ガジュマルの下の幽霊たち ②
第39話
奥間が言うには、同級生の家の近くにある公園で、怪現象が起こるという。
同級生の家は今では珍しくなった駄菓子屋を営んでいるが、その怪現象の噂のせいで、子供たちが寄りつかなくなっているとのことだった。
そもそも、その公園には都市伝説のような噂が昔からあり、誰も気にすることはなかったのだが、この数年怪現象を目撃する子供が増え、商売にも影響しだしたらしい。
「・・・で、僕が大学でオカルトサークルに入ってるからって、友達が僕に相談してきたって感じなんですよね」
「えっと、オカルトサークルじゃなくって、琉球弧の伝承を研究するサークルなんだけどね~、ま、建前だけなんだけどさ~、それで・・」
「ちょっといいですか」
比嘉部長の話を制し、神鈴が声を上げた。
「その怪現象っていうの、もう少し詳しく教えてもらえないかしら?」
奥間にとって神鈴は下級生だが、神鈴の言葉には威厳があった。自然と奥間は敬語になる。
「あ、はい、昔からの噂って言うのが、公園の大きなガジュマルの下に椅子が4つ並んでて、普通だと木の葉とか枝とか虫とかで汚れるもんだけど、その椅子は4つともいっつも綺麗で、それは、4人の幽霊が座ってるせいだ、っていうんです。で、その幽霊を子供たちが見たっていうんですけど・・」
子供たちは4人の幽霊が椅子に座っていると言うらしい。しかもそれは夜だけではなく、昼間にも見える。そしてその幽霊は4人の老人で、目が合った子を指差して何事か叫びながら迫ってくると言うのだ。
ただ、目撃した子によっては、4人の幽霊は老人ではなく、小学生のような子供に見えることもあると言う。
「それで、そのお友達は、幽霊をなんとかならないか、とあなたに相談してきた。ってことなのね?」
奥間は頷く。もう自分が上級生であることは頭にないようだ。
「分かりました。その公園に行きましょう。じゃ、そこのあなた、一緒に行くわよ。えっと、名前は?」
「あ、はい、安座真天音です。1年です」
神鈴はまっすぐ天音を見て同行を命じた。その言葉には抗えない迫力があった。そして、なぜか美鈴の姿には、母の優梨の姿が被って見えていた。
-なぜだろう。霊気の色は違うけど、母さんと同じものを感じる。あ、そうか、僕が初めて会ったときの、僕の担任だった頃の母さんと似てるんだ。
小学校の入学式で初めて会った担任、真鏡優梨。
白いブラウスに紺のスーツスカート。清楚ながら凜とした雰囲気と知性を漂わせる女性。真鏡名神鈴は、その頃の優梨とよく似ていた。
「じゃ、安座真君、行こうか」
終会間際とはいえ、まだ会は終わっていないのに、神鈴はすでに立ち上がっている。だが部長の比嘉もそれを止めはしない。なにしろこのような話になると神鈴が止まるはずはないと、比嘉は知っていたからだ。
その時、言葉が手を挙げた。
「真鏡名さん!私も行きたいです!!」
神鈴は顔を言葉に向け、品定めでもするかのように、言葉の全身にスッと目線を送った。
「へぇ~、ふぅ~ん・・・ええ、いいわよ?あなた、名前は?」
「はい、八千代言葉です。安座真君と同じ、1年です」
「はい分かった!じゃあもう出ますが、他に行きたい人いますか?」
「はいはいはい!!私も行きたいです!」
今にも出て行きそうな神鈴に慌てて手を挙げたのは、日葵だった。
「あら、ひまりちゃん、あなたもなの?う~ん、ひまりちゃんかぁ。でも、いいか。私と安座真君がいれば、万に一つも・・・」
神鈴は少し考える仕草を見せたが、決断は早かった。
「はい締め切り!じゃ3人共、行くわよ!じゃ奥間さん、公園まで案内してくださいね」
「は?オレ?あ・・・はい!」
友人の相談で自分まで巻き込まれ、奥間は少々面食らったが、確かに案内がなければその公園まで行けないだろう。
「全部で5人ですよね、じゃあ、オレの車で行きましょう」
比嘉を始め他の部員をその場に残し、5人はサークル棟を後にした。
つづく
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