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2,実父も苦手



「ごきげんよう、陛下」


ロードライド殿下は美しく着飾り、家臣が頭を下げる廊下を背筋を伸ばして歩いた

ベッドで薔薇を散らしていたように気怠げだった人物とはまるで別人のようだった


「ロードライドおはよう。よく眠れただろうか」

陛下は少し先に来ていたようで、朝の新聞を読んでいた最中だった。これも一つの国内の様子をみる大切な公務である


「お気遣いありがとうございます。とても気持ちよく朝を迎えましたわ」

ひいてもらった椅子に座り、軽く一口だけ水を飲む



「そういえば本日は、隣国からロードライドに謁見希望があったっんじゃないか?えぇと…?たしか…、近く成人の儀を迎える伯爵家のご令嬢だったような覚えが…」

「いやですわ陛下。言い方がわざとらしくて不快。」


ニコニコと微笑みながらロードライドは近くのメイドに先ほどフィンリーに頼んでいた料理を持ってきてほしいと頼んだ


「ロードライド…、皇族たるもの、血を残す努力も公務のうちだろう」

「陛下。皇后達との間にお作りになられた御子息御息女は、わたくしを入れて7人。すぐ下の弟は既に奥方様と仲睦まじくお過ごしの事と伺っております。わたくしにばかり白羽の矢を立てる事はおやめください。」


「ロードライド、そう言うな。お前は長男だろう…」

「まーーーーーーあ!聞きまして??皆様、今の発言聞きまして??」


周囲の従者の方を勢いよく振り返り、ロードライドは大袈裟に叫ぶ


「出ましたわ!長男贔屓!生まれた順番なんて、太陽の歴史からしたら塵に等しいというのに!」

従者たちは、突然会話に巻き込まれる事にも多少慣れているので

「ロードライド様。サラダの味付けはオリーブオイルとソルトで宜しいですか?」

と、何事も無かったかのように接した


「陛下。わざわざそんな閘門(こうもん)式運河開通前の貿易船のルートくらい遠回りな言い方をなさらないでハッキリおっしゃってくださらない?時間の無駄も良いところだわ。我が一族にもショートカット可能な運河を作ってしまいたい程に」

「…………ロードライド、ご令嬢と婚姻を結べ。」

「お断りいたします。」


サラダとコーヒーがテーブルに用意されたが、ロードライドは食欲どころでは無くなっていた


「わたくし、自分の目で見て心を許した方とでないと縁を結ぶつもりはないので」

「ロードライド、お前を男性として見てくれる女性はどのくらいいるんだろうかなぁ」

陛下はやれやれとため息をついた


ロードライドは冷たい目で

「世界に一人いらっしゃればいいじゃないですか。陛下のように女性は日めくりカレンダーくらいの貞操概念は、あいにくですが持ち合わせておりませんので」


ロードライドは実父である陛下の思考が好きではなかった

皇族である以上、子孫を残すことは重要な責務である事は十分に理解をしてるが

他者からせっつかれて追い詰められるように婚姻を結び、子孫だけをどんどん増やしていくような人生の歩き方は受け入れることが難しかった


陛下はそんなロードライドを気にしているのか、いないのか…読めない表情のままで朝食に箸をつけた


静かに響き渡る食器の音だけが、部屋にある唯一だった


そんなピリピリした空気の中、静かに置くの扉からフィンリーが姿をみせた


「お食事中失礼いたします。」

ぺこりと頭を下げて近くに歩いてくる彼女をみて

従者たちがアイコンタクトで”今日もバチバチ揉めてるぜ”とアピールしてくる

フィンリーも視線だけで”過酷な環境での給仕お疲れ様です”と返した


「陛下、殿下、失礼いたします。門番からの伝令です。ご令嬢の馬車が国境入口を通過したとの事です。もうまもなく王宮に到着いたしますので、ご支度のほどを…」


「もーーー、フィンリー!丁度いいタイミングで来てくれたわね!一緒にサラダ食べない?」

「申し訳ございません。ドレッシングはサウザント派ですので遠慮いたします。」


先日はごまドレッシング派だと言って同席を遠慮していたフィンリー

殿下のあしらい方の慣れもここまで来るとまるで漫才を見ているかのような気持ちになる


陛下が箸をおいて顔を上げて

「フィンリー…愚息にいい縁が来るように、どうにか謀らってもらえないだろうか」と声をかけた

親子の関係が良好ではないので、良かれと思ってご令嬢を用意したとしても父親の決めた相手…というだけでロードライドは頑なに心を開こうとしなかった。陛下はそれをよく理解していたのだった


ロードライドが、余計な事をいうんじゃない、という表情で陛下を見た次の瞬間にフィンリーは深く会釈をして「僭越ではございますが…」と前置きをした


「ロードライド殿下という宝石の前では、どれ程に石を磨いたところで、石は石のまま宝石にはなり得ません。お探しになるのであればロードライド殿下以上の”宝石”と条件をお決めになって、ご令嬢を厳選なさったほうが早いのではないでしょうか」


至極真面目にそう発言をした。


「いし………?」

おもわずロードライドが復唱する

その言葉には嫌味や他意などは含まれていおらず、心からそう思っての発言だと言うことは全員が理解していた


「………、石……。」

「……っ、ふふっ、ふふふふっ、ははっ……っあーっはっは!!!」

陛下は思わず固まり、ロードライドは込み上げてくる感情を逃がすために、机を叩いて大きく笑った

捉え方によっては、今まで来訪したご令嬢を”石”だと遠回りに発言したことになっていたからである


「ただの従者の戯言です。失言をお許しくださいませ」

「………あ、あぁ…。許そう…。」



「最高よ!最高!!!!そうよね!アタシ以上の宝石なんてそうそう居ないもの!」

行儀は悪いが、ロードライドは気持ちが良かった


「フィンリーはアタシにとって宝石のような存在よォ?」

「光栄なことでございます。」


勢いよく席を立ってフィンリーを抱きしめる


「もうフィンリー、アタシと結婚しましょ!」

「殿下、席をお立ちになるようであればご馳走様を言ってからです。」



数名の従者が、堪えきれずに吹き出してしまった















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