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第25話、俺たちが魔道学院の最強パーティだった件

「さて本日の議題はまず、学園祭のトリである生徒会枠よ!」


 玲萌(レモ)が当たり前のように仕切る。茶を待たずに食い終わった夕露(ユーロ)は腹が満たされてうつらうつらしはじめた。


「だからそれは諸連絡と閉会の言葉ということで前回決まったじゃないですか。顧問の瀬良師匠が会長の僕を支持して」


「ふん、状況が変わったのよ」


 玲萌(レモ)の言葉を引き継いで、


玲萌(レモ)さんが発案した演劇のなかで、神様のために瞑想する時間をとることにしていただいたんです」


 惠簾(エレン)がうれしそうに語る。つづいて俺も、


「演劇の最後にゃあ俺が歌うことになったんだ。街の人たちも楽しみにしてる」


「くっ―― 四対一ですか」


 多数決をとるまでもなく結果を予想する凪留(ナギル)。「しかし最終的には顧問の許可をとらねば――」


 そのときだった。


 どんっ


 と、地震のような地響きが聞こえた。


 顔を見合わせる俺たち。ただし夕露(ユーロ)除く。


「まさか土蜘蛛が――?」


 俺の危惧に、


「復活するにしたって今朝、樹葵(ジュキ)がこなごなにして燃やしたばかりじゃない!?」


 玲萌(レモ)がありえないとばかりに問う。


「そうだが―― ヤツの最期(さいご)を見届けたわけじゃねえ」


「わたくし旧校舎に戻って確認しましたわ」


 静かに答えたのは惠簾(エレン)だ。「気が動く気配はありませんでした。ですが念のため、さらに結界を補強しましたのよ」


 だが――


 どどん!


 二度目の地響きが俺たちの耳に届いた。


 畳にいくつか長机を置いただけの教室に、夕露(ユーロ)の小さな寝息だけが聞こえる。


「俺、見てくるよ」


 責任は古代の封印を解いちまった俺にあるんだ。立ち上がった俺につづいて、


「あたしも行くわ」


「いや、玲萌(レモ)は危ないからここに――」


 押しとどめた俺に反論したのは惠簾(エレン)だった。「いいえ(たちばな)さま。玲萌(レモ)さんとわたくしふたりで力を合わせて結界を張れば、安心して最強魔法を使っていただけますわ」


「そうよ樹葵(ジュキ)、足手まといになんかならないから!」


「足手まといなんて思ってねーよ。ただ俺は心配で――」


 今朝の、ぐったりと力を失った玲萌(レモ)の様子が脳裏によみがえる。


 縁側から垣根の向こう、旧校舎のほうを見ていた凪留(ナギル)が俺たちを振り返った。「学生たちが集まっているようです。学院の戦力がここに集まって議論していてもしょうがない。創作魔術専攻の玲萌(レモ)くんは学院一位、召喚魔術専攻の僕は二位、さらに防御術に長けた惠簾(エレン)くんが三位でしたっけ? そして白草(シラクサ)一の魔術師である瀬良師匠をもしのぐ無尽蔵の魔力をそなえた(たちばな)くんがいる。とにかく僕らも行きましょう!」


「よしっ」


 と戸口に向かった俺に、


夕露(ユーロ)さんは?」


 と惠簾(エレン)


「ん、三味線の見張り?」


 てきとーなこと言ってみた。


「寝てるけどね」


 玲萌(レモ)の言う通りである。


夕露(ユーロ)くんは物理最強ですよ。魔術攻撃から復活する土蜘蛛に夕露(ユーロ)くんの金棒攻撃を試してみてもおもしろいかもしれない」


 凪留(ナギル)が興味深いことを思いついた。


「そういえばあの土蜘蛛、(ひたい)に刀傷があったな。もしや八百五十年前の戦いでは魔術より剣術でいどんだのか?」


「順当に考えたら魔術剣だと思うけど―― 試してみる? 樹葵(ジュキ)が土蜘蛛を引きつけてるあいだに、あたしが夕露(ユーロ)を風の術でかかえたまま上に回って金棒でぶんなぐってもらうとか」


「それやってみよう!」


 俺と玲萌(レモ)が会話しているあいだに惠簾(エレン)夕露(ユーロ)を起こした。


「じゃ、付喪神(つくもがみ)さん留守番は頼んだぜ」


 俺は三味線に声をかけて玲萌(レモ)たちと教室を出た。


 ベベン


 ちゃっかり返事する付喪神(つくもがみ)さんを残して、俺たち五人は旧校舎にいそいだ。

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