奇跡の正体
声の主は続ける。
「本当に久しぶりだね、急にバンドを着けたってことは何かあったのかい?」
「えっと、、、クマ先生、、、御堂先生ですか?」
「うん、そうだよ。久しぶり過ぎて忘れてしまったかな?」
「ちょっと記憶が曖昧な所があって、、、先生のことやバンドのこともついさっきまで思い出せないでいました。」
「そうか、それでもバンドを着けたってことは何か困りごとが起きたってことかな?」
どこから声が聞こえてどこに話しかけて良いのか分からないのでとりあえずバンドに向かって話掛ける様な体勢で聡介は雪村かなえの話を御堂に説明し始めた。
「そうか、、、崇君は残念だったな、しかもお子さんも同じ病気とは。それで二人を助けるために私と連絡が取りたかったってことか。」
終始黙って話を聞いていた御堂だったが最後の申し出をする前に向こうから核心に触れて来た。
「はい、何とか代償なしで二人を救うことは出来ないでしょうか?」
「残念だけどそれは出来ない。私は奇跡を起こせる訳じゃないんだよ、他の人が持っている残りの寿命つまりは霊魂の残量を移し替えてあげることしか出来ないんだ。
一人を救うのに必要となるのは人間一人分の霊魂、死神であれば半人分の霊魂。死神は人間よりも寿命が長く霊魂の総量が大体倍くらいあるからね、結果人間同等の寿命となってしまうんだ。死神の力がなくなるって表現をしているが霊魂を見たりする力は残っているはずだよ。」
世の中そんなに都合の良くは出来ていないようで雪村かなえの犠牲は避けられないことが確定した。覚悟は出来ているとは言っていたがあまりにも辛い現実だと暗い気持ちになっていた聡介は更に重苦しい現実に気が付く。
「それってつまり今回のケースであれば、、、」
「そう、二人の子供を助けたいのであれば、かなえ君の残りの寿命とその妹の紫音君の半分の寿命を手放す必要があるね。
もしそれを受け入れられるのなら霊魂を移すこと自体は問題ないよ。」
「他人の俺がそんな重要な決断出来ないので今の話を当人たちにしてみます。」
「そうだね、それが良い。話がまとまったらまたそのバンドを着けてくれるかな?こちらからまた連絡をするようにするから。」
そう言うと聡介の部屋にまた静けさが戻って来たのだった。
紫音に電話をして御堂から聞いた情報を伝えるとお姉ちゃんと一度話をして折り返すとのことだった。その条件で二人の子供の命を助けてもらいたいとの返事が来るまで一日以上経過していたことから姉妹の間で相当もめたであろうことが容易に想像出来る。
聡介は再びリストバンドを腕にはめ御堂と連絡を取り、日時とゲートを発生させる場所、注意点を聞き取った。
その情報を紫音に伝えた聡介は部屋で一人煙草をふかしていた。
そして電話を取り番号を打ち込む。
「はい。」
電話の先で男が応答する。
「日野さんですか?如月です。御堂巌とコンタクトすることに成功しました。
次にゲートが発生する場所も突き止めました。」




