表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/86

家族の絆 ②

第57話


 翌日の午後、国頭村楚洲くにがみそんそすの浜。


「あ~気持ちいい!あ!ことちゃん、あそこ!海の中で釣りしてる!なにが釣れるのかしらね~」

「おかあさん、あれはね、熱帯魚が釣れるのよ?」

「やだ、ことちゃんったら、沖縄で釣れる魚はぜ〜んぶ熱帯魚でしょ?」


 今日はおかあさんを後ろに乗せて、ずいぶん遠くまで来た。沖縄自動車道を使わなかったし、沖縄本島南部から北部まで休み休み走ってきたから、3時間も掛かっちゃったけど、途中で食べた本家ソーキそばも美味しかったし、ここまでの景色も素晴らしかった。

 天音と優梨さんも楽しそうだわ。でも、優梨さんの胸ってば、すごい。あれってIカップ?それともJカップっていうのかしら。あれ、チーノウヤの力なのよね。

 それに比べて私ったら。でも、おかあさんもそうだから、これは遺伝ね!仕方ない仕方ない!


 私はフルフルと頭を振って雑念を払い、おかあさんに向き直った。


「ねぇ、おかあさん、私がいなくってひとりで暮らすって、ほんとに寂しくないの?」


 私はこの1年、ずっと気になっていることを聞いてみた。私が勝手に琉球大学に決めたのに、おかあさんは最初から賛成してくれた。天音くんと一緒ならいいよって。だけど、ホントはきっと、寂しいはずだわ。


「うん、寂しい。ほんとはとっても寂しい。でもね、たった4年間だって思ってるの。もう1年経っちゃったでしょ?あとたった3年だもの。それにね・・」

「それに?」

「あなたたち、絶対結婚するでしょ?」

「え?ええっ?」


 私のほっぺたが熱くなる。おかあさんったら、いきなりなに言ってるの?


「私ね、分かるのよ。パパが、葉太郎ようたろうさんがね、ことちゃんと天音くんは結婚するよって言ってるのが。それに天音くんって、ことちゃんのこと、ぜ~んぶ知ってるんでしょ?ことちゃんも天音君のこと・・大好きでしょ?」

「も、もぅ!!おかあさんったら!今の、ふたりには絶対言わないでよね!」


 ああ、小四のあの日から、私を今も守ってくれてるパパが、おかあさんにあんなことを伝えたの?私のほっぺたは、もう熱くて焦げそうだわ。

「ねぇ、天音、あれ、見てごらん?」

「うん、あれ、すごいねぇ。ふたりで何を話してるんだろね」


-あらまぁ、天音ったら、ことはちゃんの気持ちが、女心っていうのが分からないのかしらね。でもそんなところも可愛いわ!!

-あら?もしかして、ほんとに二人の仲は深まってない?これは、早めに仲を取り持った方がいいのかなぁ。

-それにしたって、ことはちゃんって、すごいんだねぇ。天音を取られるのは悔しいけど、あの子なら、いいかな。


 腕組みをする優梨の目線の先には、数メートルはあろうかという巨大な霊気を立ち昇らせた言葉の姿があった。その色は、濃密に輝く純白だ。



「さぁ、言葉!西海岸に回って帰ろうか!実ノ里さんも母さんもいいですね?で、見に行こうよ!」

「そうよ!ものすっごく綺麗なの!名護湾の夕日!」


 それぞれの母を後ろに乗せて、2台のバイクは勢いよく走り出した。


「あ、ちょっと待って!」


 走り出した瞬間、言葉が声を上げた。


「おかあさん、優梨さん、キジムナーって、会ってみたくないですか?」


 言葉は、前回キジムナーにいたずらされた公園に行くつもりのようだ。


「え~?キジムナーってなに?ことちゃん、おかあさんコワイよ」

「ははは!ことはちゃん、いいね!行こうか、キジムナーに会いに!実ノ里さん、大丈夫よ?ここには3人もホンモノがいるんだから!」

「え?え?ホンモノって、3人って、優梨さん、なにそれ?」

「ま、いいからいいから!じゃあ、天音、ことはちゃん!行こうか!」


 天音は苦笑いを浮かべながら、バイクのアクセルを開けた。


「名護湾の夕焼けには少し時間がある。それであの公園か。キジムナー、今日はいるかな?」


 そんなことを呟きながら。



 天音たちがヤンバルをツーリングしている頃、安座真家の居間。


「雄心よ、あんたさ、奥武山学園の剣道部監督って、給料はどれくらいだわけ?千葉の高校は結構良かったみたいだけどさ、沖縄ではそう高くないんじゃないの?こっちに戻ってきて、ちゃんと生活できるの?」

「あぃ、おかあ、俺は教員免許持ってるからさ、監督って言っても先生みたいな立場だわけよ。まぁ臨時みたいな扱いだから、本当の先生よりは安いけどさ。それにさ、優梨は去年きちんと準備して、沖縄県の教員に復帰するんだから、ふたりの給料を合わせれば全然問題ないさ」

「しかし雄心よ、おとうとおかあはお前たちが帰ってきて嬉しいが、なんで今更帰ってきたね?沖縄に、なんかあるのか?」

「うん、おとう、それは気にしなくっていいよ。これは俺と優梨と、そして天音が決めたことだから。それにおとう、じいちゃんって呼ばれてうれしかったろ?おかあも、ばあちゃんってさ~」

「あ?・・まぁ、それはな!それは、うれしいさぁ~~」

「うんうん!天音くんったら、良い子だからねぇ。ホント可愛いんだよ」


 天音の話題に目尻を下げる父と母を見ながら、雄心は思っていた。



-俺が高校、大学と内地に行ったから、おとうとおかあには寂しい思いをさせてしまった。


-でもこれからは賑やかだぞ?これまで出来なかった分、親孝行させてもらうよ。おとう、おかあ。


-それと、天音の実の母親、名城明日葉のことは黙っておこう。これはもう、天音と優梨と、俺の問題なんだから。



 優梨と雄心が沖縄に帰ってきた。


 家族の絆は更に強く結ばれ、天音は大学2年生になった。




つづく


お読み頂きまして、ありがとうございます。

毎日数話ずつ更新していますので、ぜひ続きをお読みいただきたいと思います。

気に入っていただけましたら、ブックマークや評価をしていただけますと嬉しいです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ