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洞を穿ちて察するが如く 氷の解けるが如く  作者: みれにあむ
第一部 王国記篇  第三章 神罰の雷《いかづち》
87/95

(87)什麽生!

 そもさん!

 教会内で交わされていた会話を知らされて、領館の一室は沈黙で満たされていた。

 口火を切ったのはイルカサルだ。


「危ない所だった。

 これはメリカルド殿の人柄故か、思わぬ純粋さが大司教の毒を抜いたのだろうが、常なら好ましく思えても今この時で無くても良かろうに」

「ふふ、もしかしたらメリカルドさんとなら上手くやっていけたのかも知れないわね」

「いや、それは無いな。結局は彼奴も教会の従順な(しもべ)だ。きっと教会には家畜の様に従う者と、それを従える奴らが居るのだろうさ」


 続けてヴァチェリーとネイサンが発言する。

 何処か引き攣った雰囲気が有るのは、推移が予想外の方向へ進みそうになったからだろう。


「私もそろそろ出よう。どう転ぶか本当に分からなくなって来たが、何、プルーフィアなら上手くやるに違い無い」


 領館に残る者は僅かであり、殆どの者は既に配置に就いている。

 領主が余り早く出ては辻褄が合わなくなる為に、イルカサルは領館に残っていたのだ。

 僅かに心配気な視線を窓の外へと投げ掛けて、イルカサルは立ち上がる。

 街はまだ何も知らず、朝市の売り込みの声が響いている。



 ~※~※~※~



 さて、前世で問答と言えば、什麽生(そもさん)! 説破(せっぱ)! と呼び掛けるのが知られている。意味はそのまま問うのと答えるのとだ。

 私がそれを知ったのは、一休和尚漫遊記とかいう講談本からだが、問答とは雖も命懸けの遣り取りだと記されていた。

 心を読む妖物を相手に、自らも答えを知らない問い掛けをする下りだ。

 問答に破れた妖物は、血反吐を吐いて死んでしまう、そんな壮絶な遣り取りなのである。


 翻って、今の私の状況を見てみよう。

 朝の会議の後に領館を出て、仮宿に着いたのとほぼ同時にスパイな騎士が言伝に来る。

 それを受けて私が配置した鳥で監視しつつ待っていると、教会騎士を伴ったメリカルド司祭が路地裏への入り口に現れた。仮宿からの他の道の先にも教会騎士が現れたから、寧ろ好都合。

 私は逃げ場が無くなる直前に、仮宿の外へ出る。

 道を塞ぐ教会騎士達を見て、眼を見開き口を開けて驚愕の表情を浮かべる。

 そして逃げるは道無き道。具体的には隣家の塀に跳び乗って、その上を伝って裏道に出る。

 慌てた教会騎士達が血相を変えて追ってくる。

 そら、逃げる理屈が立った。


「糞ぉ! 逃げるな!!」

「回り込めっ!!」

「このっ! ちょこまかと!!」


 はしこい子供の出来る範囲で逃げ回り、自然と表通りに転び出る。

 民家の塀なんて気にせず壊しながら追い掛けて来るかと思ったけれど、そんな事をしなくても私の姿を確認出来るルート取りをしたからか、それともそこまでする気が元から無かったのか、損害を齎さずに済んだのは僥倖だ。

 そして広い表通りに出てしまったなら、私に逃げ場が無くなるのも自然の流れだ。


「――ひぃ、ふぅ、な、何故逃げるのだ!?」


 と、これはメリカルド司祭。

 うん、什麽生? ならば説破!


「そんな事言っても、そっちだって捕まえに来てるじゃ無いか! 何をされるか分からないのに、大人しく捕まる筈が無いよ!」


 本当なら、もうちょっと人通りの多くなる昼過ぎの方が都合が良かったけれど、今でも十分に人出が有る。

 周りを教会騎士に取り囲まれての言葉は、説得力もこの上無い。


「何もせん! 話がしたいだけだぞ!」

「信じられるもんか! それなら何でそんな大勢で来るのさ! それに知ってるんだよ! 王都から教会のお偉いさんが来た時は、誰かが見せしめに処刑されるんだって! お爺さんの頃にも、ラーオ様にお供え物を受け取って貰えたって喜んでいたお爺さんが断罪されたって!

 どうしてラーオ様に認めて貰ったお爺さんが処刑される事になるのさ! おかしいよ! 本当なら聖人として讃えられたって不思議じゃ無いのにさ!」


 取り囲む教会騎士達は動かない。

 民家を壊したりしなかったから、そこは統率の取れた誇り有る騎士なのかとも思ったけれど、どうにも違う。ゴミを見る様な冷たい眼をしていたり、薄ら笑いを浮かべていたり、共通するのは見下しているという事だろうか。

 一応私も睨みを利かせて牽制を入れているから、それで多少は動かないでいる所も有るとは思うけれど、それよりも綿埃よりも軽く砂埃よりもどうでもいいと思っているから、今も教会にとって危険な言葉を叫んでいるのに気にも留めていないのだろう。


 でも、この言葉をグリムフィードに来ているという大司教が来る前に口に出来たのは大きい。

 住人達に対しては布石だ。大司教がもしも神問裁判をすると言い出した時に、真剣にさせるスイッチを入れるだろう。

 しかし大司教に聞かれていたら、そんな事を言い出さなくなるかも知れない。すると、此処まで重ねてきた準備が、無駄になってしまうかも知れないのだ。


 無駄になるならそれでいいと捉える向きも有るかも知れないけれど、教会に釘を刺す事も出来無いままに先送りにするのは、いつ終わるとも知れない泥沼の始まりだ。それはちょっと御免蒙る。


 そして什麽生だ。今度は教会が答える番。


「それは先々代の頃に行われた神問裁判の事だな? 何やら行き違いが有る様だが、神問裁判は聖神ラーオ様が直々に沙汰を下される物よ。その結果に不満が有ろうとも、聖神ラーオ様の思し召しなら受け入れるのが定めである」


 そしてビンゴ!

 いやいや、期待以上の動きをしてくれたよメリカルド君。

 ……まぁ、私心が無いからこそ、お為ごかしで欺こうとする輩の思惑を越えて来るのだろうけれど。


「ちゃんちゃらおかしいよ! 雷が神の裁きだって言うなら、夏にはドンドコ落ちてるんだからそれで落とせばいいじゃないか! 教会の偉い人が来た時だけ、外は晴れているのに教会の中に落ちる雷って何? 教会に魔導具が仕掛けてあるとしか思えないよ!

 ねぇ、知ってる? 雷は高い所に落ちるんだよ? 神の裁きの雷なんだとしたら、低い所に居ても関係無いよね?

 じゃあ、祝福の儀と同じ様に、神問裁判も罪人は一番低い所で祈りを捧げるのでいいよね? いつもラーオ様を祀っている場所に罪人を置くなんて、そんな恐れ多い事出来無いよね?

 それなら私も納得するけど、ねぇ、そこの所どうなってんの!?」


 これを言えたかどうかで動き易さが随分と変わってくる。

 実際、これは教会の急所だ。

 グリムフィードの教会関係者は呆けているだけだけれど、王都から来た教会騎士は私を黙らせようと動こうとしたし。


 彼らには、それを何故実行しなかったのか理解は出来ないだろう。まさか、水の神スイラ様に祈りと捧げ物をして、心の動きを抑え付ける術が有るなんて、そんな事は理解の外に違い無い。


 そして、丁度いいタイミングでその場に大司教が現れる。

 うん、知ってた。鳥で監視していたから。


「何を騒いでいるのだ?」


 大司教へ騒ぎの内容が伝わってないのは、風の神フルム様の御力。

 今はまだ私達の掌の上。でも、どう転がるかは分からない。

 私はゴクリと喉を鳴らして、本番の相手に目を向けた。

 PC故障、入れ替えた新PCは液漏れバッテリーのメーカがもう無くて交換出来ないとのオチになりました。う~ん、バッテリー使ってる製品は気を付けないと駄目だね。私の場合Switchも放置してるけど…大丈夫かなぁ(^^;)

 ま、バッテリー外してデスクトップPCっぽく使ってます。

 画面がクリーム色になってしまったのを直すのに、ドライバ入れ替えたり、多分一度も自作した事の無い人にはまだまだPCってハードル高いのでは無かろうか?

 そんなこんなで半分潰れた夏休みでした~。ガックシ。

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