真鏡名と真鏡(マジキナとマキョウ)
第43話
公園からの帰り、運転席の奥間が少し興奮した様子で神鈴に話し掛ける。
「オレ、見えましたよ。最後んとこでなんかこう、煙の輪っかみたいのが、ふわ~って昇っていくの」
まったく霊能のない奥間だが、状況によってはそういう現象が見えることもある。今回がそれだった。
「そう?まぁ、見えない方がいいことも多いんだけど」
「いや、オレもう信じちゃいました!なんですか、このホンモノ集団!神鈴さんも天音も、すげぇでした!オレ、これからはサークル来ますよ!もう、運転手だろうがなんだろうが、この奥間勇二に、お任せください!!」
「奥間さん、私より上級生じゃないですか、敬語はいいですよ」
「あはは、オレもう、そういうの関係なくなっちゃったんで、気にしないでください。ところで、見えたのは4人の老人って言ってましたよね?でも子供の姿のこともあるって、それはどういうことなんですか?」
「ああ、見る子によっては老人に見えたり子供に見えたりするっていうんでしたね。それはきっと、あの霊が子供に見えた子には霊感があったんですよ。あの霊たちの子供の部分が見えたんだと思います」
「そうなんですねぇ、でも神鈴さん、なんかすごかったなぁ。オレな~んも見えてないんだけど、カッコいいのは分かりましたよ?“安座真!今すぐ祓うか!”とか、な!安座真!」
神鈴に心酔した様子の奥間が天音に話を振ってくるが、天音は別のことを考えていた。奥間の問い掛けには応えず、神鈴に話し掛ける。
「あの、神鈴さん、ちょっと聞いていいですか?」
「ん?なんだ安座真、別にいいぞ?」
「神鈴さんの名字って、マコトのカガミのナマエ、で、真鏡名ですよね。僕の祖父に聞いたんですけど、沖縄では同じ字を当てて、シンキョウメイとか、マキョウメイ、マキョウナって読むって」
「うん、そうだな、沖縄でもそう多い姓ではないが、読み方は多いな。でも、どうしてそんな事を聞きたい?」
「実は、僕の旧姓、真鏡っていうんです。昔、母の両親が改姓したらしいんですけど」
「マキョウ?マコトのカガミで、真鏡か?」
「はい、まぁ、僕は元々“名城”っていう姓で、ちょっと色々で今の母の姓、“真鏡”になって、また色々で今の父の姓、“安座真”なんです。名城が本当の母の姓なんで、今の父母はどちらも義理の父母になるんですけど」
「今の母、そうか、義理のお母さんなのか。で、そのお母さんの名前は?」
「優梨です」
「本当か?安座真のお母さんは、真鏡優梨って名前だったのか?」
真鏡優梨、その名前を神鈴は知っていた。自分の両親と親族たちが話しているのを聞いたことがあるのだ。
-安座真天音か、真鏡優梨は義理の母親だから、あの力を継いでることはないのよね。でも、サークル棟の外でも感じたし、私の霊気を防いだあの眩しいほどの霊気、この子、ものすごい力だわ。
「・・・おばぁに言っておいた方が、いいわね」
「え?神鈴さん、おばぁって?」
「ううん、なんでもないの。さぁみんな!今日のこと、サークルに戻って資料にまとめるわよ!」
「え~?今からですかぁ~?あ、ガソリン代出ますよね、ね!神鈴さん!」
「私たちはいいですよ~、ね!あまね!ことちゃん!」
「うん、私も、今日のこと書きたいな。なんかすごく感動しちゃったし」
奥間も言葉も日葵も、とてもいい雰囲気に包まれている。今回の霊現象を共に体験したことがその要因だろう。だが神鈴と天音には、それとは別の思いが巡っていた。
-真鏡名家から出て行った人の名前、真鏡。この事をおばぁに言ったら、どうなるんだろ。私なんか足下にも及ばないあの人たちは、あの力を、いったいどうするんだろ・・
-真鏡優梨っていう名前を、神鈴さんは知っている。つまり母さんは真鏡名家に縁がある人だったってことだ。このこと、母さんに言わなくっちゃ。母さん、どうするかな・・
この日の出会いは、天音たちの運命を大きく左右することになる。
そして車は、それぞれの思いを乗せて南へ走った。
つづく
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