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洞を穿ちて察するが如く 氷の解けるが如く  作者: みれにあむ
第一部 王国記篇  第三章 神罰の雷《いかづち》
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(68)友達

 少女主人公は、ハーレム展開を期待されないからそこがイイ!

 或る日の夕方。

 私の礼拝堂でまったりとしている所に、カヌレがお茶のお代わりを入れながら声を掛けてくる。


「ねぇ、プルーフィア様はお友達はお作りにならないんですか?」


 そんな風に、カヌレから雑に問われて考えてみた。


「う~ん……なんか、想像が付かないね。私の魂が知ってる言葉に、三つ子の魂百までって言うのが有ってね、三歳くらいまでに形作られた人格は、百歳までそう簡単には変わらないんだって。

 それで考えると、もう私には一人で行動するのが染み付いちゃってるから、友達って言われても良く分からないんだよ。

 カヌレが一番友達に近いかなって思うけど、やっぱり違うし。

 今の私は気持ちが全部ダンジョンに行っちゃってるから、ダンジョンで一緒に遊べる人じゃ無いと中々友達になる機会も無いし、ショーとして仲良くなってもとも思うし」


 それは前世である赤石祥子からしても変わらない。

 逆にそんなプルーフィアだったからこそ、似た様な赤石祥子の魂との合一もすんなりと混乱も無く済んだのだろう。


「学校にもう少し通いましたら、友達も出来そうですよ?」

「そこはね、私もこれで良いとは思わないから、ユイリやロジアには交流を促したんだけどね。

 でも、私の目的の一番は友達を作る事じゃ無いから。

 病弱で出歩く事も少ない深窓の令嬢と思わせて実は魔術の遣い手というのと、腕は立つかも知れないけれどまだ子供で、領主一族と関わりが有りそうだけど確かな事は明かされていない探索者の少年とでは、後者の方が余程立ち回りがし易いのよ。

 伯爵令嬢が懇々と教会の背信を説くのと、領主に関わりの有る調子に乗った子供の探索者が教会の弱点を突いた失言を大勢の前でするのと、何方が教会にとっての痛手になると思う? 私は子供の失言の方が最終的には教会を窮地に追い遣れると思う」

「伯爵令嬢のお言葉の方が、説得力が有りそうですけれど……?」

「うん、それで本腰を入れてグリムフィード伯爵家を潰しに来そうだよね? 伯爵家と何か関わりが有りそうだけど隠してるっぽい弱味とも取れそうな少年探索者相手なら、警告のつもりで迂闊な事を為出かしてくれそうに思わない?」

「……ショーは罠ですか。危ない事はして欲しくないですよ」

「ショーが危なくなる時は、グリムフィード自体が危なくなっている時だね。教会には雷を落とす魔導具が有ると睨んでいるから、それを持って来てくれれば万々歳。でもその前に雷に対抗出来る様になってないと駄目だから、ディーン様の祝福がまだ貰えてないのは拙いのよ。

 だから、最優先はディーン様へのお供えの仕方を見付ける事。その次が私が強くなる事ね」

「初めて具体的な話を聞きましたけど、御館様がお許しになるとは思えませんねぇ……」

「ふふ……ディーン様から祝福を賜って、自分を鍛えるだけなら、何も反対する様な事じゃ無いからね。ショーが教会に関わるなら十二歳の祝福の儀だから、その時にまた相談だよ。

 そういう意味ではまだ二年先だけど、ディーン様の祝福が貰えてないのにもう二年しか無いから、色々厳しいかも知れないね。

 私としては出来る事をするしか無いけどね」


 カヌレは今まで見せた事の無い心配そうな表情で私を見ている。

 私は疾っくに覚悟を決めているから、静かにその眼差しへと視線を返している。


「……私、プルーフィア様はダンジョンを楽しむのが一番なのだとばかり思ってました」

「うん? それも有るよ?

 魔術師なんだし、元々七年先を見越した計画だったんだから、楽しまないと続く筈が無いよね?」

「……え?」

「うん? だから、ダンジョンもちゃんと目一杯楽しんでるよ?」

「え? え? でも、プルーフィア様の話を聞いていると、悲愴な覚悟で――」

「悲愴って……。

 あのね、私は心配性だからね、今のグリムフィードの立場が微妙なのが分かっているのに、漫然と何とかなるなんて思う事は出来無いの。現実から目を逸らしてそんな事をしていたら、逆にノイローゼになってもおかしく無いかな。

 いい? 民衆がそんな事を気にせず気楽に過ごせるとしたら、それは領主が凡ゆる事態を想定して備えてくれているからだね。その為に税を納めているんだし。

 これが領主がお気楽に何の備えもしてなかったとするなら、その分民衆はお気楽では居られないよ? 領主が何とかしないとどうにもならない事を、民衆に自分で何とかしろなんて言い出したら最悪の無能だね。税を納めさせてのそれなら暴動だって起きるよ。

 私は領主一族の立場だから、お気楽とは縁が無くて、最悪の状況を想定してやるべき事をやってるだけだよ? それもちゃんと楽しみながらね。お父様達にお任せした分も、同じだと思うよ?

 だから、悲愴とかじゃ無いの。教会が断罪するのは雷でだから、雷を自由に操れる様にならない限りは囮になんてならないし、その時は別の手を考えるだけなんだから」


 おかしな事は言ってない筈なのに、カヌレは暫し私の言葉を呆然と聞いた後に、猛然と私に寄って来て撫で繰り回してきた。


「もう! もう! も~う!! プルーフィア様は言葉が足りないんです! 凄い心配したんですからね! も~~!!」

「ちょ、ちょ、カヌレやめ!? 何で!? ちょっと~!?!?」


 久々にカヌレに完全敗北してしまった私なのだった。



 次の日は早朝以外のダンジョンをお休みにして、久々にカヌレと一緒に街へ出る。

 まずは花屋プルーウィへ。


「あ! ショー君、お帰りなさい!」


 プルーウィでの私への挨拶は、お帰りなさいがデフォルトだ。その時の姿でショーと呼ぶかプルーフィアと呼ぶかを分ける様に、しっかりと言い聞かせている。

 リズベルやエリーザさんにも友人の様な気持ちは抱いているけど、やっぱり雇い雇われな関係である以上、何処かに遠慮が有るのは仕方が無い。

 野菜ばかりの庭園に招待する事にして、その日取りを決めてから店を出る。



 次に足を向けたのは、リダロッテさんの小物屋。

 リダロッテさんとも付き合いは長いけれど、最近はカヌレに遣り取りを任せていて、私は店には足を運んでいなかった。


「いらっしゃ――ああっ! ショー君!」

「久し振り~。元気にしてた?」


 勢い込んで立ち上がったリダロッテさんに、片手をあげて挨拶する。

 因みにロダン親方は当然ショーの正体を知っているけれど、リダロッテさんは未だに私の正体を知らないままらしい。


 リダロッテさんも友人みたいなと言えばそうかも知れないけれど、それよりロダン親方の方が親しみ易い。だけど、向こうからしたら私を友人とは思っていないだろう事は確実で、それは他にも色々教えてくれたりした職人達も同じだろう。

 リダロッテさんからは、私と直接会話したい事を溜め込んでいたみたいで、今後卸して欲しい小物について相談を受けた。

 まぁ、手が空いている時なら対応するのも吝かでは無いよ。



 結局友人みたいな人は居ても、友人と明言出来る人は居ない様だ。

 そんな事を思いつつの次の日の朝。

 早朝のノルマも終えて、一度朝ご飯を食べに戻ってからの、再びの探索者ギルドである。

 ダンジョンにも慣れてきたから、行き帰りの採取も視野に入れておこうと、依頼掲示板を眺めてみる。


 依頼掲示板は壁一面の大きな魔境の地図になっていて、どの地域で何が採れるのかが示されている。棲息している魔獣も示してあるから、実力と見比べるにも分かり易い。

 当然魔獣にも買取価格が示してあるけど、ダンジョン外で魔獣を斃しても位階は上がらないから、私のターゲットにはなってない。


 依頼掲示板に示されているのは、ランクC、別名銅級以下の依頼だ。難度の高い高額依頼を依頼掲示板に示してしまうと、必ず無茶をする探索者が出るからだろう。

 そして、私も常設の依頼は態々依頼掲示板を見なくても、五歳の頃に頂いた「司書」の職能が憶えている。五年を経た「司書」は、前世で読んだ本だけでは無く、目を通しても居なかった積ん読本や、此方に生まれてから読んだ本の中身もしっかり記憶していて、とても便利だ。自分で書いた解剖図鑑や、作った模型も、司書が管理する資料室には収まっている。

 尤も、積ん読本の中身が本当に正しく反映されているのかは分からないけれど、そんな事は気にしても仕方が無い。その内、積みゲーも遊べる様になるのではと、実はちょっと期待している。


 何故内容を知っている依頼掲示板を見ているかと言えば、色の違う札で示された特急依頼を確かめる為だ。需要が急増していたり、在庫が枯渇している物になる。

 当然在庫がだぶついている品物も、色を変えて買取価格が下げられていたりする。

 これは日々更新されていて、中には特急依頼を専門に手懸ける探索者も居るらしい。


(ふ~ん……ミド草が特急依頼になってるのは、これから風邪の季節だからかな?)


 目的を持って見てみれば、気付ける事がそれなりに有るのが面白い。

 残念ながらスピンボール・ルーレット方面にはめぼしい依頼も無かったから、そのままギルドの建屋を出ようと踵を返そうとした所に、弾んだ様子の声が掛けられた。


「ショー君!」

「あ! 本当、ショー君だ!」


 新人講習でも一緒だった、同期の女の子の二人組。

 時々ギルドで声を掛けられるし、二人と同じ学校の子とかからも話し掛けられる事が有る。

 駆け寄ってきた二人は、私を逃がしてなるものかとでも言う様に、私の両手をそれぞれ掴んで放さない。


「あのね、ショー君、ちょっと相談したい事が有るんだけど、いい?」

「アスレチックの十階層までは何とか行けたのよ。でも次に何処を攻めればいいのか分からなくって」

「ガルダーが調子に乗りそうな事ばっかり言われるのよ!」

「ショー君なら、私達に合った方法とか思い付きそうだから」


 捕獲された私は、何だかおかしくなって笑いが込み上げてきた。

 一緒に探索するにはまだ実力が合わないけれど、真剣にダンジョンの攻略を考えていて、物怖じしない二人。

 うん、友達って、こういうのかも知れない。


「二人とも、資料室の攻略手引き書は見た?」

「え? ……解剖図鑑は見たけど、そんな本、有ったっけ?」

「御免なさい。覚えが無いわ」

「それじゃあ、まずは資料室に行こうか」


 両手に花と二人の少女を纏わらせたまま、私は資料室へと歩き出す。

 偶にはこんな日が在ってもいいと、そんな事を思っていた。

 ぼっちに友達の定義を聞かれても……な主人公。憐れ。

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