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洞を穿ちて察するが如く 氷の解けるが如く  作者: みれにあむ
第一部 王国記篇  第三章 神罰の雷《いかづち》
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(73)友達候補

暑くなってきましたねぇ。

 そんな日々を送りながら、三ヶ月が過ぎた。

 過ごし易い秋も終わり、もう冬に入ろうとしている。

 幸い北風は御山に遮られて、吹き下ろされてくる頃にはフェーン現象やら何やらで、其処まで寒くなる事は無い。

 寧ろ風の無い日の方が、御山から冷たい空気が下りてくる。


 ダンジョンの中には魔力が満ちているからか、そこまで気温の変化は無いけれど、やっぱり寒い日は寒い。

 早朝なんて更に寒いから、早朝のダンジョン入りも今はやめている。


 それに、もう早朝にダンジョンに入らないといけない様な、そんな段階は終わらせている。

 鳥の洞窟は、もうこれ以上どうやっても位階が上がらない所まで頑張ったし、その後に入った二十四階層までの犀の河原も既に飽和状態。その次に三十階層まで在る樹海のダンジョンに潜ったら、早朝でも泊まり込みの人が居て、注目を集めず魔石を砕くのがそもそも無理な話だった。


 そうなると、もう気にしても仕方が無いと、人前でも魔石を砕く様になった。

 大体、人が魔石を砕いているのを中途半端に揶揄ってくる様な人は、三十階層より下に降りてくるのは稀だ。

 前世で言うエンジョイ勢と言えばいいだろうか。

 三十階層よりも深く潜る人は、しっかり探索する人達だから、私が魔石を砕いたりしていると、初めは魔物の気を惹くぞと注意され、それから何をしているのかと興味を示し、少しでも位階を上げる為に魔石を砕いているのだと言えば、成る程と納得して真似をしてくるものである。

 それで同じ様に砕くのは無理だと判断したなら、もっと階層の深いダンジョンに潜った方が早いと、結構簡単に私への興味を無くしてしまう。


 つまり、あっさりとして付き合い易い。

 厄介な探索者が居ないのなら、逆に魔石砕きは他の探索者との交流の切っ掛けにもなった。

 益々早朝にダンジョンに潜る意義は失われていたのである。


 とは言え、魔石砕きに興じたのは樹海のダンジョンまでだ。

 樹海のダンジョンなら、樵の様に斧で木を伐る音に魔石砕きの音が紛れるから、という訳では無い。

 まぁ、樹海には黄色い小鳥の様なレアな魔物が居る様子は無かったから、それぞれの種類がそれなりの数居た動く木の魔物を伐り尽くして、それを砕けばそんなに時間を掛けずに位階を飽和させる事が出来た。

 でも、そんな事とは関係無く、その次に選んだ二つのダンジョンが、魔石が無いか、魔石を砕く段階に無いのである。


 そう、今私が攻略しているダンジョンは、アスレチックとスピンボール・ルーレット。この二つのダンジョンを交互に訪れている。

 アスレチックには魔石が無い。

 そしてスピンボールルーレットは、まだ最下層に到達していない。

 魔石砕きの出番が来るのは、まだ先の話だ。



「あ! ショー君だ!」

「え、本当に? ――あ! ショー君!」


 私を見付けて手を振る二人組の少女は、既に顔馴染みとなったミリアとケニッカだ。

 ちゃんと十二在る管理ダンジョンを巡ってから、ランクD試験に見事合格して、再びアスレチックに戻って来ている。

 朝にしっかり家族と過ごす様になった為か、大抵私よりも少し早くダンジョンに潜っていて、低階層で擦れ違う事が多い。


 因みに、アスレチックはどの階層も複数のルートが開拓されているから、ルートの選択次第でどんどん抜かして先へ進んで行く事に問題は無い。

 朝の時間に鉤爪ロープを変幻自在に操って、迷う事無く階層を進めていく私には、既に岩跳びの二つ名が付けられているらしい。

 噂になるのは仕方が無いけど、出来れば「子供にしては」という枕詞を付けて広めて欲しいものだ。


「ねぇ、ショー君が最下層更新したって本当なの?」

「今までは八十階層までって言われてたんだよね?」

「うん、そうだね。きっと天井に次の階層への入り口が在るなんて、誰も思わなかったんだよ」

「そうよねぇ~。天井に入り口が在るなんて気が付かないと思うわ」

「ショー君が凄いんだよね」


 因みに、感心している二人は、最高で二十三階層まで潜っているらしい。


「じゃあ、そろそろ鉤爪ロープの出番だね」

「やっぱり必要なのね」

「無くても多少進めるかも知れないけど、四十階層辺りから鉤爪ロープにぶら下がっての振り子移動が必要になるよ?

 まぁ、その前に落ちた時に安全な姿勢で落ちる練習かな? マットを敷いてくれてるからって背中から落ちるんじゃ無くてね、そういう場所でこそ何回も失敗して体を捻って足から落ちれる様にしないと、後から怖いよ?」

「うわ!? そうだよ! マットは無くなっちゃうんだよ!?」

「確実に足から降りれる様にならないと、先へ進めそうに無いわ」

「四十階層まではマットも有ったから、まだ練習出来るけどね。

 それと、落ちる事を考えての防具。こういう厚い革の帽子とか」

「……魔物が居ないからって油断していたみたいね」

「落ちた時の防具かぁ~」

「例によって例の如く、ギルドには攻略の手引きを報告してるから、ヒントを見るか自力で頑張るかは好きにしてね」


 因みに、八十階層まで突破した探索者達は、使い捨ての梯子を大量に持ち込んで、立てて昇るのにも用いれば、岩と岩との間に渡して簡易の足場にしたらしい。

 でも、それでは八十階層を超えられない。此処以外での普段のダンジョン攻略を考えても、鉤爪ロープが正解だ。


「あー、確かに~……」

「冒険したかったら、自分で答えを出せないと駄目なのよね」


 そこでちゃんと考えるだけ、この二人は優秀なのだろう。


「私は体重も軽いからね。位階が上がればどんどん身軽になるから、駆け足で攻略出来るけれど、皆は一階層ずつ確実に進むのがいいと思うよ?

 それと、私が言うのも何だけど、或る程度攻略進めたら、他のダンジョンにも行った方がいいね。位階を上げるにしても、極端に属性を偏らせるのはちょっと困った事を招きそうだから」


 言うだけ言って、私は次へと進んでいく。

 親しく話している様に見えて、何処かに壁を作ってしまっているのだろう。

 先へ進む私をあっさり見送る彼女達だから、お喋りしたりに付き合っているけれど、これが下手に絡んで来る様な相手なら、私もとっとと先へ進んでいたに違いない。


 まぁ、あれだ。

 私は大胆に見えて、とても慎重で臆病なんだ。

 だから、友達に成れそうな相手でも、何処までも見極めようとしてしまうんだ。

 多分、一年くらいは見極めに費やしてしまうのだろう。


 それに実際友達に成れるとしても、ショーのままで友達になんて成れない。

 全てを打ち明けるとすれば、それはグリムフィードはもう大丈夫と思える様になってから。

 だから、今暫くはこのままで。


 私が鉤爪ロープを駆使して、文字通り飛ぶ様に次の階層への出口へ向かうその後ろ姿へと、彼女達の歓声が投げ掛けられているのを感じつつ、私はそんな事を思っていたのである。

毎日十リットル近く除湿機に水が溜まります。

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