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名前はまだない  作者: 三度の飯より糖分
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第三ページ 「新しい家族」

再び目を開けるとまたあの天井があり、目が覚める前のことが夢では無かったことを実感する。

「ご主人様!お目覚めになったのですね!」

部屋の入口にたち、驚いている人がいる。昨日の軍服っぽい服とは打って変わり、執事のような服を着ている。名前は、、、

「ご主人様、改めて自己紹介させていただきます。私の名前はイフィリカです。ご主人様とこれから過ごせることを楽しみにしています。すぐに医者のサリオを呼びますね。」

彼が指を鳴らすと、水が空中に湧き上がり、鳥の形にちなってどこかへ飛んでいく。

「お嬢様。お水はいりますか?お顔を洗いたいですよね。こちらに用意させて頂きます。」

今度は何もせずに水が出てきた。魔法って便利そうだ

「アレリウム様もすぐ来られるはずです。」

しばらくすると、お父様と医者が来た。

また簡単な診察を受けると医師は帰り、気絶した原因をお父様から聞かされる。

「今回君が気絶したのは、ただの人間の体で彼らの忠誠を受けようとしたから体が追いつかなかったようだ。まだ受け入れることができる体でもないのに誓いを迫った彼らに問題があるが、簡単に忠誠を受けようとした君にも問題がある。」

「君はわかっていないのかもしれないが、忠誠を受け入れるという事は、彼らの命を貰うということだ。

彼らは君のために身を捧げ君のためなら、命を捧げる。簡単に決めていいことではない。」

お父様に怒られて、自分が簡単に考え過ぎていたことに気づいた。

「ごめんなさい。」

「いや、君が謝る必要は無い。無意識のうちにやってしまったことだし、すぐに決めてしまえるだけ今までが辛い人生だったのだろう。」

そう言ってお父様は私の頭を撫でてくれる。

「まだまだ君に伝えなければならないことは多くある。」

「先程言ったように、君はまだ彼らの忠誠を受け入れられない。なぜならまだ君は人間だからだ。私たちと共に歩むことにすれば君は人間では無く、神者になる。そうなれば寿命が伸び、魔力が増えるからな。」

「魔力が増えるということは、私にも彼のような魔法が使えるのですか?」

2次元にしかないと思っていた魔法が自分にも使えるのかもしれないと思うと心が踊った。だが、お父様は予想外の反応に少し呆れているようだった。

「君は今まで使えなかったのか?」

「はい、そもそも前の世界に魔法というものは存在しませんでした。魔法は物語の中にしか存在しないものだと思っていました。」

「ふむ、存在自体はどのようなものかわかるようだな。それは素晴らしい。まぁ魔法の説明はおいおいとして、何か聞きたいことはないか?」

私が聞きたいこと。少し考えて、私はずっと知りたかったことを聞いた。

「どうして、私の住んでいた世界では私は普通に生きることが出来なかったのですか?どうして、私だけが世界の異物だったのですか?」

お父様は少し言いにくそうな顔をしてから、ゆっくりと答える。

「君は、この世界の人間だからだ。君が別の世界に行ったことは何か意味があるのかもしれないが、死んだはずの体に魂が宿ることを因果律が許さない。いずれ見つかれば、存在は消されることになる。」

「私は、あの世界で本当は死んだ人の体に入っていたということですか?」

「そうだ。因果律に見つかればその時から少しずつ干渉を受けていずれ存在が消される。救いと言えば、因果律に直接人を殺すほどの力がないため、生きようと思えば生きれることだ。だが、存在をなきものにするなど、不慮の事故を起こしたりなど、精神的にも身体的にも追い詰めることはできる。」

「では、死んだ体に入るというのは今もそうなのでは?でしたら、私はここでも存在を消されてしまうのですか?」

因果律が私の人生に干渉をしていた。という話はにわかに信じ難い、それでも私がどんな人生を歩んできたか知らないはずなのに私の環境を当てられれば、信じるしかない。

「それは無い。君の体はずっと生きていたし、元からこの体は君のものだ。前の君が死んだとしても魂は同じだからな。因果律には何も反しない。ここでは君は普通の人間だよ。」

"普通の人間"私が1番欲しかったもの。

「でしたら、私は、これからは普通に過ごせますか?普通に誰かと話して、普通にご飯を食べて、寝て、おはようと言えばおはようと返して頂けますか?」

「もちろんだ。毎日おやすみも返そう。それを私たちの普通にしよう。」

いつの間にか溢れていた涙をお父様が拭ってくれる。それでも拭いきれない涙を抱きしめて受け止めてくれた。私は、ここで生きていく、生きていたい。ここにいてもいいと言ってくれるなら。

「もう、落ち着いたか?」

「はい、すいません。服を汚してしまって。」

赤くなった目頭を擦りながら頷く。

「イフィリカ、タオルを。」

「はい、こちらに」

お父様は貰ったタオルを少し凍らせると、私の目に当てた。

「これで目を冷やしなさい。」

「すいません。」

「今日は何をしたい?したいことがなければこの屋敷を見ながら君の騎士たちと話してはどうだろうか?」

「わかりました。特にやりたいことはないので、そうします。」

「そうか、それはいい。では私は仕事があるので失礼する。君の一日に女神の御加護がありますように。相手の一日が良くなるように願う挨拶だ。」

お父様は私のおでこに軽くキスをして、部屋を出た。

そして、私はイフィリカと2人きりになってしまって少し気まずい。

「お嬢様。それでは私が屋敷を案内させて頂きますね。朝食とお着替えはこちらにご用意させて頂きましたのでごゆっくりお過ごしください。」

「私は外に出ていますので、ご準備が整いましたらこちらのベルをお鳴らし下さい。」

「すいません。」

「、、、先程から思っていたのですが、謝らなくていいんですよ。これはお嬢様の当たり前の権利ですし、お嬢様は誰かに謝らなければならない身分でもありません。」

そう言い残して彼は部屋を出ていった。見なれない部屋だが、1人になると落ち着く心と心細さが残る。

私は用意された朝食を食べて着替えた。少し時間がかかってしまって申し訳ないが、ベルで呼ぶと彼は快く入ってきてくれて、片付けをしてくれた。

「それでは行きましょうか、お嬢様。」

エスコートの手を差し伸べられて私はその手を受け入れる。

「初めは厨房に行きましょう。お嬢様の好き嫌いを伝えて今日の晩餐に備えましょう。」

「はい。」

そうして歩き始めていると、彼が色々話してくれた。

「厨房にいる料理担当の名前はトレヴァーです。彼は三人兄弟の長男で面倒見がよいまとめ役です。けんかを止めるのは少し下手ですが。」

「トレヴァーさんは昨日の赤髪の方ですよね。」

イフィリカは頷き同意する。

「ところで、お嬢様は何が好きで何が嫌いですか?」

急な質問に私は少し悩んだがすぐに答えは出た。

「ここの食事はよく分かりませんが、私の元いた世界の食文化と大差ないように感じます。なので、私に食べ物の好き嫌いは特にないと思います。」

「それは少し困る答えですね。」

「あ、ごめんなさい。え、えっと、どちらかと言えば、冷たいものより暖かいものが好きです。」

「冷たい食べ物は嫌いということですか?」

「いえ、そうではないんです。元から冷たい料理などはもちろん冷たい方が好きです。元々は暖かいのに冷めてしまった料理が少し、、、。」

暗い部屋に1人、冷たい弁当などを食べていたことを思い出した。

少し沈黙を挟んでから彼は会話を続けた。

「わかりました。お嬢様の料理は常に出来たてをお持ちしますね。確かに冷めた料理より暖かい方が美味しいに決まってますし!」

「この屋敷の料理担当、トレヴァーの料理はとても美味しいですよ。今日はお嬢様の好みの料理を見つけるために沢山料理を出しますね。」

「本当ですか?朝食がとても美味しかったので、今から楽しみです。」

「そう言っていただけるとトレヴァーが喜びます。是非本人にお伝えください。きっとディナーがさらに豪華になりますよ。さあ、着きましたよ。」

とても香しい匂いの方向を見ると、とても真剣に料理と向き合う赤髪のトレヴァーがいた。何度か大きな声で呼んでも返答がない。

「とても集中してますね。」

「集中を途切れさせるのは心苦しいものがありますが、お嬢様に気づかないとは、、、。呼んできますね。」

「はい、待ってますね。」

するとトレヴァーの所に行ったイフィリカが彼の頭を殴る。彼に言われて気づいたらしいトレヴァーが慌てて私のところに来た。

「申し訳ありません。お嬢様!俺としたことが気づかず、、、。」

「全然大丈夫です。むしろお邪魔してしまって申し訳ないです。とても集中されてて、少し見とれてしまいました。」

「申し遅れました。改めて自己紹介をさせていただきます。俺はトレヴァーと申します。俺の担当は料理で毎日作らせていただいてます。食べたいものや嫌なものがあればお伝えください。工夫します。」

「入れないじゃなくて工夫するんですね。」

「あはは、、、はい。俺の料理は好評なので、うまく混ぜてますよ。ですが本当にダメなものは入れないのでご安心を。ちなみにイフィリカはキノコ全般が嫌いですよ。」

「本当ですか?それは困りますね。」

「何、人の好みをバラしているんですか。やめてくれませんか?子供っぽくて気にしているんです。」

「ふふふ」「あはは」

見た目は完璧な執事といった印象なのにそのような一面があって照れているところを見ると笑いが込み上げてきた。私はトレヴァーと笑いあった。

「おっと、これは聞き忘れちゃいけないな。お嬢さま、どんな味が好きですか?」


彼にある程度の食の好みを伝えてからこれ以上いると業務が遅れるので私とイフィリカは厨房を出た。

「彼はどうでしたか?」

「トレヴァーさんはとてもいいお兄さんって感じがしました。きっとご兄弟も彼を慕っているでしょうね。」

「、、、そうですね。彼はとても慕われていたでしょうね。」

慕われていた、、、?どうして過去のように、、、

「あ、あの」

私が質問をしようとしたのを遮るように彼が話はじめる。

「次に行くのはこの屋敷自慢の花園です。屋敷一面に花があるうえ温室にもあるのでいつも彼を探すのが面倒なのですが、今日はバラ庭園にいるように伝えているのできっといると思います。どの花も一流なのですが彼のバラは格別ですよ。さぁ、つきましたよ。」

イフィリカは庭へと続くドアを開けて通してくれた。そこには、初めて浴びるこの世界の太陽の陽に照らされる真っ赤なバラが目の前一面に広がり、中央には茶会ができそうな白くて美しい東屋があった。こじんまりした空間だが、とても色鮮やかで「きれい、、、」と思わず声にでてしまった。

「わぁ本当?それはとてもうれしいな。きっとこの花たちもお嬢様に見てもらえて幸せだね。」

「え、?わ、あ!」

突然後ろから声が聞こえて振り返りざまに思わず後ろによろけてしまった。

「おぉっと、危ない。大丈夫?気を付けて、薔薇には棘があるんだから。」

声の主を見るとバラの鮮やかさに負けないほどの鮮やかな紫髪で瞳は春の新緑を詰め込んだように優しい緑色だった。

「なんて、驚かせた僕が言うことじゃないね。ごめんね。」

「とてもきれい、、、」

「ご、ゴホン。早く離れてください。」

そういわれて我に返った私たちはすぐに離れる。

「改めまして、彼の名はレミリオ。この屋敷の庭担当でこの屋敷を常に花で飾り、屋敷の威厳を保ってくれています。少々お調子者な一面はありますが、根は切れる優秀な人です。」

「はいはーい!僕がレミリオだよ!是非僕と仲良くしてね~呼んでくれたらすぐに行くからね。是非よろしく~」

「ところで、今日は選定するといっていたので、掃除担当のセレンスもいると思っていたのですが、どこですか?レミリオ。」

「んーとね。今は向こうの選定が終わった落ち葉の掃除を頼んでるよ。探せばすぐ見つかると思うよー。僕はここでお嬢様にお茶をお出ししておくから、行ってらっしゃい〜。」

「全く、勝手に決めて。でもまぁいいでしょう。お嬢様は花がお好きなようですし。今日のお茶はここでいいですよ。」

「では、行ってくるのでくれぐれを粗相のないようにお願いしますよ。」

「もちろん。僕がそんなことするはずないでしょ?ねっ?お嬢様」

突然の問いかけにすぐに反応できず、中途半端な回答になってしまった。

「えっ?あ、はい。」

「そういうところです。はぁ、本当にすぐ戻りますからね!」

「ふふん。いってらっしゃーい。」

セレンスを探しにイフィリカが行ってしまった。

「さっお嬢様、こちらにどうぞ。」

「は、はい。ありがとうございます。」

「えーと、今日のお紅茶はアールグレイとシフォンケーキと、バラジャムです。どうぞ召し上がれ。」

私に少しなれない手つきで給仕をした後、彼は私の向かいに座った。

「味はどう?おいしい?」

「甘い、、、あ、とても美味しいです。」

「本当?良かった。僕お嬢様に飲んで欲しくてたくさん練習したんだよ。」

「お嬢様。ここはどう?まだほんの少ししかいないけど、前にいたところよりずっといいでしょ?」

突然そんなことを聞かれた。

「、、、分かりません。」

まだ、私には分からない。たしかにここは前の世界よりずっといい。だけど、一度甘さを知ればもう、元には戻れないから。それにお父様は私に1週間考えろと言っていた。だから、ここで答えては行けない気がする。

そう考えていると彼は突然立ち上がり、私に近寄る。テーブルが傾き、紅茶のカップやポットが落ちてしまった。

「ねぇ、お嬢様。僕さ、お嬢様とずっと一緒にいたいんだ。お嬢様のためなら何でもする。ほんとに何でもするよ。だから、僕から離れていかないでね。僕を、置いていかないでね。」

急にそんなことを言われて驚きと戸惑いが隠せない。どうして私にここまで言うのだろう。

「分からない。」

私がそう答えると、少しの沈黙を置いて彼は落ち着いたようだった。

「ごめん。びっくりしたよね。服は汚れてない?怪我はしてない?すぐ片ずけるね。ちょっとその辺の花を見てて。気に入ったのがあれば部屋に届けるから。」

そう言って取り繕う彼を見ていると、危うくて不安定に見えた。私は、彼に手を伸ばそうとした。

「あー!ちょっと、何してるんですか!ティーセットを割って!」

イフィリカはレミリオに近ずいてそっと耳打ちする。

「何もしてない、ことは無いんだろ?この間抜け。」

「、、、、」

「あーごめんねぇ〜。やっぱり僕まだ下手くそだったみたい。もっと練習して今度は完璧にするね。ごめんお嬢様。」

「別に、完璧でなくていいです。美味しかったです。」

「ちょっと、どいてくれない?邪魔。」

「えっあっごめんなさい。」

私が振り向いて謝罪すると共にイフィリカの水が彼に注がれた。

「ってぇな何すんなよ!イフィリカ!」

「お嬢様に舐めた口聞くなよ。餓鬼。お前は遊ぶためにここにいるのか?」

「だって、、だって、っっわかったよ!謝るよ!」

「お、お嬢様、大変申し訳ありますでした。ここをお片付け致しますので、おどき下さい。」

そう言うと、どこからか風が吹いて、ガラスの破片は集められ、テーブルや壊れてないものがセッティングされていく。

「あははっアハハっ本当にお前は敬語が下手くそだなっ馬鹿らしー笑」

「レミリオ!!笑うなよ!仕方ないだろ、、あんまり使わなかったし、俺、頭悪いし。」

「悪い悪い。ちょっとおかしかっただけさ、今度このレミリオ兄ちゃんが教えてやるよ。ついでに草魔法もな」

「本当か?!やった。男に二言はなしだぞ!」

「はいはーい。」

「はあ。私からも謝罪します。お嬢様、セレンスが態度が悪くて申し訳ありません。ですが、彼は一番新人ですし、多感な思春期なので、これからもこういうことが度々あると思います。しばらく見逃してやってください。」

「思春期、、それは大変な時期ですね。何も思っていないので、大丈夫ですよ。」

「ありがとうございます。おい、セレンス。こっちに来て嫌でも自己紹介しろ。」

呼ばれるとセレンスは明らかに不機嫌になりながら、こちらに来た。

「セレンスです。担当は掃除とか手伝いとか、幅広いです。俺はあんたに興味無いから、よろしくしなくていいです。」

そう言い放つと、再びイフィリカからの水攻撃がさらに激しくなって降り注ぐ。

セレンスはイフィリカを睨みつける。

「よし、もうここはいいですね。問題児ばかりでたまったものではないですし!行きましょうお嬢様。」

私は手を引かれて庭園を出ていく。振り向くとエミリオが笑顔でこちらに手を振っていて、セレンスは泣いていた。

しばらくしてからまたゆっくり歩き初めて彼がまた話し始める。

「次はギルラのところに行きましょうか。」

「ギルラさんは何をしていらっしゃるのですか?」

「おや、私たちに興味が出てきましたか?嬉しいです。彼は魔法の研究をしています。知識豊富でちょっと変わり物ですが、その分研究熱心です。」

「研究者なら、白衣とか来てらっしゃるんですか?」

「ええ、彼は着ていますよ。意味は無いんですが、落ち着くんだそうで。さぁ。着きましたよ。」

着いた扉はとても頑丈そうなのだが、なんだか煙が見えるような気がする。

「あの、煙、、。」

私がそう言うと、彼は扉に目を向ける。

「ん?煙ですか?あのバカ!お嬢様!!」

そう叫ぶと、彼は私を抱き寄せ周囲を水で覆う。

それと同時にとても大きい爆発音と煙と人が飛んできた。その人と目が合ってしまった。彼がおそらくギルラだろう。

彼は壁にぶつかり、「ぶひゃ」と小さく声を上げる。

爆発に伴う煙が落ち着いた頃、イフィリカが周囲の窓を水の玉をつかい開けていく。

「この野郎、、、」と小さいけれど、とても怒りの籠った雰囲気でギルラに近寄っていく。

そしてギルラの胸ぐらをつかみ窓から落とさん勢いで

宙に浮かばせている。

ギルラが「ぴょえ」と情けない声を上げている。

「私は、、私は、今日爆発するような実験はするなと言いましたよね?どういうことなんでしょ?」

「こ、ごめんなさい。あ、あの、だけど、お嬢様が来たからちょっと興奮しちゃって、、、爆発しなければいいかと思って、、、」

「は??今なんと?」

「いぁぁぁぁ!ごめんなさい!!すいません、もうしません。ごめんなさい許してください!!!」

あまりの剣幕に私まで水の中でビビっている。そんな私を一目見てイフィリカは少し冷静を取り戻したようだ。

「お嬢様がいるからここまでにしておいてあげましょう。今は。さっさと行け。」

「ひゃい。」

ぜはーぜはーと倒れ込んで呼吸を整えた後、爆速で身だしなみを整え直して来た。

「改めて紹介しますね?このアホはギルラです。役ただずの研究者です。」

「改めて紹介を受けました。ゴミカスのギルラです。今は火魔法の打ち上げの研究をしていました。様々な魔法を研究しているので、魔法陣やその他もろもろ魔法については詳しいです。はい。」

「あ、汚いですよね。すいませんすぐ片付けます。」

そう言うと、ポケットから出した小さな紙を出して地面に置く。そして何かを唱える。

「風魔法に命ずる今ここにこの魔法陣を媒介にして我を助けよ。対価は魔力。いざ、起動。」

すると風が吹いてきてすす汚れを払い。書類を片付けていく。そして、ギルらは宙に浮いていた。

「す、すごい。けど、あの、ギルラさん?浮いてませんか?」

「ぇぇえええなんで!僕はゴミじゃないよ!あ!あの魔法陣ちょっと欠けてる!さっきの爆発のせいだ〜!」

「お嬢様!そこの紙!それあげます!何かあったら思いっきり破ってください!」

そしてそのまま窓の外へ飛ばされて行った。

「ハハッいい気味ですね。それではもうここにはようはないですね。次はどこに行きましょうか?医者のライラスはもう知っているから紹介の必要はないですし。かと言ってクローダは今いないんですよね。」

「うーん、なら仕方ないですね。今日はもう部屋に戻りましょうか?一通り顔合わせは出来ましたよね。

クローダには後で呼び出しをかけます。」

そうして部屋に戻ると、どっと疲れが来た。ベットに倒れ込むと今日のことを思い出す。みんな個性豊かで楽しい人達だった。だけど、寂しそうな顔をしていた。

でも、ここの人たちが好意を寄せているのは、過去の私。私が知らない私。

それでも、私を歓迎してくれる。私に居場所をくれる。この人達といたいな。例え、いつか理想と違って飽きられても、それまでは、、、。

そこまで考えているうちに、眠くなって眠ってしまった。

コンコンッ扉を叩く音が聞こえた。

「お嬢様。お嬢様。」

何度も呼ぶ声が聞こえて、ようやく目覚めた私は呼ばれ始めてどれくらいたったのだろうか。目覚めて急いでドアを開ける。

「ご、ごめんなさい。少し眠ってしまっていて、本当にごめんなさい。」

「驚いた。そんなに急がなくていいんですよ。それに、そんなに待ってません。」

「お優しいですね。」

「そんなことはないですよ。夕食のご準備が整ったのですが、もう食べれますか?」

「はい、食べれま、、」

ぐぅー

そう答えた瞬間にわたしの腹の虫がなく。私は恥ずかしくて顔を真っ赤にして両手で顔を覆う。

「ははっあ、すいません。笑ってはいけませんよね。もう忘れたので行きましょう。」

「う、ぅぅ、」

髪で顔を隠しながら、エスコートを受けて食堂へ向かう。しばらく歩いていると、落ち着いてきた。

「お嬢様、着きました。アレリウム様がお待ちです。ドアをお開けします。」

ドアの奥には長テーブルにたくさんの料理が並んでおり、その奥にお父様がいた。

イフィリカに椅子を引かれて私の席に座る。

すると直ぐにトレヴァーが暖かい食事を持ってきた。

食事を運んだ後また出て行き、イフィリカは水を持って部屋の隅にたっている。

「それでは、食事を頂こう。食事の前の挨拶を言うので、それに続いて言いなさい。カラトリーの使い方は見様見真似で使うなり、好きに使っていい。」

「七属性の全ての恩恵に感謝し、その全てを我の糧に。命をいただくことを忘れん。」

その言葉を私も続けて言う。

「この挨拶は長くて仰々しいので、あまり言わないことの方が多いが、知っておくといい。」

「はい。覚えました。ありがとうございます。」

そして私はお父様の見様見真似をしながら、食事をとる。味は、やはり私の味覚にもあい、とても美味しい。

「味はどうだ?」

「とても美味しいです。本当にとても、美味しいです。」

「ふむ。それは良かった。なら、今日あった彼らはどうだった?」

「皆さんいいひとでした。少しずつしか接することはできませんでしたが、たくさんの人とお話ができてとても嬉しかったです。」

「そうか。なら明日は何をしたい?」

「明日は、、もっとたくさんのことを知りたいです。皆さんのことも、私がしなければならないことについても。、、、後、皆さんと一緒にご飯を食べたいです。」

ドアの隙間からずっと見ていた。家族の団欒。

「彼らは騎士であり、使用人だ。許されることでは無い。」

「あ、、、すいません。」

「だがしかし、彼らは私たちの計画の仲間でもある。いいだろう。明日からは椅子を増やす。」

「ほ、本当ですか!?」

私が急に立ち上がってお父様は驚いたようすだ。

「食事中にそのように大声を上げて立つのは望ましくない。」

「、、、、はい。」

その言葉に私は少し落ち着きを取り戻し着席した。

「すいません。私、昔から大人数でテーブルを囲んでご飯を食べることに憧れがあって、、嬉しくて。」

「こんな簡単なことで喜ぶのならいくらでも叶えるよ。」

「そ、そんな、恐れ多いです。こんなにも良くしてくださっているのに、これ以上わがままなんて言えません。」

「君の要求をわがままとは思わないし、これから先そのようなことがあったとしても、娘のわがままを聞いてやるのが、良い親なのだろう?」

「そうなのでしょうか?わがままは言わないのが1番だと思いますが、そういうのって素敵だとおもいます。」

「それは良かった。」


「それでは、おやすみなさい。お父様。」

「おやすみ。いい夢を見るんだよ。」

「はい。お父様もいい夢を。」

夕食を終えて挨拶をしてから私は自室に戻る。

そこで就寝の準備をしているイフィリカに過去の私についてきいてみることにした。

「イフィリカさん。前の私はとても良い人だったんですか?皆さん。私に良くしてくださいます。すごく、大事に思われているようで、、。でも、私は前の私を知らないし、なんの実感もありません。」

「人それぞれあると思いますが、私の認識ではいい人、、というのは正直違うかもしれません。もちろん悪い人ではありませんが、どちらかと言うと現実的な方でした。少しずる賢いところもありましたね。」

「それは、少し難しいですね。」

「難しいと言いますと?」

「あ、いえ、ただ気になっただけです。」

「そうなんですね。色んなことを知りたいと考えてくれていて嬉しいです。」

「さてと、就寝の準備が整ったので、これで失礼しますね。明日はもう少し屋敷を案内した後、語学と歴史学を学んでいただきます。」

「はい。わかりました。おやすみなさい。」

「何かあればベルを鳴らしてくださいね。すぐに来ますから。おやすみなさいませ。」

イフィリカと挨拶をしたあと、私はベットに入る。今日もたくさんのことがあったためか、すぐに眠りにつけた。

〜アンナが気絶してから〜

アンナのベットを取り囲むようにみなが集合している。

「君たち、全員でこの子が目覚めるのを待つのはやめなさい。主が帰ってきたのだから、準備が沢山あるだろう。」

「ですが、みんなここに居たいようです。」

「では、こうやって決めればいい。」

「くじ引きだ。当たりがひとつある。」

「なるほど!」

みなが一斉ににくじを引く

「やりました!私が見ておきますね!」

周囲の羨ましがる視線を一身に受け得意げになるイフィリカ。

「私の日頃の行いの成果です。」

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