Thunder & Rain 1(春の予兆)
ZEBRAは、オーナーの許可を得て、セナが通う女子校の調査を行うことにした。
セナの話しでは、同級生をストーカーする教師がいるという。
だが、おかしいと思う。
知り合いの伝手で、出向の指導員として、武術クラブのコーチを10日ほど務めることになった。
クラブの顧問も大学時代の先輩になるが、それとなく話しを聞いても、ストーカーをしてしまうような教師に見当はないという。
むしろ、生徒からの意図的な冤罪ではないかと疑うべきかもしれない。
「コーチ。あっ、えーと、カイさんでよかったんでしたっけ?」
「あっ。はじめまして。城野カイです。カイは船を漕ぐ時のオールのことですね。キヘンにキジって書くんですけど、ちょっと説明が難しいかな。」
「で、カイさんて、なにをやってらしたんですか?」
「あっ。ここ武術全般やるんで、カイさんはなんのコーチなんだろうって。」
と、スズと名乗った少女は、屈託なく笑いながら、尋ねてきた。
「ぼくは、大学では合気道やってました。友人にも武道のオタクっぽいのがいるので、君達とも、わりと話しは通じるんじゃないかな。」
ということで、数人の生徒を相手に、合気道の稽古をお披露目することになる。
まずは、伝統的な基本の極め技を教えて、次にその極め技の返しをやってみせる。
次に木刀、合気道では木剣と呼んでいたけれど、心得のある生徒に面の打ち込みをしてもらう。
それを相手から見て右側、自分からは左側に体を捌きながら、打ち下ろされた剣を持つ相手の右手を押さえながら極める。
はじめは約束ごとみたく、手順を追って技をかけるだけなので、半年ほど稽古を重ねても、本当に強いのかは分からないかもしれない。
特に、本気でコーチに来ているわけでもないので、これでいいと、城野カイことZEBRAは考える。
実際に自分が強いのかも、よく分からない。