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9,労災はすぐに降りるとの連絡がきた



向こう側の騎士達が、着実に道を作ってくれていた


これがもっと適当な倉庫であれば力技で早急に対応できただろうが、歴代の資料の保管庫という条件が悪すぎた


「…っ、」

フィンリーの顔が苦痛で時折歪んだ


「フィンリー、ごめんなさいね、医療班が来ていないから鎮痛剤が無くて…」

「いえ、お気遣いくださいましてありがとうございます。」

「どこが痛む?冷やしましょう?」


ロードライドは全くブレない体感でフィンリーを抱きしめたまま、反対の手で器用にフィンリーを看病した


「あの、床に転がしていただいても結構なのですが…」

「何言ってるの!ガラス片が落ちているのよ!アタシに抱きしめられて居た方が怪我のリスクが最小限よ!」

「いえ、殿下も大変でしょうから」

「んまぁ!人を気遣う余裕が出てきたのね!素敵!でもいいの。アタシがやりたくてやっているの。」


こういう時以外に、貴女を抱きしめる瞬間ってそう簡単には訪れないでしょう?

と、嬉しそうなロードライド


フィンリーは、すなおに「ありがとうございます。」とお礼を伝えた


「……ねぇ、フィンリー。こういう場面で言うのは卑怯な気もするんだけれど…」

ロードライドが真面目な顔をしてフィンリーを見つめた


「本当に、貴女を心から愛しているの…他に欲しいものなんて何一つ無いわ…」

「…………殿下…、」

「フィンリーが危ない目にあえば持てる全てを差し出して助けたいし、権威が邪魔ならすぐに捨てたっていいの…。それくらい、アタシには、貴女が一番なのよ…フィンリー」



フィンリーの頭を優しく撫でて、その髪に1つキスを落とす


「アタシから、大事にされて欲しい。フィンリー…。お願い。このままアタシの腕の中に居て欲しい…」


ロードライドの綺麗な髪がさらりとフィンリーの頬をくすぐる

「……殿下…、殿下…。わたくしは……、既に殿下に大切にされているという自覚がございます」

「……えっ、本当?!フィンリー…?ちゃんと貴女に伝わっていた?」


「殿下にあつらえていただいた制服に身を護られました。窓を割ってまで殿下は私のもとに駆けつけてくださいました。ここまで大切にして頂いた御恩を簡単にお返しする術が、私にはそうそう思いつきません。」


全身に痛みがで始めて、上手に笑えないなりにフィンリーは笑う


「生涯、殿下のお側でお仕えさせていただきます。殿下の腹心として離れません。」

「………………違うぅ……!」

「身を呈して私を救出にきてくださった殿下を、より一層の忠誠心でお守りいたします」

「それは有難うぅ…でも違うんだってばぁ!」


ロードライドは子供のように駄々をこねはじめた


「ねぇもう結婚しましょうフィンリー。生涯傍にいてくれるなら結婚しましょうよ。ていうかお願いします結婚してください。フィンリーの願いも叶えてあげるからアタシの願いも叶えて頂戴よぉ」


「ご婚礼は由緒あるご令嬢と結ぶべきと考えますので殿下と私の成婚となりますと、あまり国のためには成りません、願いを叶えてくださるというのであれば、早急にこの資料をデータ化して今後このような事がないように再発防止に努める対策を練りたいです」


「それは早急に対応しますぅぅぅぅううう!」





それからまもなく

道が開けて、騎士立ちと医療版がフィンリーの救出に到着した


そのまま医療室に運ばれたフィンリーは

一部骨折や打撲の診断をうけて、暫くは療養を命じられることとなった







「…………殿下、お仕事をください。」

「駄目よ。ちゃんと寝ないと治るものも治らないわよ?」

「違うんです。適度な運動をしないと治るものも治らないのです。」

「貴女って、本当に根っこから真面目よね…」


昼間、ロードライドの書斎に

車椅子のフィンリーが挨拶に来たのは、あの日から少し時間が経ってからだった


とはいえ、医療室にお世話になっていた日々も、

自室に戻ってきてからの日々も、

毎日のようにロードライドが顔を出しに来ていたので

久しぶりという感じはなく

お互いがとても慣れた様子で会話を楽しんでいた



「そういえば、マリィにお礼に行ったんですけど、殿下からもお礼があったと驚いていました」

「あの子が居なかったら、もっと大変な事になっていたわよ…心から感謝しても感謝しきれないわ」


カラカラと車椅子を不慣れな手つきで進めると

護衛の騎士が後ろから押してくれて、自然にロードライドの横にその位置を定めた


「マリィのおかげです。本当に」

「騎士も、医療班も、彼女が呼んでくれたっていってたものね、パニックに陥りながらも的確に動けるなんて、優秀なメイドだわ」

「本当に。良き友人です。末永く共に働きたいです」


「それから、この後ゴードンさんにもお礼に行きます。」

「あら?今から行くの?一緒にアタシも行きましょうか?」

「いえ、殿下はお仕事がございますので。また後ほど、この部屋に戻ってまいりたいのですが……いいですか?」

「ふふっ、いいわよ。貴女の戻る場所はいつだってアタシの腕の中だもの」

「では行ってまいります。」


出口まで騎士が車椅子を押してくれようとしたけれど

そのくらいはさせて欲しい。と殿下が車椅子を握って離さなかった


本当はリハビリがてら歩いた方がいいけれど

なにぶん敷地が広すぎる


今週だけ車椅子を使って移動する…とフィンリーは少しだけ自分に優しくすることにした

なので、この短い期間だけは、ロードライドの優しさも遠慮せずに受け取ることにしたのだった


「殿下、ゴードンさんへのお礼は何がいいですかね?」

「うーん、本人に聞くのが一番よね?不要な物渡すのも良くないし」


それもそうだと納得し、一度退室をする



そしてまた怪我をした身には少しキツい長い道のりを進みゴードンに会いにいき、お礼の気持ちを伝えた


感謝を形にしたいのでほしいものを教えて欲しいと伝えた所、ゴードンはこれ幸いにとばかりに

「マリィとの仲を取り持って欲しい」と伝えてきた

「それは、なんのお礼にもなりませんよ」と思ったが、これもまた礼の一つと受け止めて余計なことは言わずに「喜んで」と頷いた。






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