こいつらが必ずここに向かうから。
必ずここに。
ここに、なにがあるの?
ここに、なにがいるの?
分からない、私には、分からない。
でも恐ろしい・・・なにか。
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つづく
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