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洞を穿ちて察するが如く 氷の解けるが如く  作者: みれにあむ
第一部 王国記篇  第三章 神罰の雷《いかづち》
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(69)攻略の順序が重要

 ショー君はハーレム主人公(嘘

 資料室の扉を開けて、ちょっと予想外の光景に戸惑う。


「あれ? 今日は人が多いね」

「あ、本当。前に来た時はこんなに居なかったよ?」

「偶々かしら?」


 普段は数人が談笑しながら資料を捲っている資料室に、今日は十人近い探索者が居て、その多くが真剣に資料の中身を手元のメモへと書き写している。

 ちょっと常には見られない光景だ。


 資料室の中へ入って、彼らの机の脇を横切る時に、その理由が分かった。

 全員、私が書いた攻略手引き書を開いている。

 中には今更ながら解剖図鑑を広げている人も居た。


「はは、どうやら目当ては同じだね。まだ残っていればいいけど」

「「あ! 攻略手引き書!」」

「うん、出回ってそんなに時間が経ってないから、誰かが広めたのかも知れないね」


 解剖図鑑が置いてあるコーナーに二冊だけ残っていた内の一冊を手に取り、序でに解剖図鑑も手に取って手近な机へと移る。

 攻略手引き書は私が攻略した順番に書いたけれど、相談を受けてそれだとちょっと不親切だったかもとちょっと反省。

 確かに一番始めに潜るべきは、魔物の出て来ないアスレチックからかも知れない。


「じゃあ、まずは難易度順に行こうか。

 アスレチックから攻略したのは正解だね。魔物が居ない中で体を動かす訓練が出来て、位階も少しは上がるし、本当なら地形が敵みたいな場所だけれど、危険な場所にはギルドがマットを敷いてくれてるし」

「うん、私達もそう考えたのよ」

「結構楽しかった!」

「次に入るのにお勧めなのは、鳥の洞窟だと思う。四階層迄なら真ん丸スライムでもいいけど、彼処は五階層より下になると装備を溶かしてくるから」

「でも、鳥の洞窟は難しくて割に合わないって聞いたよ?」

「それは力尽くで攻略する人達の話だね。私達は違うよね? 素早く正確に急所を突くのが非力な私達の攻略法。その細腕で力自慢って言うのなら別だけどね?」

「ううん、分かった。色々と教えて?」

「うん、突撃してきた小鳥を盾で叩き落として、槍で突くのが遣り易いかな。小さな小鳥を素早く槍で突ける様になったら、他の魔物の急所を突くのにも役に立つよ」


 私が教えるのは、飽く迄も普通の手段で攻略する方法だ。


「鳥の洞窟の次は真ん丸スライムかな。透明なスライムの中を核が動いているから、それを正確に素早く突く訓練。失敗するだけ武器が駄目になるから、使い捨ての武器を持ち込んだ方がいいかもね。

 それで次はジュエルスター洞窟かな?」

「ジュエルスター? やっつけれたんだっけ?」

「うん。魔石を叩き付ければ斃せるよ? なんか魔力の衝撃が通るみたいでね、硬い相手には良く効くね」


 とは言っても、剣や槍で急所を突く話から飛躍しているので補足する。


「巣穴の魔物でも、犀の河原の犀男でもいいけど、素早く急所を突く事が出来ても大体急所は守られてるんだよ。だから、元々硬い殻に入ってる分、守りの薄い頭とかに衝撃を通して、隙を作った方が急所を突き易いわけ。余程勢い良くぶつけないと気絶させられないから、私は長柄のハンマーに付けて振り下ろしてるし、鏃に付けるならそれなりに強弓じゃないと駄目じゃ無いかな?

 その練習を動かないジュエルスターでして、その次は土のダンジョンかな? スピンボール・ルーレットでもいいけど、ちょっと難しいと思うよ? まぁ、土のダンジョンの次に、気絶した所の(とど)めを刺す練習かな?」


 「「おおー」」と納得顔の少女達。

 何故か周りで聞き耳を立てていた探索者達からも、賞讃の声が上がる。


「で、その集大成を巣穴の魔物で試す感じ。ここまで来たら位階も上がって身体強化が利いてる筈だから、油断しなければちゃんと斃せる筈。人も多いから、救助も期待出来るしね。

 で、次はもう一つ上の段階ね。魔物の気配を捉える訓練。魔力を感じるのに自信が有るなら犀の河原でナマコ退治をしてもいいし、それ以外の感覚の方が優れているなら迷宮洞窟でもいいね。

 私はソロだから、迷宮洞窟を行くのが一番疲れたよ。

 そして磨いた感覚で魔罠を撃退する感じかな。

 腐葉土のダンジョンは、状態異常の対処をしっかりしていれば迷宮洞窟と変わらないし、樹海のダンジョンは十階層迄は只の観光地だから参考にならないね。

 でも、非管理ダンジョンに潜ろうとしたら、一通り管理ダンジョンを制覇しないと危ないと思うよ。ギルドも良くこれだけのダンジョンを揃えてきたって思うよ。

 こんな感じでどう?」


 一通りダンジョン攻略順序の指標を、私の考えで言ってみた。

 少女二人から拍手が飛ぶ。


「凄い分かり易かった!」

「納得の順番ね!」


 周りからも「成る程」だとかの声が聞こえてくる。


「でも、どうして手引き書はこんな順番なのかな?」

「うん、凄く分かり難いよね」


 正直なその言葉には、私も苦笑いするしか無い。


「攻略手引き書の順番は、書いた人が実際に潜った順番なんだよ。もっと言うと、人気の無い順番だね。

 鳥の洞窟は二十階層には人も多いけど、低階層には殆ど人が居ないし、スピンボール・ルーレットなんて低階層から深層までずっと人が居ないよ? 色々試そうと思ったら、人が居ない所で試すよね?

 でも、確かにこの並びだと分かり難いから、入れ替えた方がいいかも知れないね」

「……そうなんだ?」

「ふふ、まぁ、私の説明を頭に置いて、しっかり手引き書を読み込めばいいよ。ここに書いて有るのが正解とは限らないけど、一つの答えなのは間違い無いから。

 例えば鳥は素早くても威力は無いから、ゴーグルだけ用意して軽装で行こうとか、事前にとことん考えて準備をしておけば、その分だけきっと上手く行くに違い無いから。

 じゃあ、こんな所でもういいかな?」

「うん! 有り難う!」

「ええ、本当に助かったわ」


 ちょっと喋り過ぎた気がしていたから、すたこらさっさと退散する。

 資料室の中からは、予想に反して盛り上がる声は聞こえて来ず、ただ黙々と頁を捲る音が聞こえて来るのだった。



 そんな少女達に強張った表情で捕まったのは、その更に次の週の事である。

 プルーフィア=ショーの口調が安定しないなぁ。

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