天音が手にしたもの
第28話
とある日曜日。僕の家にたくさんのお客さんが来て、母さんはてんてこ舞いだ。
朝からたくさんのサーターアンダギーを揚げて、沖縄から送ってもらったマンゴーなんて奮発して、お客さんがお酒を飲むからって、ラフテーとかチャンプルーなんて作って、沖縄そばなんかも作ってる。
お酒を飲む人なんて、母さんと、もうひとりしかいないでしょ?
お客さんは太斗、幸、安座真さん、そして、千代だ。
「ことはちゃん!それで?天音はあんたのこと、好きなのかい?」
「やだ!優梨さん、私が見た昔の優梨さんってすっごく優しくておしとやかで、子鬼にも負けちゃう人だったのに!なんでそんな風になっちゃったんですか?」
「お!言うねぇ、ことはちゃんは私と天音のこと、全部見たんでしょ?だからこんなになっちゃったの!ははは!」
「優梨、もう、酔いすぎだよ。子供の前だよ?いい加減にしないと!」
「なに?酔いすぎ?雄心こそもっと飲んで!雄心のためにわざわざ買って来たんだよ?泡盛の10年古酒!高かったんだから、ほらほら!」
場は和やかだ。母さんは出来上がってるけど、和やかだ。
しかし母さん、やけに安座真さんに絡むなぁ。
あれ以来、僕たちの絆みたいなものはものすごく強くなっている。
そう言えば太斗と幸は、なぜかいつもニコニコだ。今は何を言っても怒らない。
「太斗さ、なんか幸と良い感じなんだけど、もう付き合っちゃってるの?」
「はぁ!!天音は何を言い出すかと思えば!!俺らはそんなんじゃ・・なぁ?」
「そうよ、天音君と千代こそじゃないの?私たちよりずっと!」
「ほらぁ、幸は全然否定しないじゃん。大体さ、太斗さ、大学も幸とおんなじ大学を目指すんでしょ?剣道、どうすんの?」
「・・・・」
「・・・・」
「天音、もういいじゃない。このふたりはもうね、いいのよ。ところでさ、まだ天音の志望校聞いてないんだけど」
「え?言ってなかったっけ。俺の志望校は、琉大、琉球大学」
「そうなんだ・・・それでさ、天音は沖縄でなにするの?」
「いや、それはね、まぁね」
そんなこと言わなくったって、僕の記憶を全部見た千代には分かってるはずなのに、志望校だって?わざとらしいな。何を狙ってる?
「じゃさ!優梨さん、安座真監督、私も琉球大学に行くことに決めました!今のいまっ!!」
わっ、そう来たか。
「なにが、じゃさ!なのよ。そんな沖縄の大学なんて、ことはちゃんのお母さんが許してくれないでしょ?」
「いえ、優梨さん。今回のことで、うちの母はいたく乗り気です。ぜひ天音くんと一緒のところへって。それに父も言ってました。お前を守る人と一緒にいなさいって!」
母さんと安座真さんは思わず顔を見合わせている。
しかし千代ってば、上手いこと大人たちを巻き込んじゃったぞ?
でも、千代を守る人と一緒にいなさいって?
千代のお父さんはそんなこと言ってない。
本当は、千代を守る人が現れるまで、お父さんが守ってあげる、だ。
「そうか、千代、沖縄に一緒に行くって事は、また怪異と闘う天音を助けるってことにもなるんだが、それは理解してるのか?」
「もちろんです!安座真監督。私はもう、優梨さんより天音くんのこと、知ってるんですから!」
その瞬間、母さんが千代の後ろに回り込み、首をがっつりロックした。
千代、今のはまずいって!
「なぁ~にぃ~?ことはちゃんが行くなら私も行く!帰るっ!沖縄!!そんときは雄心もね!」
安座真さんは頭を抱えている。千代は母さんに背中から抱きしめられて嬉しそうだ。
太斗と幸は・・・普通に嬉しそうだ。
あ~ぁあ!もう我が家はめちゃめちゃに和やかだ。
でも僕は、この高校生活でかけがえのないものを手に入れたみたい。
もう大丈夫だよ?お母さん。
待っててね。
もうすぐだ。助けに行くよ。
そして僕はもう、ひとりじゃないからね。
つづく
お読み頂きまして、ありがとうございます。
毎日数話ずつ更新していますので、ぜひ続きをお読みいただきたいと思います。
気に入っていただけましたら、ブックマークや評価をしていただけますと嬉しいです。
よろしくお願いします。




