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7話:フィリア2

 食堂で昼食を食べ始めるが、俺とフィリア姉さんの量を見てリュークとリリアの二人は言葉を失っているようだった。

 ちなみにこの学園の食堂は無料で、量などは好きにできる。貴族たちから莫大な寄付があり、それらを使っているとのこと。


「どうしたんだ?」

「いや、そんなに食べるのか? 生徒会長も……」

「私、見てるだけでお腹いっぱいです……」


 まあ、俺も前世ではここまでの量は食べれない。しかし、訓練を続け、強さと闘争を求めている今、食べないと体力が持たない。


「食べないと強くなれないぞ?」

「アルくんの言う通りだよ。食べないと強くなれないからね~」


 むしゃむしゃと食べる俺とフィリア姉さん。周囲もドン引きするほどの量を食べていた。

 リュークが苦笑しながら、俺たち二人の食べっぷりを眺めていた。


「強くなるっていうか、強くなる前に太るんじゃないのか、それ……?」

「馬鹿言うな。訓練で使い切る分をしっかり補充してるだけだ。それに、リュークも戦士を目指してるんだろ? これくらい食べてもいいんだぞ」

「いや、俺はそこまで胃袋大きくないし……」


 隣でリリアが小声で「すごい……」と呟いている。俺たちの会話にはあまり入ってこないが、目の前の食事に集中している様子もない。どうやら気を遣っているらしい。


「リリアも遠慮せず食べろよ。せっかく無料なんだからな」

「え、えっと……でも、そんなに食べたら体が重くなりそうで……」


 その言葉に、フィリア姉さんが軽くフォークを置いて微笑んだ。


「リリアちゃん、戦士や魔法使いは体力も大事だけど、自分に合った量を知るのも大事だよ。無理して食べる必要はないけど、これからの訓練を考えると、少しずつでも増やしていくといいかもね」

「は、はい! 気をつけます!」


 フィリア姉さんの優しい口調に、リリアは少し安心したようだ。

 リュークが肩を竦めながら話題を変えた。


「ところで、午後の試合だけど、どんな感じになるんだろうな。初めての実技ってことは、模擬戦かな?」

「だろうな。実力を見せろって言ってたし、対戦形式が一番わかりやすい」


 俺が答えると、フィリア姉さんが興味深そうに話に加わる。


「模擬戦なら私も見てみたいな~。でも授業で見れないや。残念。アルくん、頑張ってね!」

「いや、まだ誰と戦うかもわからないんだけど……」

「まあまあ、誰が相手でも勝つでしょ、アルくんなら!」


 フィリア姉さんは気楽にそう言う。


「アルドってフィリア先輩から見ても強いんですか?」

「わ、私も気になります」


 リュークの質問にフィリア姉さんが答える。


「そうだね~。少なくとも、私は本気を出したアルくんに勝てないかな」


 フィリア姉さんの言葉に、リュークとリリアのみならず、周囲も明らかに驚いていた。どうやら俺たちの話を聞いていたようだ。


「実際、シグルド兄様と戦って接戦だったからね」

「えっ、【剣王】のシグルド様とか⁉」


 リュークはあからさまに驚いているが、リリアにはその凄さが理解できないのか、分からないといった表情を浮かべる。


「シグルド様って、クレイヴンハート家の次期当主のこと、ですよね? 魔物の氾濫を一人で食い止めたという噂は聞いたことがあります」


 俺はリリアの質問に答える。


「噂じゃない。事実だ。それも、その時は十七歳だって言ってた。それに、あらゆる試合に出場して常勝無敗の剣士だ。剣聖とどちらが強いかなど噂されている。それに、その氾濫の中にはSランク指定の魔物も存在した」


 俺の話を聞いて、リュークが半ば呆れたように笑う。リリアは言葉を失っていた。


「いや、それって人間じゃないだろ……そんな相手と接戦って、アルドも相当おかしいんじゃないのか?」


 俺は苦笑して肩を竦めた。


「別に勝ったわけじゃない。シグルド兄さんには何度も負けてるしな」


 ほんと、可笑しい強さをしている。


「でも……アルドさんって、相当強いんですね」


 リリアの言葉にフィリア姉さんが声を上げて笑った。


「アルくんだからね~。正直、アルくんの力は異端よりだよ」

「異端?」

「どうせ模擬戦するんだし、運が良ければ見られるんじゃない? アルくんが自分で話さないなら、私からはあまり言えないけどね。でもね、アルくんって、クレイヴンハート家の中でも相当ぶっ飛んでると思うよ」


 俺は溜息をつきながら、話を切り上げることにした。


「まあ、午後の模擬戦でどれだけやれるかだな」

「ああ、だけど……アルドとは戦いたくないな」


 リュークが苦笑いを浮かべるのを横目に、俺はふとリリアの方を見た。


「私もアルドさんとは……」

「治癒師なら魔法をもっと使えるようにした方がいい。それとフィリア姉さんも言ってただろ、これからのために慣れておくのが大事だって。まずは慣れるところからだ」

「は、はい……私、頑張ります!」


 リリアの返事は少し震えていたが、静かに頷いた。

 フィリア姉さんが席を立ち、両手を大きく伸ばす。


「さて、私は次の授業があるから行くね~。アルくん、模擬戦、がんばってね!」

「わかった。フィリア姉さん、遅刻しないようにね」

「はーい!」


 フィリア姉さんが軽やかに去っていくと、俺たちも食堂を出る。

 イリスと戦えるなら、【剣聖】の実力ってのを味わいたい。というか戦ってみたい。

 そんなことを考えながら、午後の授業に備えて訓練場へ向かうことにするのだった。




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