(81)知名度を上げて行こう
プルーフィアが思っている以上にショーは知られていますが、それでも知らない人はショーの事を知りません。
知名度を上げていかなければと思う様になってから、非管理ダンジョン七割、管理ダンジョン三割で潜る様にした。
管理ダンジョンは殆ど完全攻略と言っていい状態だから、名前を売るだけの助っ人に入っている。
非管理ダンジョンは、結構色々面白い。大空洞では新素材が大量に見付かったし、固有魔法を持ってるダンジョンも数多在る。
ただ、その多くが面倒臭い。
大空洞はダンジョンと言いながらも採取がメインだからちょっと除外するとして、「蟷螂の巣」はランク分け試験でのオルカスさんとは違って数の暴力で攻めて来るし、水の中を延々と潜って行かないといけない水牢のダンジョンなんていうのも有る。
しっかり準備をすれば楽しめそうだけれど、心配事を抱えたままではそれが隙になって寧ろ危険。
後は単純に距離が遠いというのも多くて、非管理ダンジョンは泊まり込み推奨だ。
そんな遠方のダンジョンに向かうのに、私の鉤爪ロープも少し進化している。
鉤爪ロープの扱いなんて、山形に投げて鉤爪を引っ掛ける以外には無い。身体能力が上がったからと言って、剛速球で鉤爪を投げても、鉤爪は引っ掛かってはくれないのだ。
だから、一応鉤爪ロープも確保はしているけれど、今の私が使っているのは何処ぞの盗掘者が使っていそうな長い鞭だ。
六尺棒の先にアタッチメントとして取り付けられる様にしたそのしなやかな革の鞭は、結構鋭く振り回しても手元の動きで先端部分が千変万化に変化する。軽く巻き付ければ回転の魔力で解けない。
そんな鞭を二本遣いにして、沼地の上でも木々を渡り、時には崖の上に昇る手掛かりとしたり、便利に使い倒している。
アスレチックで鍛えたセンスと技で、飛ぶ様に既知の非管理ダンジョンへ向かって、帰りは探索しながら帰って来る。その途中で新たに見付けたダンジョンも有る。
殆どは下見程度で終わらせているけれど、時々見掛ける潜り易そうなダンジョンには潜っている。
泊まり掛けの三日間をそれに費やして、街に戻ってきてから一日二日を管理ダンジョンで過ごすのの繰り返し。
そんな生活をしていると、体付きも肌色も健康真っ盛りの筈なのに、何故か学校では今も病弱設定が生きている。
「あら、私はそんなに弱く見えるの?」
「いえいえ、プルーフィア様はお強いですとも。きっとその内、駆けっこだって出来る様になりますよ?」
カヌレによると、私は晴れた日にはお部屋の中で日光浴をしているという事になっているらしい。
それで健康的な肌色なのだとか。
気配を抑える事と、お淑やかに努める事以外に特別な事はしていないのに、一年以上も続く思い込みとは難儀な事だ。
尤も、私がやろうとしている事を考えると都合が良いのも確かだけど。
誰にもショーがプルーフィアだと疑われる事も無いままに、私は計画を進めていく。
「お! ショー、今日は空いてるのか? なら、アスレチックに行こうぜ!」
「いや、アスレチックは攻略手引き書公開してるでしょ? 私が行く必要無いよ?」
「実際に動きを見るのは違うんだって! ほら、行った階層と同等の魔石三つずつでどうだ?」
「ん~、仕方無いなぁ。夜には帰るからね?」
「そう来なくっちゃな!」
「あ、ショー君居た! ね、ね、攻略手引き書で分からない所が有るの!」
「ちょっとでいいから、ショー君の時間を頂戴!」
「んん? ――ま、いいか。今日はお勉強会だね」
「やたっ! 最近資料室に人が一杯で、中々集中して調べ物も出来無いのよ」
「ん~、じゃあ、その人達も一緒に見てみようかな?」
「「え~?」」
「おい、お前がショーか? 斥候を育てろとかギルドが五月蠅くてよ、手本はお前に見せて貰えと言われたが、本当にお前か? ガキじゃねぇか」
「ん~? 多分そのショーは私で合ってるけど、お兄さん達、非管理ダンジョンに行くつもりが無いなら、ランクDで充分じゃない?」
「は! 何時までも黒いタグじゃ居られねぇだろうが! で、どうなんだ? どうせ大した事は無いんだろうが、手本とやらは見せてくれるんだろうな?」
「何でそんなに偉そうなのか分からないけど、私も指名依頼扱いになるから別にいいよ? 手続きも有るし窓口まで一緒に来てくれる? 講習みたいな物だから、午前中は迷宮洞窟で、午後は魔罠だよ?」
……
「じゃあ、斥候について説明するけど、一言で括られているけど二種類居ると思ってね。気配に鋭くて敵の接近を逸早く捉えるのと、違和感に敏感で隠された罠を見逃さないのと。何方も自分の気配そのものでも感覚が邪魔されるから、気配を抑えて音も無く動ける小柄で身軽な人の方が得意だけど、大柄な人でも出来ない訳じゃ無い。そして或る程度は斥候の役割も出来る人で無いと、非管理ダンジョンは許してくれないと思うね」
「何だそれは!? 斥候の奴を一人入れればいいだけの話だろう!?」
「ん~、斥候の仕事を知ろうとしない人はね、騒がしいと斥候の役割なんて果たせないのに平気で喧しく騒ぐんだよ。今の君達の様にさ。軍を率いてる訳じゃ無いんだから、斥候がパーティから離れて先行するのは、パーティの仲間が五月蠅くて邪魔だからだよ? 或る程度斥候の仕事も出来る仲間なら、そんなに距離を空けなくてもいいんだけどね。
そして非管理ダンジョンっていうのは大空洞みたいにこんな通路にはなってなかったり、蟷螂の巣みたいに周り中に穴が開いている所も多いんだから、斥候一人を先行させるなんて意味が無いよね。孤立するのも危険だし、斥候無しで喧しく音を立てるのも魔物を引き寄せるだけだし。
ほら、丁度良くその角に魔物が来てるよ。大体二十秒後かな? 試しに気配を探ってみれば?」
「ぬ!? ぐ……ぐぅうう、喧しいぞお前ら! 静かにしろ!!」
「あはは、ね? 立ち止まっていても斥候が出来無い人は喧しいんだよ。でもちゃんと斥候が出来る人ならこれだけ余裕を持って気配を捉えられる。それを知っていれば、角に来る度に毎回行き当たりばったりな人達のランクを上げられないのは分かるでしょ?」
……
「――ああ、もう、罠の場所は教えてるんだから、早く解除しないと進めないよ? ほらほら、もっとよく観察して。も~、何をやってるのかなぁ?」
「う、う、五月蠅ぇ!! ごちゃごちゃ言われながらやってられるかぁ!!」
「あはは、御免ね? 斥候の仕事を良く分かってない人達がやりそうな野次を飛ばしてみたんだよ。魔罠の罠程度なら痛いってだけで済むけど、非管理ダンジョンになると殺意も高いから。ね? その罠の解除を失敗したら、手や足が飛ぶと思えば好き勝手に野次る人達に憎しみを抱いちゃうよね?」
「ぐぅぅ……むかつくが、良く分かったぜ」
「因みに腕のいい斥候はソロでも探索出来るからね、扱いが悪いと直ぐに喧嘩別れしちゃうよ? 小柄で非力でも、気配を殺して不意討ち出来るんだから、私みたいに遣り様は幾らでも有るんだし。
逆に言うと、斥候の事を良く分かっていて協力的な仲間なら、是非パーティに入れて欲しいっていう斥候の人も居るんじゃないかな?」
「……お前はどうなんだよ」
「私? 私は――これだし、ソロに慣れちゃってるから御免なさいだね」
「「「銀色のタグ!?」」」
「ふふ――因みに、私は管理ダンジョンは練習だと思ってるから、本当なら全部の管理ダンジョンをソロで二十階層くらいまで行けないと、非管理ダンジョンに行かない方がいいと思ってるよ? 逆にしっかり対応出来る様になってれば、ランクBも直ぐだろうね。
ま、得意なダンジョンで暴れているだけなら、認めてくれないって事だよ。頑張ってね」
腕が良くて生意気な子供の探索者。それなりに装えていると思うけれど、どうだろうか。
普通にショーとして立ち回ったらそうなってしまったから、もしかしたら私には生意気な所が有るのかも知れない。
そう思っていたら、カヌレから呆れた様に言われてしまった。
「プルーフィア様を生意気という人の方が身の程知らずです。ずっとプルーフィア様を見てきた私が言うのですから間違い有りません!」
何だかその物言いが面白くて、笑いが零れる。
そんな日々を重ねながら、運命の日は確実に近付いてくるのだった。
本作は3000文字の目標が有るので、かなり端折った書き方で情景描写が足りないと思うのですけれど、どうなんでしょうね? これはこれで有りなんでしょうか。




