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夏の匂いと空の色……(ラブコメ?短編)

元々は二年ばかし前に、知り合い同士での合作短編ビジュアルノベル?の制作の話が持ち上がった時に書いた脚本というかプロットみたいなモノです…

しかし諸事情によりボツとなったので、この保管庫に収蔵(2023年2月6日12時47分)





*1










──私は、今日、失恋をする。










「それじゃあ……」






「……うん、」








 夏の季節が迫る、春が終わりかけの頃……


〈わたし〉は、


 幼馴染みのこいつと、


 今日で、離ればなれになってしまうのだった。








「じゃあね! ……元気でね!!」








──泣きたくなっていたのを、必死にこらえる。






 そよぐ風は、夏の気配を運んできてくれていた。




 夏の匂いがするその微風で、涙は渇くのかな?


 わたしのこんな顔を見せたくなくて、ソイツから斜めに避ける私の顔の目許は、


 それでも涙がにじんでいた……






 だけど、そいつの顔を、最後に…


…まっすぐ、見てみたくて。


 だから、わたしはその声を、アイツに掛けた。




 顔を上げて、精一杯の、笑顔で……










「……あ、」








 だけど、アイツは、もう、タクシーに乗り込んだ後だった。





 最後に見えたのは、発進していくタクシーのテールライト。





 そのまま走り去るタクシーを、私は呆然と見送るしかなかった。








……わたしって、ほんとうに、間が悪いなあ…………








 そうして、別離のひとときは過ぎた……




 見送るタクシーが街の向こうへと走り去るのを、


 わたしは見続けることしか出来なかった……。










 風の気配が、頬に当たる。





 ぬるいけど、その瞬間だけ、ひやりとした感触を感じた…

…涙の筋だ。



 ほっぺたに、涙が流れていたのだ。自分でも、気づかないうちに。






 それから、……

 年甲斐もなく、わたしは、泣き出してしまった。










……わたしは、アイツのことが、好きだった……




 幼い頃からの恋。


 自分のその気持ちに気付いたのは、今よりもっと幼い頃……かなり早かった気がする。




 そして、それからの日々があった。




 苦しくて、切なくて……それでも、アイツは素敵で、良い奴で。


 甘酸っぱい……毎日が、夢みたいな日々だった!






 それでも、今日までの十数年の内で、


 わたしは、自分の気持ちを伝えることが、ついに出来ないままに終わった。




 この年になるまで、アイツの幼馴染を続けられたのが、それだけで良いつもりだった。


 


 


 でも、……だけど、……、。。





………、、、、。。。。






 たくさん、思い出は残してきた、つもりだ……









 けど、今こうして振り返ると、とても心細い感情になってしまう。








 だから、きょうは、絶望の日だった。














“あら?!”








 そんなとき、急転直下の事実が判明したのだ。










*2








「なにさ、なにさなにさ~~!!!?」








 あの、ドジすけ!






“──あっ、うちの子、肝心なのを忘れてる!?”





 隣の家のおばさん……あいつの、お母さんだ……が、素っ頓狂な声を上げたのが、

 次の幕の開かれる、その幕開けのかけ声となったようだ。




 それにしたって、あいつってば、本当に抜けてる!

 よりにもよって、自分のスマホと、それから…向こうでの留学の、その入学願書!



 そのセットを、まるごと、忘れていってしまうなんて!!





「大変、どうしよう…!」





 たいへんなことには変わりないけど、それとはやや別に、すこし、悲しくなってしまった。

……わたしとの思い出が、

 あいつの忘れていったこのスマホに、たくさん詰まってるはずなのに…




 いや、よそう。

 いってやるのは、やってやるのは、アイツに針千本の百叩きを見舞うまで、我慢だ。




 それよりも…そんなことを考えてる場合ではない!







 おかーさん!







「 チャリで、行く! 」






 伊達に、


 健康系スポーツ(美)少女、として名を輝かしてきたわけではない。




 私の、愛用の、自転車!




──サドルの感触が触れた時、わたしは思い出し泣きをしかけてしまった。



 そうなのだ。

 この自転車で、縦横無尽に探検や冒険をして…

…あいつとどれだけの思い出を作ってきたことか……



 定評と文句のなさにかけては、一級品の愛馬だ。



 そして……わたしの健脚に掛かれば、あいつに追いつくことだって、不可能では!





“待って、あんたそんな支度で行くの?!”




 そんなとき、おかーさんが声を上げた。

 思っても見なかった声をかけられて、私は戸惑った…

…が、直後に理解した。


 そうだった! 

 今日の、あいつとの別離も大切な思い出にしたくて、

 白いワンピースと麦わら帽子、

……あいつの好きな、ぎゃるげ、というやつにインスパイアを得たのだ……

 このダブルコンボの格好の装いを、わたしはいま、してしまっていたのであった……




 ああっと、これは失敗だろうか……



 でも、




 けれど、問題は無い。いや、問題は解決してみせる!!

 そうおもって、行動に移した。




 わたしって、本当に行動が早くて有言実行なやつ!!





“あんた、なにやってるの!? 家の前の道路のど真ん中で、服を脱ぎださないでよ!?”





 おおっと、わたしなりの時短テクニックのつもりだったのだが。



 さすがに叱られてしまった……



 というーわけで、わたしはあきらめた!


 何を?

 いやいやご冗談を。

 まず、アイツのもとに急行する、というのを諦めたわけではない。


 めんどくさい入念な下準備。

 これを、家族の親からの子への愛情……ドメスティック・ペアレント・クオリティーでミス無く仕上げてもらう、その判断を取ったのだ。



 というわけだ。

 おかーさんに身支度をしてもらう。





 この物語は、


 スマホと願書を忘れた思い人のために、


 幼なじみの、『わたし』が、頑張る!


……というお話。





 ふふーん、

 モノローグというやつがあるのなら、わたしはそう記しておこう。






 さて、身支度、の方である……



 身支度を三回やってもらって、ようやく仕度が整った。



 やはり、この親は、だめだ…肝心なところが抜けている……




 服はどうでもいいのであるが、そうすると収納のポケット類がないのが、

 この、いま身に付けている白のワンピースである。


 なので、その解決として、これまた愛用の、私のリュックサック。

 それを見繕ってきてもらったのだ。



 だけど、そこからがひと悶着あった!







 そのいち。

 あいつの願書を忘れかけた……

 あいつに嫌われて、わたしの恋と青春は、こんどこそ完全におわった……

 そんなビジョンが見えて、わたしは、戦慄した。





 そのに。

 あいつのスマホを忘れかけた……

 あいつとの思い出の絆が失われて、

 永遠に離れ離れになったまま…になる、という未来視が見えて、わたしはすこし泣きかけた。






 そのさん、

 こんどは、わたし自身のスマホを、わすれかけた……

 そんなことになったら、

 わたしは窒息しそうなコンクリートジャングルの中で、遭難してしまう!

 それもあるので、わたしは厳重に母には抗議した。




 まあ、なにはなにあれ、ここまでトライエラーを繰り返せば、正解答に近づき、ミスはほぼ埋められ、処理されたも同義だろう……



 わたしの支度はついにととのった。

 スマホ、持った!





「いってきまーす!!!!!」




 そうして、わたしは愛用の赤い自転車を、疾駆させて走り出させた……







…なんだけど……






*3






……それから、一時間後…






「 はあ……はぁ……も、もう無理……ダメだ…… 」





 市街地を縦断して、隣町のその隣のとなりの街までは、出てくることは出来たはずだ…


 だけど、この市ととなりの市の境あたりにある空港までは、まだ、遥かに遠い!!!






( 自転車じゃ、追いつくわけがなかったんだ!? )






 わたしは、自分の見立て見積もりの甘さと欠陥の様に、戦慄しておののくしかなかった。





…の、のどかわいた……あ、あそこに自販機が!! さ、さいふをとりだして……




……あれ?




「──財布が、ない。」






……わたし、自分の財布を、家にわすれちゃった?!






 その事実が、最後に残されたわたしの精神と体力のHPを、

 ゼロ未満以下にノックアウトした…




 も、もう、だめだ~~………ぱたん、きゅー。





 へにゃり、とわたしは自転車ごと、歩道にへと横に転がってしまった。




 ちょうど、そこはバス停の前だった。




 そのバス停に並んでいたおばあちゃんたちと、


 ちょうど居合わせたおまわりさんたちが、心配してくれた……






「さいふ、家にわすれちゃったよぅ…~~…」






 わたしの財布を忘れた……

 これでは、水分補給も満足にできやしない……




 そんななのでしばらく目を回していたのだが、

 やさしいおばちゃんたちのひとりが、水のボトルを、買って、渡してくれた……



 それで、わたしのライフポイントは、多少であるが、やや回復した………





(いやいやでもでもしかし、)




 しかし、そうしたら、どうしたらいいものだろうか。



 お金がないので、この街の駅の電車に乗って、空港に向かう……そのルートは使えない。


 第一、そうしたら、自転車をどうすればいいのか!!



 かといって、断腸の思い!というやつで、目的を断念してこのまま自宅にもどるとしても、


 いかんせん出てきた距離も距離なので、

 この環境下で、自転車を漕いでいっても、

 家に帰るのもおぼつかない……




 夏を目前に控えたこともあって、

 春の終わりのこの今日の気候は、

 快晴ということもあって、

 湿度も高く、気温も、また、高かった……

 

 これから昼下がりになるにつれて、どんどん日射は強まるはずだ。



 そんな頃、




「うげ、」



 わたしは、自分自身について、気づくことがあった……


 あ゛あ゛あ゛、汗がじんわりきて、わたしのからだはぺとぺとだぁぁぁぁ………

 ヤツ…あいつを見送ろうとして家でこの格好になった時、

 全身とデリケートエリアにエイトフォーを念入りに噴射してきてはいるが、

 しかししかし、このままでは、


 このわたしの、磨きに磨いた、

 ステキな美少女、というオーラが汚れてしまうのだろうか……


 汚嬢様? という言葉が脳裏によぎった。

 いやいやわたしは中産階級の平凡な娘ですけど、っておいおい。


 あいつは匂いフェチなのか???

 いや、このままでは臭い、ということにもなりかねないだろうし、

 かといって事実の追求とその是非の評定評価も今この場ではかなわないだろうし………だろーし………




 あ゛ぁ、完璧に思考が暑さで混濁している…………





 のうみそ、とろけちゃいました。






 完全に、詰み、というやつであった。




 そんな中、バス停にいたので、目の前に路線バスが、停車する……



 水をくれた優しいおばーちゃんたちは、そうして乗り込んでいく。

 丁寧にも、お別れの挨拶までしてくれた……この不審な行き倒れ汗まみれ美少女に……



 そうして、バスの入り口が開かれた途端、

 車内の涼しい空気が、私の方のところにまで、吹き出て来て、わたしは感じることができた。





 あー…。。。。。カーエアコンのがんがんに効いた、自動車に乗れたら、いいのになーー……。。。。

 

 




 あっ、



 その時、わたしは閃いた……





 なんと冴えてるのーみそなのでしょう!!






 というわけで……

 わたしはさっそく、次のフェイズ、というやつに移行しようとしていた。







*4






 おとーさんと合流できた!






……私鉄線、北町駅前……



 背負ったかばんの中のわたしのスマホで呼び出した時、

 つながるか、目論見がうまくいくか、……は不安であったのだが……




 それでも、待ち合わせの駅の改札前で、合流することが出来た!

 会社の昼休みを使って、抜け出してきてくれたらしい。


 なんと良い親をもったのでしょう、わたしは………ふふふ。






“チカ、どうしたんだい。”


 



 そうなのである。

 この街に、わたしのおとーさんの、その仕事場のオフィス!

 それがあったのを、思い出していたのである……!




 とりあえず、ファーストフード店のアイスシェイクを買ってもらって、

 わたしの体力もぐーん、と回復だ。






 うーん、




 けれども、わたしは、その目的を最後まで隠していた……



 わたしのおとうさんは生半可な物事が嫌いな性分なので、

 

 思いつきとその場の行動だけで動いているわたしのこの目論見がバレてしまったら、

 イッパツでお家にまで強制帰宅させられかねない………




 さて、そうして、その絶妙なタイミングは、やってきてくれた……




 アイスシェイクの代金を取り出した……と見せかけて、

 親の財布から、大割見越したその代金分を、大きく抜き擦って懐に隠しておき、





「 自転車、おねがいね! 」







“おーい、! お父さんはどうすればいいんだ?!”








 わたしは、タクシーに乗り込んだ。


 運賃分のおかねは、おとうさんの財布から拝借だ。








「 飛行機の時間に、間に合うかな……? 」





 そうして、私は、空港へと向かっていく………





*5






 空港行きの特急に乗ったせいで、途中下車ができない…と。




 アイツのおかーさんから、連絡が入った。



 アイツも、空港についた時、荷物を確認して、事実に気がついたらしい。



 空港駅の公衆電話で自分の親たちに連絡をかけて、その連絡を受けたおかーさんが、わたしに情報の中継をしてくれた、というわけだ。




 その連絡があった時、わたしはタクシーの中で、そのタクシーは、もうすぐで空港に到着する……

 いや、いま、到着となったところだった。




 何度かの情報中継が相互になされた結果、

 アイツとの合流地点も、すでに決定する事ができていた。





 まちあわせの場所は、…………



 案内を見ながら、私は空港の入り口を、入ろうとした………





 その時、





「! あっ……」




 汗を描いていたから、あごひもを緩めていたのだ。

 そんな、わたしの帽子が、風に乗せられて、ふわり、と飛んでいってしまった。




……あいつが良い、ってほめてくれた帽子なのに!



 その場でじたばた、となって、わたしは帽子のへりを、つかもうとした……

 だけど、届かない!






……─ … ─……




 そんなときのことだ。


 キャッチしてくれた、人影が見えた!




 やった!! ……あ、──痛ぁいっ?!





 いたた………





「あ、ありがとう……ございま……… へ? 」




 もたついた結果として、そのころ、同時に、わたしは派手にしりもちを着いていた。



 倒れたとき、目から星が飛び出そうだった!

 そんな具合になったのだから、

 目の端から涙がにじんで、受け取ってくれたそのひとの姿は、霞んで見えて……



 だけど、気づいた時。

 




『……大丈夫? チカっ』




「…あ、」




 アイツがいた。



 大切な帽子を受け取ってくれたのも、

 倒れ落ちたわたしのことを、今こうして、助け起こしてくれたのも……





 そう、コイツ…あなた…。

 あなたが、いつも、わたしの前に居てくれる。

 優しいあなたが、わたしを優しくしてくれる……







*6






(…………)




 でも、これで、おしまいなんだ。

 友達のままではいれるけど、コイツもそういってくれるけど、だけど、物理的に、こんなにまで離れ離れになっちゃうから……やっぱり、寂しくて………切なくて…………





 いっしょに、側にいてほしい! ずっと、ずっと、わたしの一生ぶん!!!





 ……けれど、




 それでも、今日までの十数年の内で、


 わたしは、自分の気持ちを伝えることが、ついに出来ないままに終わった。



 その間に、アイツはいちにんまえに夢と目標を見つけてしまっていて、

 それもあって、今日、日本から旅立つ日程となっていた。




 なにもかもが、わたしは、おそかったのだ……




 それを打ち明けられたのは、今からおよそ半年まえだった。

 やつには言わなかったが…いや、言えるわけがなかった…

……呪詛というか、恨み言は、自分のそれの発散は、

 自分の部屋のベッドの上で、散々に泣きながら唸りちらしながらだった。

 それから……今日まで、本当に、今日まで、

 たいせつで特別な一日一日を、いちにちごとに、過ごしてきた!


 そのつもりだ。




 それでも、告白……というやつは、私はできなかった………

……わたしは、どこまでも体の良いお調子者を演じることばかりで、

 それが、そのことが、アイツの、その隣をキープできる、唯一のやり方だと、そんな風にしか、今までの人生で、振る舞えなかったのだ。



 でも、つい昨日、一晩悩んで、悩みこむ夜があった…

…そのときに、他のありかたは、他のたちふるまいが、できたはずなら?

 なんていう、底と際限のない、if の可能性。

 それなんていうものを、夜通し、考えてしまった……くらいだ。



 けど、ラストチャンスがあるのなら、

 それは今日あったはずだけど、それでも、わたしは一晩続いた思念旅行に疲れて…くたびれ果ててしまって、

 それを考えて、実行する、実行に移す、実行できるだけの! 

 その、頭の回転というのが、全くもってお無くなりになってしまった、

 その状態で、今日というのを、迎えてしまっていたのだ…………

 


 そんなのだから、

 いや今までのわたしの生涯を振り返ってみても、

 自分の気持ちと思い、というやつに、真摯に、真正面から、真っ向から。

 向かい合う手段を、育ててこれてなかったらしい……



 勇気も根性も覚悟もない。

 それでいて、得れるものは最大限に得ようとして……

 


 わたしは臆病だった。





 この年になるまで、アイツの幼馴染を続けられたのが、それだけで良いつもりだった。






……目的の荷物を渡して、

 さいごには、わたしからは、会釈だけ、で、別れようとして……




…………




 なみだが、潤んできた………




 臆病者には、ふさわしい結末だ。




 じぶんの腹のあたりに巣食っている悪魔の存在が、そんな残酷なことを、わたしの自己に投げかけてくる……



 うぇぇぇぇ…っ……わたしのスマホの待ち受けにしてる、えんまさまの画像を見て、天の邪鬼は退散させよう……



 わたしのそんな日常ルーティン。

 アイツがいなくなったあとも、続くわたしのみの日常。

 わたしだけが、とりのこされた、日常…




 

 ふと、そんなときのことだった……






*7








──わたしのスマホ、アイツにわたしちゃった?!




「……あ? れ………」




 ぐらぁり、と、世界が半分傾く感覚があった。

 いや、贔屓は抜きにそんな衝撃が、わたしの心とわたしの世界を襲っていた……







………まずいっ、わたしの秘蔵のお宝データを見られたら、友達ですら居られなくなる!

 ぜっこー、されてしまう!!





 まずい、まずい、まずい、


 まずいまずいまずい、、、






「まって、待ってぇっ!!」





 手元に、アイツのスマホを持って。

 とりかえばや、というやつになってしまった、そんなわたしとあいつのスマホを、取り返して、交換してもらうべく……




 おおいそぎで、空港を駆け抜けた!





 それで……、、、、、ようやく、、、、、、。。。、、




「ぜぇ、は、あ、っ、ぁっ、……、お、ぉ、ぉーいっ!!!!」




『 ? 』




 なんとか、見つけることが出来た……



 そうして、事情を言って、交換、してもらおうと、して………、、、、。。。。、、







 ぐぅ、~、と。





「あっ…//////」





 おなかすいたの?





 ……





「……、ふ、ふん、だ! 

 わたしは、さっき、アイスシェイク食べたばっかりだし、おなかなんて、すいていな……」




 そういいつつ、手元にあった、タクシーの運賃の支払った残りを、手のひらの感触で、数えてみてると……




 しまった、手持ちが尽きてしまっていた!!




「……まったく、かわってないんだから。チカって……」




「あ、あ…////…あぅ……その……//////////…」




…黙って、コイツは私を連れて……




 空港のターミナル内。

 そこのベーカリーのパン、を買ってくれた…







*8





……、、、。。。。、、。。





 あまい菓子パンを買ってもらって、食べているのに、

 なんか、涙の味がする……しょっぱい………




「それは、今は惣菜パンをたべているからだね?」




 うるさぃ!──とわたしは暴発した……

(ああっ、だめだ、だめなのだ。きょうび、暴力的ヒロインは、はやらないはずなのだ……)




『ふーん、………』





…な、なによぉぅ。




『チカって、ボクのこと、好きなの?』



 

 ぶほっ、と、その瞬間、わたしは口の中の残留物を、すべて吹き出してしまった。




「げほっ、げほっげほっ!! 

 けほっ、けほ、……うぅぅ、な、なな、なにを、いって、!///」




 あーあー、まったく、……





「まむもがぐもむぐ、むぐ、むぐ~~……!!!」



 はいはい、とこいつにあやされながら、

 こいつのハンカチで、わたしは口元を丁寧に、拭われている……






「ぷはぁっ! …あ、あ、あ、ん、あんた、あんたの、あんたの、その、あんたの、こっこっこっ、こと、とととととと、なん、んんあんん、~~~って……~~~!!!!!」




『……だろうねぇ…』




「あんたに、わたしのなにがわかるってのよ!!!」




 あっ、いかん、“いつも”のダメ押しコンボ、連発させて完成させてしまった……




『…ふーん、』






 こいつ……こいつがちんちくりんだったころは、

 同じくちんちくりんだったわたしが、いくらでも、翻弄、というやつだろうか?

 というのを、できていた! というのに!!


 主導権は、長年、わたしのものだった、そのはずなのに!


 そういえば、ここ最近になって、こいつはこんな急に、

 こんな感じに、たくましく? なってしまって………


 うぅぅ……ねんげつは、残酷……






「じゃ、あ、さ、さよなら、だよ!

 さよなら、なんだからね!?

 わたし、……わたし、あんたが、か、か、か、かえっ、て、……くく、くる、とき、は…」




……一緒に、そばにいさせてよね!


 なんて、なーんて、……

 そんなツンデレイズツンデレな、そんな言葉を、せ、せ、セリフ、として、吐き出せたものなら……ならば………



……嗚呼……



『なんか、今日はあさからどもりっぱなしだね?

 …まあ、いいよね。


 そしたら………』




「……なによぉう、」





『………いや、やっぱり、いいや。』






「え゛?」



 ら、…ラストチャンス?

 いま、この瞬間に、?この目前で? わたしなんかの、手元の目の前で? 

 最後のチャンス、が?



 そんな場面になってしまったのは、

 ヤツ…を見送りに、出国ロビーでお別れをしようとしていた、そのときであった。



 そんなお声が、やつの口から放たれて地獄耳is私イヤーに聞こえてしまったのは、

 わたしがそんな果て無いどん底に顔を沈ませていて。




 しかし、わたしがそんなことを考えている間にも、あいつとの、……あいつ……との、その距離は、遠くなって、離れていって、はなればなれに、なっていって…………




 あいつの後ろ姿が、光を帯びているかのようだった。

 だけど、そのシルエットは……

 真っ暗な、闇と虚白の砂地獄のその中に、吸い込まれて行くようで!!





「あ、あ、あ、………/////」



 なんだろうか。

 しかし、実際と現実の相乗では……、し、し、しかし、そんな、こんな、

 思わせぶりな、アンニュイな声が、

 げ、げん、現実で、お声が掛かると、するならば、ばば、ば、?!




 こここ、このチャンスしか無い!

 しかない、と、するならば…

…昨日の晩、考えに考えて練りに練った、この、セリフならば……!





 いっしょに、側にいてほしい! ずっと、ずっと、わたしの一生ぶん!!!




…踏みとどまってしまった。

 いや、急ブレーキも良いところだ。やったとしたなら、全身むち打ち複雑骨折は必須である。



 利己的な叫びを、告白として聞かせるには、

 それへのレスポンスを、拒否されたら、怖かったから……





『ねぇ!』





 へ、?





『また、会おうね!』





 あいしてる!





………最後のそれは、幻聴、だったようでは、ある。

 願望が聞かせた、幻肢痛のような、………




 だけど、わたしの耳に間違いがなければ、また、会おうね、って………



 リフレインになって、響いている。永久に、耳に、残り続けるように………







 ラストチャンスが、あるのなら?




 …今しかない!






「────ぁ、」





 大好き!














(……いっちゃった……いっちゃった……/////)





 涙が、とめどなく、溢れてくる。………

 でも、今なら、!!





「また、会おうね! 


 そんで、さ!


 今度あった時は、そのときは、あ、あ、アンタの、こここ、ことを……」











『ありがと!』












「! …………」







『…今度帰ってきたときには、告白、してもいいかなっ!!』





「…ぇ、」




 

 今度は、聞き間違いでも、リフレインでもなかった。



 なぜなら、わたしは顔を見上げていたからだ。

 そして、その目の先で、

 あいつは、わたしに顔と声と手を振って、その先程の言葉を……




 なみだがあふれてくる。

 でも、いいんだ。

 いまは、とめどなく、幸せな喜びで、笑顔になれてきたから!





「──いいよ。というか、いま、予約注文を承ったからな。

 そのかわり、ぜったい、

 わたしのことをしあわせにしろよな!!いいか? 絶対だぞー!!!」




 わたしは返品不能だからな!クーリング・オフ不能のおんな、なんだぞー!!




 そうとまで、いってやった……いっちゃった。



 あいつの顔が、見えなくなるまで………





「…………」




 飛行機の、旅立つ音が、聞こえてくる……



 次に、戻ってくるとき。

 


 その時が、わたしは今から待ち遠しかった。








     * * * * *







 離陸する飛行機の中で、

 少年は、眼下へと流れていく空港の姿を、終わり無く、見ていた……







──僕も、大好きだよ。




 チカ、また会えたときには、キミに……









*END






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