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赤い炎

 黄色の炎を灯した男は三駅先で電車を降りた。幸いなことに聡介の会社へ向かう経路上にその男の家はあるようで、通勤定期があるため余計な費用は発生しなかったのだがついさっき辿った道のりを引き返すような形となってしまった。

 駅を出てからはどんどんと住宅地の方へと進んでいく、駅前のオートロック付きマンション等に入っていかれたら部屋の特定が難しいなと思っていたのでその辺も運が良かったと言って良いだろう。ただその男が向かっているのは閑静な住宅街という表現がその場所のためにあるのではないかと思えてしまうような所であった。周りは既に薄暗くなっているが素人が人一人を尾行するにはあまりにも難易度が高いように思われる。一度でも振り返られたら尾行は止めよう、、、そう考えていたが男が振り返ることは一度もなかった。全てが上手く進んでいるように感じられた、そう言えば今日の『お目覚めニュース』での星座占いは一位だった気がする。


 20分位歩いただろうか、尾行されているなどとは思っていないであろう男はその後も振り返りはしなかった。追う背中から一日働いて疲れ切っていることが読み取れる、自分も帰り道はあんな感じなのだろうなとそんな風に思って見つめていると男は一戸建ての家の前で立ち止まった。そして鞄から鍵を取り出し、ポストに郵便物がないかを確認した後に玄関のドアを開けその家の中に吸い込まれて行った。ここが男の家と考えて間違いないだろう。

 ミッション成功!

 聡介はスマホを取り出し、もう一度安藤紫音へと電話を掛ける。

「もしもし?何か進展あった?」

 今度はすんなりと電話に出た死神はまたも他人事のような雰囲気を醸し出してくる。

「ターゲットの家を特定することが出来たから住所を今から言うぞ。」

「あ~ちょっと待って、地図アプリとか持ってる?」

「ん?あぁスマホに入れてる。」

「じゃあそれで現在位置表示してスクショしてSMSで送っておいて。」

「、、、、、、了解。」

 やり取りをしていると電話の先にいる相手が本当に死神なのだろうかと疑いたくなってくるが、とりあえず言われた通りに現在位置を送りつける。

「これで俺のノルマ一件達成だよな?」

「え~まだちゃんと引き継げてないし。

 明日にはそっち行けそうだろうからもうちょっとお願い!」

「もう少し見張ってろってことか?こっちにも仕事あるんだよ。」

「まぁまぁ、私の仕事邪魔したのはそっちなんだから、もうちょっとだけ。」

 相変わらずの理不尽ぶりである。

「っくそ、明日だけだからな!なるべく早く来いよ。」

「オッケー、オッケーよろしくね。」

 釈然としないがとりあえずこれで解放されるまでのノルマの1/3が終わると思うと何となく気持ちが軽くなったような感覚にすらなってしまう。


 次の日の朝、会社には体調がすぐれないから午前中様子を見させて欲しいと電話を入れ聡介の家から三駅先を再び訪れた。死神がすぐに合流出来ればそのまま午後出勤し、合流が遅れたらそのまま一日休んでしまおうと考えていた。

 昨日からの清々しさを胸に駅からターゲットの家までの道のりを歩いていた聡介だったが事態は一変してしまう。早めに自宅を出てその男をずっと見張るつもりでいたのだがその道中でターゲットと鉢合わせしてしまったのだった。ヤバいと思って隠れようと思ったがそれはそれで逆に怪しくなってしまうのでそのまま平静を装いすれ違おうとしたのだが、鉢合わせしてしまったことよりも衝撃的なことが起こっており驚いた表情を隠せていた自信がない。

 昨日から灯っていた黄色い炎がなんと今日の朝には赤い色へと変わっていたのであった、、、、

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