蜜蜂(ミツバチ)の熱殺蜂球
「ねえ、サエちゃん。なにか心配事があるんじやないかな?」
「えー。なんでですか?」
「あのね。人ってね、隠し事をする時や嘘をつく時ってね、どこかに歪みが出るもんなんだ。」
「・・そうなんですかねえ?」
「そうだよ。昔の和歌にもあるけれど、隠そうとすればするほど恋心は色(形)に出るもんなんだって。」
「別に、隠すような恋とかしてませんよ。」
「というのは、ぼくの勝手な深読みでね、ほんとはあの歌から学んだんだよね。」
「隠し事や嘘をつく時は、隠そうとしてはいけないんだってことを。」
「むしろ、話そう、人に見せようとすれば、上手に嘘もつけるし、隠し事もばれないんだなって。」
「それで、なぜ、わたしがなにか隠してるって?」
「経験かな。人をたくさん見てきたからね。」
「そうなんですか。鷲巣さんて、なんかすごいですね。」
そう。「鷲巣」がぼくの仮の名前。
本当は、スズメバチのような悪人を退治するハンターだから、WASPとか、和数府とかの偽名にしたかったけど、なんとなく無理を感じたし、ちなみにスズメバチが完全な害虫であるとは思っていない。
人身売買などの犯罪者をスズメバチに喩えるのは、本当は本意ではないけれど、なんとなく語呂も良くて、本業を隠すための仮の職業として「スズメバチハンター」を選んでみた。
なにゆえか、本業のチーム名が「デボラ フォース」になったのも、虫つながりなので、命名のセンスは悪くはないように思える。
さらに「会社」の先輩に聞いた話しでは、「目標」を10名ほどで取り囲んで、一斉射撃しても、仲間には一発も弾が当たらないように訓練されているという。
まるで蜜蜂の熱殺蜂球のようではないかと感心する。