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同業者

村上勝を見送って以降、聡介はあの眼鏡を身に着けることがなかった。正確に言うとまた黄色い炎を目にしてしまうのではないかと思うと身に着けることが出来ないでいたのだった。

 眼鏡の着用をすぐにやめてしまったことが日頃から聡介に絡むチャンスを探している榎本にとってはナイスアシストとなってしまったのだが、いつものように適当にあしらう気にも慣れずに安藤紫音ばりの完全無視を決め込んでいた。今日も何かと近寄って来る榎本を避けるようにさっさと会社を出て外回りに出て、今までにない位に仕事に精を出していた。仕事が好きになった訳でも、覚醒した訳でもなくただ仕事に没頭している時はあれこれ考えなくて良いからであって自分自身それが逃げであることも自覚している。しかし今の聡介にはそうすることしか出来なかった。


 とりあえず午前中にやろうと思っていた案件が片づいたため、どこかで昼飯でもと店を探していた聡介はその場で足を止めた。

 今すれ違った男、、、同じ眼鏡をしていなかったか?

 ゆっくりと振り返ると信号待ちをしているその男はやはり聡介が死神から渡されたのと同じ眼鏡を掛けている。

 誰か黄色い炎の人をつけているのかも知れない、とその男に気付かれないように鞄の奥底にしまっていた眼鏡を取り出し覗いてはみたが周辺にそれらしき人物はいなかった。安堵が訪れたのと同時にその男がどういった経緯で死神の手伝いをすることになり、人の死を目の当たりにしてどうかんじているのかを無性に知りたくなっている自分に気が付いた。

 彼の話を聞きたい。

 聡介は空腹であることも忘れその男の後を追うことにした。一体どうやって話を切り出すのか、、、そのアイデアは一切ないままに。


 前回村上勝を尾行していた時とは違い今回は比較的に人通りの多い大通りを移動してくれているため心にも余裕があり、その男についてもそれとなく考察をしながら後をついて行くことが出来ている。年齢は聡介より少し若く、サラリーマンとかそういう類ではなさそうである。体格はかなりガッチリしていて耳の形から何かしらの格闘技をやっていたと推測できる、間違ったアプローチをしてしまい取っ組み合いになれば秒殺されてしまうであろう、、、

 プップー!!

 そのまましばらく順調に尾行を続けていたその時、道路の方から大きなクラクションの音が聞こえて来た。

 驚きそちらの方に視線をやると、それが横断歩道のない通りを無理やり渡ろうとした中年女性に対して発せられたものだと言うことが分かった。しきりにペコペコと頭を下げる女性を睨みつけながら車が再度速度を上げていく。

 あぁ、また目の前で事故が起こらなくて良かった、、、と思った次の瞬間男の姿が見えなくなっていることに気が付いた。

 しまった、見失った!

 今まで歩いていた通りの延長線上には見当たらない、どこか店に入ったか路地に入ったのだろう。

 歩く速度を上げガラス張りで中が見える店舗については全て確認しながら進んでいるがそれらしき姿はない。目を離していた時間はそう長くはなかったため曲がる可能性がありそうな路地は絞られる、その選択肢の中でも比較的太めのものに当たりをつけて聡介も路地へと入って行った。しかし曲がった先にも残念ながら男の姿はなく、諦めきれず駆け足になり路地をそのまま進み次の角を曲がってみたもののそこは行き止まりであった。

 しょうがないとようやく諦めて元の通りに戻ろうと振り返った聡介は一瞬呼吸が止まる。

「俺に何か用ッすか?」

 さっきまで追っていた男が目の前に立ちはだかっているのだった。逃げようにも後ろは完全に行き止まり、倒して進む、、、可能性はゼロ。

「俺の後つけてましたよね?何か用っすか?」

 男は追い打ちを掛けてくる。

「いやぁ、おしゃれな眼鏡掛けてるなぁって思って、、、、」

 流石に無理があるよね?

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