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(7)私の求める未来は

 七話目ですよ~♪

 お母様と和解出来たその日、結局朝ご飯は食べずにそのままお母様とお休みしたわ。

 ずっと魂と繋がっていたからか知れないけど、眠っても魂との繋がりが切れなくて、前世と今世がぐちゃぐちゃに混ざった変な夢を見た様な気がするの。

 でも、只の夢ね。だって登場人物が入り乱れているから、これで予知夢とかそういう落ちは無いと思うのよ。


 でもって、昼前に目は覚めたけど、熱はまだ下がらないね。魂との合一って、まだまだ終わらないみたい。

 そして目が覚めたら、もう一人ちゃんと謝らないといけない人の前にお母様の手を引いて行ったのよ。

 そう、お母様はヴァレッタお姉様にもちゃんと謝らないといけないわ。

 そして本当なら、王都に行っているお兄様達にも。


 とは言っても、そこはお母様もちゃんとごめんなさい出来たわね。

 でもヴァレッタお姉様は激昂しちゃって、その後は皆でわんわん泣いたから、お昼ご飯はシオンに伝えて貰ってお部屋の中で食べる事になったわ。

 泣き腫らした顔を見られない為だったのに、結局晩ご飯でも眼の周りを腫らしてしまってたけどね。

 その間私はずっとお母様にしがみついたまま。赤石祥子としてなら悶えてしまいそうだけど、これは私にとってもお母様にとっても必要な事なのよ。

 ヴァレッタお姉様も人目が有ると無口なのに、部屋に戻ってシオン含めて四人だけになったら、溜めに溜めてきた想いをぶつける様にお母様とお喋りしてたわ。

 まぁ、私が口を開かなかったのは、前世と今世が入り乱れてちょっと目が回っていたのも有ったけど、ちょっと真剣に私の未来について考えないといけないと思っていたからなのよ。


 何故って、「王国記」にどれだけ誇張が有ったとしても、私が何もしなかったなら、私も王都学園に行って悪役令嬢と呼ばれてしまう可能性が大いに有るのよ?

 私の魂に赤石祥子の前世が無かったなら、私はきっとヒステリックな少女となっていたと思うし、お母様は心が壊れていたかも知れないし、お父様はそんな家族の状態に心を閉ざしていたかも知れない。

 それが脚色されて「王国記」の状態となっていたとしたら、王都の学園って陸な物じゃ無いのよ。


 そもそも悪役令嬢って何って話よね? 「王国記」では恐ろしい悪の令嬢として描かれていたけど、実際には愛情を得られず敵意を振り撒く様になってしまった女の子よ? それだって、相手の欠点を曝いて抉り込む嫌らしさは有ったけれど、教科書を破いたりといったねちねちとした嫌がらせはしていなかったから、どちらかと言えば硬派とも言えるかしら。

 学園ストーリーを追い掛ける中で、婚約者の居ない男子生徒を攻略対象に定めたら、条件によってライバルキャラとして現れるのがプルーフィア。ライバルとしてプルーフィアを煽りながら、見事攻略対象を落としたなら、プルーフィアが闇の御子として目覚め、ラスボスとなって立ちはだかる事になる。

 変な演出を入れなければ、どう見ても愛に飢えた哀しい少女でしかないわ。

 でも、「王国記」のそのルートでは、プルーフィアを打ち倒して、めでたしめでたしで終わってしまうの。


 今の私は「王国記」でのプルーフィアとはすっかり変わってしまったけど、きっと私が学園に行けば、何もしていなくても同じ様に悪役令嬢の役割を押し付けられる事になるわね。

 まぁ、何もしないというのは無いけどね。私は私に違い無いから、きっと「王国記」のプルーフィアと同じ様に、間違っていると私が思った事についてははっきりとそう告げるから。

 でも、ここで言いたいのはそういう事では無くて、例えば同じ事をプルーフィアでは無く、第一王子派の伯爵令嬢エステリアや、第二王子派の子爵令嬢ラスタニアが口にしたなら、きっと高潔な女性と讃えられていたとそう思うのよ。


 「王国記」は本当に良く出来たゲームで、王道とも言える学園物や、冒険物や、開拓物が一つになったゲームで、何も考えずに遊んでいれば、ストーリーの背後に聖なる神を崇める正しき教会と、対立する邪悪な勢力の構造を透かし見るに違い無いわ。

 でも、原作を良く知っていると、思わず「あ」に濁点を付けて呻いてしまいそうな、もどかしい思いに囚われてしまうのよ。

 何故なら原作では聖神ラーオなんて出て来ないし、十二歳の子らに祝福を授けるのは聖神ラーオでは無く職能の神エリーンだし、ゲームには欠片も出て来ない原作由来の魔術も入力すれば使えたりといったファンサービスを考えると、神々の差異はどうにも認め難い違和感となってプレイヤーの胸に残り続けてしまう。

 そんな違和感を持ちながら隅々までプレイすると、主人公選択時の身分の違いによるキャラクター達の反応の違いなどから、別の事実が透けて見えてくるのよ。


 この王国の教会って、偽りの神を祀ってとんでもなく腐敗しているのでは無いかって。そう思ってプレイすると、主人公の身分を平民にした時の教会派貴族キャラクターの言動って、物腰は柔らかくても相手を人間扱いして無いんじゃって。


 物語なんて、どういう立場の視点で語られるかで、その印象はころっと変わるわ。

 現実の問題だって、誰がどう見ても真っ黒な不祥事を起こしているのに何故か捕まる事も無くのうのうとしている人が居たり、逆に何の証拠も無いのに悪い事をしていそうという印象を植え付けられて訴えられた人が居たりしたけれど、そういう時の報道って「未だにこんな事で騒いで意味なんて無いでしょう」とか、「絶対に何かやっていますよ。証拠なんて直ぐに出て来ます」とか、好き放題に印象操作して、それでも足りなければ明らかな嘘やデマでごり押ししようとしていたし。

 そこら辺を疑って掛かれるのは前世の家庭環境も影響していたと思うけど、順風満帆に上の言う事は正しいと信じて問題無く生きて来た人には気付け無かったりするのかしらね? 寧ろその環境から抜け出せない間は、私も上の言う事は全て正しく自分が全て間違っていると思い込んでいたりした分、とても皮肉な話だけど。


 でも、そこに気が付いてしまったなら、「王国記」の原作ファンに向けた隠されたテーマは、フリーシナリオなオープンワールドで有っても語り手次第で物語はその形を変えるという、プレイヤーもしくは原作読者の心を掻き乱さずにはいられない深くて重いテーマだったのよ。


 主人公達と駆け抜けた翡翠の森の冒険は、ピグミット族から見ても本当に正義だったのだろうかとか。

 大海原へ飛び出したあの壮大な冒険の始まりは、只の無謀な馬鹿の暴走以外の説明が出来たのだろうかとか。


 結局の所は聞き手に聡明さが備わっていなければ、声の大きな語り手の綴る言葉が、事実かの様に駆け抜けていく事となるのよ。

 前世でならテレビや新聞がそうだった様に――

 今世では王家や教会がその役割を果たすのね。

 つまり教会派の貴族は正しく、教会排斥派の貴族は間違っている事になるわ。

 私が王都へ行ったなら、間違い無く悪役令嬢にされるのよ。


 そうと考えると王都学園に行くのは得策では無いわ。「王国記」でジャスティンお兄様が副隊長をしているのも、実家と訣別しているが故に教会派として引き込もうという工作としか思えないし。個人で組織に対抗しようとしても、それには多大な力が要るから、今のままでは現実的では無いわ。教会排斥派というだけで動きを制限されそうな事を考えると、領都の学園に通った方が自由に動けるのは確実ね。


 そして叶うならば探索者になって、ダンジョンに潜るのね。

 何故ってこの世界で人知を超えた力を得ようと思うなら、ダンジョンに潜る以外の方法は無いからよ。

 原作で読んだ遙かな秘境を冒険したいだなんて気持ちは――ええ、ちょっぴりしか無いんだから♪



 無数のプルーフィアと赤石祥子が入り乱れて錯綜する、そんな高熱ののぼせた頭で、私はずっとそんな事を考えていたのよ。

 それにしても、元はプルート(冥王)フィア(恐怖)でプルーフィアと思ったけど、今は(赤石)証拠(祥子)の更にプルーフ()なのねと、それなら私は身の証をしっかり立てないとと、取り留めの無い事を思いながら。

 疑惑だらけの「王国記」の世界に、根本に流れる本質を掴み取る為、沈思黙考して道を選び取って行こうという私が転生してきたのは、どんな采配かと思いながら。

 因みに、イルカサルは、イル(何か否定的な感じ?)とカース(呪い)から付けた。海豚と猿になってしまった。

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