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家族の絆 ①

第56話


 時は少しだけ遡り、3月末の那覇空港。


 安座真天音あざまあまね八千代言葉やちよことはは、羽田発沖縄行きの飛行機を待っていた。


「あ、到着済みになった。もうすぐだね!あまね!」

 言葉はもう飛び上がらんばかりにウキウキと体を揺らしている。

「もう飛行機降りたかな、もう荷物のとこに歩いてるかな」

 飛行機には優梨と雄心が乗っている。そして、言葉の母、実ノ里(みのり)も一緒なのだ。


「1年ぶりだしな~、かあさん、寂しがってたから、喜ぶだろな~」

 そんな言葉を見ながら、天音の心も躍っていた。


-母さん、久しぶりだな。それに安座真さんも・・そうだ、安座真さんのこと、とうさん、って呼ばなくっちゃ。自然に呼べるかなぁ。


 そうしているうちに、東京発の荷物がレーンを回り出し、周りに人が増えてきた。その中に、天音と言葉の待ち人はいるはずだ。


「あ、あれ!!かあさん」

「あぁ、僕の母さんたちも一緒だ」


 レーンの中程に三人の姿を見つけ、言葉は大きく手を振っている。三人も僕たちの姿を見つけ、ニコニコと手を振リ返した。

 ほどなくして、山ほどの荷物を入れたカートを押しながら、三人は到着ロビーに出てくる。


「ことちゃん!元気?元気だった?元気そうね!」

「かあさんも!寂しくなかった?寂しかったでしょ?私は寂しくなかったよ?」


 言葉は母親と抱き合って再会を喜んでいる。噛み合っているようで噛み合っていないふたりの会話は、意外と天然なふたりの性格を物語っていた


「天音っ!もう、天音ったらおっきくなって!もう、天音ったら!」

「か、かあさんやめてよ。おっきくなんてなってないし、ここ、到着ロビーなんだから!みんな見てるよ?恥ずかしい」

「なに言ってるのよ、私は天音のおかあさんなのよ?恥ずかしいなんて、なんて恥ずかしいことを言ってるの?」


 優梨は、ほぼ1年ぶりに会う息子の姿に興奮して暴走している。だからなのか、優梨の外見は前と変わっていた。


「かあさん、元気なのは分かったんだけど、その、あのさ・・・」

「ん?なによ、天音、かあさん何か、へん?」


 そんなふたりの様子を見ていた雄心が、仕方ないな、という顔で話に割り込む。


「あのさ、息子としては言いにくいだろうが、あれだろ?優梨の・・・胸だろ?」


 天音は雄心に顔を向け、黙って頷いた。


「だろ?でっかいよなぁ。あのな?お前が沖縄に行って、ふた月くらいあとから、かなぁ。優梨の胸が、みるみるでかくなってさ」


 雄心の話では、天音が琉球大学に入学して以来、優梨は事ある毎に天音の話をするようになったそうだ。溺愛する息子がいなくなって寂しい、その気持ちからだろうと思っていたが、ついには優梨の胸が著しい発達を遂げてしまったらしい。


「あれはな、天音、あれだぞ」

「あれ、って、あれですか。安座真監督」

「ああ、チーノウヤだ。優梨はな、お前が恋しいあまり、チーノウヤの力が発現したんだよ。それも、常時だ」

「うわぁ、なんかすごいですね」

「ああ、だがな、天音、それよりなぁ」


 雄心はたっぷりと間を取って、突然天音の頭に腕を回し、ロックした


「おまえ、天音!安座真監督とはなんだ!それに敬語もいらん!さぁ!呼んでみろ!とうさんと」

「あ!えっと、あっと、ああ、ええぇ~」

「と・う・さ・ん!!」

「はい、とうさん、沖縄に、おかえり!」


 雄心は満面の笑顔で応えた。


「ああ!ただいま!天音」


 優梨はその目にいっぱいの涙を溜めて、ふたりを見つめていた。



 天音と言葉はバイクで、そして優梨たち三人はレンタカーで国道331号線を南下し、雄心の実家に到着した。

 実ノ里と言葉は沖縄に滞在する5日間、雄心の父、雄大ゆうだいの厚意で安座真家に泊まることになっている。4泊5日でホテルに泊まると、相当な出費になるからだ。可愛い娘のためとはいえ、この出費は痛い。

 実ノ里は家に入るとすぐ、雄大に頭を下げる。


「お父様、これから数日お世話になります。八千代言葉の母です。天音君にはずっとお付き合いさせてもらっていて、雄心さんにも剣道部でずいぶんお世話になっておりました」


 実ノ里に続いて、雄心も父親に感謝を告げる。


「おとう、ありがとうね。八千代さんたちのこと。天音と言葉は高校から仲良かったから、今回はみんな一緒がいいかなって思ってたからさ、良かったさぁ」

「な~んも気にせんでいいさぁ。部屋は空いてるんだし、ホテル代の分、母子おやこ二人で思いっきり観光したらいいさぁ、あ、天音、おまえも一緒に行って案内して差し上げなさい。お前の未来のお義母さんなんだから」

「え!じいちゃん、未来のお義母さんって・・・」


 絶句する天音をよそに、優梨が口を挟んだ。


「え?ダメよそんなの、お義父さん!天音はまだまだ結婚しませんよ?それに実ノ里さんたちを天音が案内するなら、私も行きます!」

「優梨、君はダメ、四月から××小学校の先生なんだから、すぐ学校に行かなくっちゃ。それにさ、俺も四月から○○高校の剣道部監督なんだし、ふたりとも明日から忙しいんだって」


 チーノウヤの力が暴走気味の優梨を、雄心が冷静に抑えた。優梨は不服そうな顔を見せるが、仕方ないな、という表情を見せる。そこに実ノ里が助け舟を出してくれた。


「ねぇ、優梨さん、1日位はいいんじゃない?あした、ことちゃんとバイクでヤンバルに行くことになってるの。優梨さんは、天音くんのバイクの後ろで、どう?行かない?ね!天音くんも、いいでしょ?」


 実ノ里の提案に、優梨は飛び上がって喜んだ。


「いいわね!実ノ里さん、ありがと!!ねっ!雄心、いいでしょ?」

「ん?う~~ん、まぁ、実ノ里さんがそう言うなら、天音も、いいか?」

「うん、そういうことならいいんだけど、いいか?言葉」


 それまでそばで聞いているだけの言葉だったが、天音の問い掛けにはニッコリと応えた。


「まぁ、ことちゃんと天音くんって、やっぱりお似合いだわ」

 実ノ里のその言葉には、優梨も同意するしかない。しぶしぶではあったが。


 その日、安座真家の夜は、大盛り上がりの宴となった。




つづく


お読み頂きまして、ありがとうございます。

毎日数話ずつ更新していますので、ぜひ続きをお読みいただきたいと思います。

気に入っていただけましたら、ブックマークや評価をしていただけますと嬉しいです。

よろしくお願いします。

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