真鏡優梨と安座真雄心 ①
第20話
中畑幸に取り憑いているのは、ネットに生じ、長い時間を使って成長した怪異、ブギーマン。
僕たちは幸の中にいるそいつに、千代の目を使ってずっと見られていた。
安座真さんはすぐに怪異を祓わなければ、幸が危険だという。
そこで安座真さんと僕が、幸の家に向かうことにした。
「天音、私も行く!幸は親友なの!」
「千代、気持ちは分かるけど、狙われてるのは千代なんだよ?今の状態なら、あいつは千代に手が出せない。さっき瘴気は祓ってあるから、今は帰った方がいい」
僕は千代に声を掛けたとき、霊気に混ぜられていた瘴気を祓っていた。
「太斗、千代を頼む。今夜祓えれば、もう何も起こらないから」
「くそ、俺じゃなんの役にも立たないのか・・分かった!天音、負けんなよ!」
「おう!まかせろ!」
本当は太斗が役に立たないわけじゃない。僕はそう思いながら、安座真さんと幸の家に急いだ。
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幸の家に着くまで、車で約10分。僕は母さんに電話して学校での事を話した。母さんには強い力がある。これから怪異と戦うんだ、黙っていたってすぐ見抜かれる。
「天音、何言ってるの?あなたにそんな事できるわけないでしょ?」
母さんは僕が全てを思い出して、そしてこれまで霊力を高めていることを知らない。でも、もう言う時だ。
「母さん、黙っててごめん。高校1年の時、剣道部に移ったでしょ?あのときね、僕の力と記憶を思い出させてもらったんだ。それで剣道部で、これまで力を高めてきたんだよ。だから大丈夫。それにさ、その剣道部の監督さんも一緒なんだ。だから、ね?」
「その監督を電話に出しなさい!!」
耳がキンっとした。これはダメだ、母さんが折れない。安座真さんに代わるしかない。
「安座真さん、僕の、母です」
安座真さんは車を停め、“うひゃー”という顔をしながら電話を代わった。
「もしもし、安座真と申します。天音には、いや、天音くんには・・」
「何考えてるんです!!どんなヤツかも分からないのに!危険です!!」
「いや、あの、お母さん、お気持ちは重々分かります、ただ天音君は強いですよ?それに私だってそれなりに。相手も土着の神ってわけじゃないので、ご心配は・・」
「あなた何言ってるの!天音が強いことは知ってる!最近力が高まってるのも知ってたけど・・私が言いたいのは、相手を舐めて掛かるんじゃないって言ってるのよ!」
耳がキンっとした。安座真さんはそんな風に首をすくめる。
「あなた!!場所を教えなさい!私が出る!!私が着くまで、家に入っちゃ駄目よ!!」
「は、はい・・」
安座真さんは幸の家の住所を教え、電話を切った。
「天音、おまえの母さん、すげぇなぁ。来るってよ?大丈夫なのか?」
僕は少し面白いなって思ってしまった。そして笑顔で応える。
「はい、大丈夫ですよ。うちの母、強いですから」
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時間は午後8時を回った。
安座真さんと僕、そして母さん、真鏡優梨は、幸の家の玄関に立っていた。
「それで安座真さん、どういうおつもりで天音の力を引き出したんです?」
「え?いやその、天音君の気は恐ろしいほど大きくて、潜在能力も凄まじいのに、本人には全く自覚がないというか、その~」
「だからわざわざ引き出したと?天音の力はあえて押さえてたのに、ホントに迷惑なんですけど!!私と天音の暮らしを壊すおつもり?」
「いやまさか!ご家族の事情も考えず、申し訳ないと思っております」
あの安座真さんが平身低頭だ。ちょっと面白い。でも今は、そんな場合じゃなかった。
「母さん、もういいでしょ?僕は安座真さんに感謝してるし、信頼もしてる。母さんのことも大好きだ。全てを思い出したとしてもだよ?それより今は、同級生を助けなきゃ」
「まぁ、そうね、天音。えらいわぁ~、さすがだわぁ~、じゃ、行きましょ!」
僕は安座真さんに頭を下げた。僕の母がすみません、っていう意味だ。安座真さんが僕に近づいて、小さな声で言った。
「すごいな、お前のお母さん、霊気が半端ない。それに女性がいる方が良かったかも。しかしすごい霊気だ、俺、負けそう」
「は?なにか言いましたか?行きますよ!!」
「は、はいはい!」
真鏡優梨と安座真雄心、僕の母さんと僕の師匠、このふたりの気はぴったりだ。
僕は不謹慎にも、ふたりの後ろ姿を見ながら笑ってしまった。
つづく
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