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天音と八千代言葉

第14話


 僕たちは、高校2年になった。


 太斗は1年から大会の出場選手に選ばれ、その活躍で赤城太斗の名はライバル校にも轟いている。


 僕は安座真監督と太斗に鍛えられた。練習に明け暮れる日々。それに、初心者の僕にとって先輩部員はもちろん、同級生部員も全員が僕より強いのだ。誰とやっても学ぶことがあった。


 そして僕は、強くなっていった。



「ふぉ~、天音、お前強くなったな~、1年前に監督が連れてきたときは、なんで?って思ったけど、監督って分かってたのか?お前が強くなるって」


 稽古が一段落して、太斗が僕に話し掛けてきた。


「もう同級生ん中じゃ天音が一番強いんじゃないか?」

「な~に言ってるの、そんなことないよ、稽古では勝つこともあるけど試合ではやっぱ負けちゃうし、大体お前、太斗のが強いじゃん!」

「ははは!俺を除いて一番!ってことだよ~」

「な~に~、やるか?試合稽古!」

「う~ん、試合稽古じゃ俺も負けるかも!やっぱ天音は一番だな!稽古では一番だ」


 太斗の言うとおりだった。一連の動きが大体決まる試合稽古ならば、僕は気を読むことでほとんど負けることは無い。それは上級生相手でもそうだった。だけど、綺麗な型で打ち込むことを求められる試合稽古だから動きも読みやすいんだ。本当の試合ではそうは行かない。結局は地力の差が物を言う。


 僕に必要なのは実戦経験。それはもう、皆が分かっていた。


 そこに、数人の女子部員が話し掛けてきた。


「赤城くん!ちょっといいかな?」

「うん?千代ちよか、また稽古のお願いか?」

「うん、今さ、一段落付いてるんでしょ?安座真監督にも聞いてきたからさ、試合稽古、お願い!」

「あ~、いいけど、どうせお目当ては天音なんだろ?」

「わかる~?剣道歴たった1年の変人天音くん、じゃさ、赤城くんはさちとお願いします!で、天音くんは私とね!審判はふたり連れてきてるからさ~」


 千代と呼ばれた女子部員、八千代言葉やちよことはは、剣道部女子のエース。個人でなら全国レベルの実力者だ。


「また俺と千代?まぁいいけど・・・でも千代さ、なんでいっつも俺なのさ!」

「え~?さっき言ったじゃん、剣道歴たった1年の天音くん、それなのに君は強い!だから“かよわい女子”の私は稽古を付けてもらいたいのよ」

「さっき変態天音って言ったろ?」

「変態じゃなくって変人、ま、いいじゃん!さ、始めよ?」


 八千代言葉、僕はこの女子部員が苦手だった。人として苦手とか、嫌いって意味じゃない。剣道の相手として苦手なんだ。


 僕には千代の気が、まるで見えない。


 だから動きを読めない千代との試合稽古で、僕は全く相手にならず負けてしまうんだ。だがこの1年、僕も強くなっている。気を読めなくとも、ある程度は相手できる、はずだ!



「チェストォオオーーーッ!!」


 千代の長い余韻を持った気合いと共に、見事な面が決まった。もちろん僕の頭上にだ。


「いっぽーーん!」


 負けた、また負けた。僕はがっくりと頭を垂れる。


「天音、また負けたのか?お前、千代には連戦連敗じゃない?まぁ今日はちょっと粘った方だと思うけど」

 先に試合稽古を終えていた太斗が近づいてきた。

「うん、ほんと苦手!それにしても千代ってさ、なんでいつも俺んとこ来るんだよ」 


 確かに連戦連敗だった。だけど気が見えない千代との稽古は、僕の実力を試すのに好都合でもあった。僕は気が見えなければこの程度の実力なのだ。最近は打とうと思えば打てる気がするけれど・・・


「え~?だから言ってるじゃん、剣道歴たった1年なのに、強豪剣道部の強者にも劣らぬ実力者、天音くんの力をお借りしたいのよ」

「はぁ?そんなこと微塵も思ってないでしょ、俺が千代に弱いのをいいことに、俺をいぢめてるんじゃない?」

「いやぁ、そんなことないよ、ないない、ないってばぁ」


 試合稽古では見えなかった千代の気が、今はチラチラと見えている。どうやら喜んでいるようだ。おそらく集中すると気を内側に溜めることが出来るんだろう。


 強いはずだ。


 そんな千代と僕を前に、太斗は腕組みして首を傾げている。


「しかしさぁ、天音は間違いなく強いぞ?稽古だけなら剣道部のトップクラスだ。あとは試合経験さえ積めば、って思うんだけど、なんで千代にだけ負けるんだ?天音さ、お前もしかして、千代を打つのが嫌なんじゃないのか?」

「な、何言ってる太斗!俺がそんな手を抜くようなことするわけないじゃん!」

「そぉかぁ~?自分でも気がつかないうちに千代のこと大事に思ってたり、するんじゃないかぁ~?」

「また何をいい加減な・・」


 僕は言い掛けた言葉を呑み込んだ。僕の目の前に、猛烈な勢いで気が立ち昇ったからだ。


 真っ白に輝く巨大な気、それは、千代の霊気だった。

 黙って俯いている千代は、実は激しく動揺しているんだ。


 しかし、こんなに大きくて、そして綺麗な霊気を持っていたなんて。


 僕は千代に向かって言った。


「千代、また頼むよ。今度からはオレから頼む、そんときはよろしくな」


 千代は紅く染まった顔を上げて、にっこりと笑った。


 千代の霊気が、更に大きく立ち昇った。




つづく


お読み頂きまして、ありがとうございます。

毎日数話ずつ更新していますので、ぜひ続きをお読みいただきたいと思います。

気に入っていただけましたら、ブックマークや評価をしていただけますと嬉しいです。

よろしくお願いします。

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