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洞を穿ちて察するが如く 氷の解けるが如く  作者: みれにあむ
第一部 王国記篇  第三章 神罰の雷《いかづち》
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(65)酷い事になった

 スネアー!

 登録タグは銀色になったけれど、特に私の周りは何も変わる事無く、探索の日々は続いている。

 日々の探索の成果について述べる前に、鑑定の仕様について再確認しておこう。


 前にも述べた通り、鑑定は術者の知識や意識に左右される。

 自分の位階を知りたいと思っても、ただ漠然と鑑定したなら位階のみを、各ダンジョン毎に対応した位階を知りたいと思って鑑定したならその様に、更にそのダンジョンに出現する魔物の種類毎の位階を知りたいと思ったなら、それも確認する事が出来てしまった。

 この時点で原作知識を飛び越えてしまっているけど、それなら更に一歩踏み込んで、複合属性の鳥魔力を無属性や水属性魔力に分解した時の、各属性の位階はと問うと、不思議とそれには回答が示されない。

 無属性や水属性の魔量だとかいう形では示されるけれど、それは位階では無いらしい。


 (あたか)も位階というのは、ダンジョン固有の魔力――即ちダンジョンに出現する魔物の魔力――をどれだけ付与されたかだけの情報であり、それ以上の意味は無いとでも言われているかの様だった。

 寧ろそれがはっきりしたからこそ、私の指針にもなったのである。


 つまり、各ダンジョンで付与され得る魔力は、魔物の種類毎に設定されているから、実はそのダンジョンで付与される限界に至っている様に見えても、レア(稀少)な魔物の魔力はまだ現界まで付与されていない可能性が有ると分かったのだ。


 実際に私の鑑定結果で裏付けが取れたのだから、レアな魔物を優先して狩るようになったのは、当然の流れだろう。

 鳥の洞窟で言えば、青と緑の小鳥は魔石を砕いてももう飽和しての位階二十五。赤の小鳥が位階二十二。黄色の小鳥が位階十三だ。

 早朝に最下層まで駆け抜けて、赤と黄色の小鳥だけ殲滅して、直ぐに戻って別のダンジョンへ。そして朝食の前にもう一度小鳥の洞窟の最下層で赤と黄色の小鳥だけを殲滅して、館へ駆け戻って朝ご飯を食べる。

 そんな流れが出来ている。


 これが間違いと言うのなら、ゲーマーの中でも遣り込み志向の完璧主義者の魂をこの世界に投げ入れたのが、そもそもの間違い。

 でも私はとても感謝している。退屈な作業ゲーとはなっていない、この世界の何と素晴らしい事だろう。


 今や早朝には色々なダンジョンに手を出しているけれど、成果という意味で一番分かり易いのはスピンボール・ルーレットの他には無い。

 現在到達の最深階層が、もう直ぐ怒濤の五十階層。私の背を倍する程に巨大なダンゴムシの大玉が、唸りを上げて転がって行くのを見るのは、譬えるならダンプ街道の路肩を歩いている様な物だ。本の少しでも目算を誤れば、挽肉に成り兼ねない。

 全滅させたなら次の階層へ、日を跨いだなら続きから。そんな方針で潜り続けて、実はこんな所まで潜っているなんて、カヌレにも気付かせてはいない。

 アロンド叔父様? ――ちょっと分からないかな。


 スピンボール・ルーレットで出て来る魔物は大きさは違えど今の所一種類だから、それを斃して上げた私の位階が三十八。到達回数と較べて低めなのは、斃し方が関わっていそうだ。


 二十階層を超えた辺りから、巨大ダンゴムシを魔石で撃ち抜くのにも限界を感じ始めていた私は、位階が上がった事で容量が部屋一つ分に広がっていた虚空蔵屋敷で、ダンゴムシ用のジャンプ台を持ち込んだのである。


 猛スピードで走り抜けるダンプ元いダンゴムシを、完膚無きまでに粉砕したいならばどうすれば良いか。

 ダンゴムシ同士を正面衝突させれば、きっとその望みは叶えられるに違い無い。


 低階層ではダンゴムシが小さく威力も無い為迂遠だったその方法も、深層では事情が異なってくる。同じ擂り鉢の中で正面衝突を狙うのは難しくても、何故か同じ右回りに回りたがるダンゴムシだから、隣の擂り鉢にジャンプさせれば容易(たやす)く正面衝突を狙っていける。

 結果として私の手を汚さずに爆散したダンゴムシ多数。玉突き事故で砕け散ったダンゴムシ多数。私は事故ダンゴムシの残骸が散らばる中、(とど)めを刺すだけのお仕事だ。

 きっとトラップで斃した場合は、経験値の入りも悪いという事なのだろう。


 でも、位階は三十を超えて、回転の固有魔法はしっかりと手に入れている。

 序でに言うと、位階は低いけれど鳥魔法も入手済み。


 奥の手は着々と増えているけれど、それを使わなければ護衛騎士には敵わなくて、実際奥の手を使えば通じるのかも実は不明。

 それなら或る程度の手札は解禁して訓練しておかないと、折角の力も宝の持ち腐れとなってしまう。


「効果が出ないと分かっている鍛錬は無意味だよね?」


 珍しく口に出して確かめてみたら、すっきりした。

 うん、何れ大人になった時には活きてくるのかも知れないけれど、今はそんな先の話を求めてなんていないし、そもそも私は大人になったところでそんなに大きくなれるのだろうか?

 ちょっと期待は出来そうに無い。


 それなら、多少トリッキーで王道を外れていようとも、私に出来る事をするのが一番だ。



 そして週が明けた数日後の訓練の時間に、魔術込みでの実力を確かめてみる。

 尤も、見せるのは見せられる魔法だけ。

 つまり、鳥魔法と回転魔法の二つだけだ。


 剣を構えて間合いを計りながら右へ左へ。

 そんな私に対応する様に、たんぽ槍を構えた護衛騎士も右へ左へ――と動こうとした所へ、そんな護衛騎士の腰を中心に浮かせた足を回転させる私。

 踏み出そうとしていた足を軸足に縺れさせた護衛騎士は、蹌踉めきつつ足を踏み出して立て直そうとするが、その足も当然回転する。

 酔っ払いの様に完全に体勢を崩して地面に手を突こうとしても、勿論それも回転するから、ごろんと護衛騎士は転がった。


「うわー、何だこれは!? 立っていられないぞ!?」


 その首元に突き付けられた私の剣。


「ほら、酷い事になりましたよ♪」


 と響くカヌレの声。


 その次の日の槍の訓練も、更に次の日の棍の訓練も、似た様な事になった。

 最後の弓の訓練では、回転を掛けた矢が的を貫いたのを見て、護衛騎士が訓練方法を変更して良かったとそんなに無い胸を撫で下ろしていた。


 私は思う。

 まだ鳥魔法を見せていないと。

 それなのに前の週とこれだけ結果が変わってしまうのは、それだけ回転魔法が人気の無さに反して優秀なのだろう。


 スネアの魔法はTRPG界隈で一世を風靡したのだから、当然かも知れないけれど。


「攻略情報更新した方が良さそうだね」


 直線的な動きを得意としていそうな王都の騎士に対して、嵌まればとことん強そうなのが回転魔法だ。対抗手段としては光一(ぴかいち)かも知れない。

 ただ、射程の短さがなぁ、と、そんな事を考えつつ、私の訓練の日々は過ぎて行くのだった。

 とか言いつつ、私はTRPG勢じゃないのだ。

 角川スニーカーとかに、TRPGリプレイを元にした小説が結構出ていたのを読んでいたくらいかな?

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