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洞を穿ちて察するが如く 氷の解けるが如く  作者: みれにあむ
第一部 王国記篇  第三章 神罰の雷《いかづち》
59/95

(59)姪っ子が大暴れしているらしい。

 会話回。

 探索者ギルドでは、毎朝情報の共有の為に朝礼を実施している。

 九月二日の土の日は、毎度報告される怪我人だとかの話題とは違い、久し振りにぴりっと緊張感の有る報告が齎されていた。


「鳥の洞窟の魔物が激減した?」

「いえ、それが一時的な事かも知れませんけど、十階層迄の魔物が夕方には殆ど居なくなっていたらしくて」

「あ、待って、それ心当たり有るわ。一昨日探索者に成ったばかりの子が、レベル一魔石とレベル二魔石だけでレベル四魔石百個分をクリアしちゃってて――」

「「「「は?」」」」

「――それでレベル三魔石も千個以上有るって言ってたの。それとは別にレベル四魔石も百個、簡単に提出されたわ?」

「……つまり、狩り尽くされたのか。オルカス、どんな奴だ?」

「くく、それが出来そうなのは一人しかいないな。ちびっこくて心配になるが、今回の新人の中では誰よりも腕が立つぜ?」

「そう、そうなのよ! ちっちゃいのに凄いの! ショー君は絶対凄い探索者に成るわ!」

「ほう……ショーというのか。確かに何処かで聞いた気がするな。――おいオルカス、何をにやついてやがる?」

「いや、何でも無いぜ? ランクDをやったが、下手をすると今日中にも実績条件を満たしちまうなってな?」

「おお。ショー君ならそうだろうね。認定台紙に十七もサインされていた凄い子だよ」

「ふむ、ピスケッタも一押しの子か。ならこの件は様子見としよう。他には何か無いか?」


 ギルド長アロンドが進行を務める朝礼の中で、ダンジョンの枯渇を想起させる報告は見所の有る新人の周知へと置き換わり、何事も無く終わった――筈だった。

 しかしその日もその次の日も鳥の魔物が消えたという報告が続く。何方も昼に齎されているから、午前中に鳥の洞窟へ行ったのだろう。

 それに加えて各ダンジョンの日誌から、スピンボール・ルーレットでも魔物が居なくなる現象が起きている事が分かった。


「これは昼前に鳥の洞窟へ入って、午後はスピンボール・ルーレットへ行ってるな。態々全滅させてから次へ進んでいるのか」

「変な拘りをしてやがるぜ。ただ、ランクを上げるのも慎重にしてくれそうなのは安心だな」

「このペースだと、今日にでもレベル四魔石百個を持って来そうですねぇ」


 そう言っていたら、その日の昼にスピンボール・ルーレットのレベル四魔石を百個、夕方に犀の河原のレベル四魔石を百個持って来たらしい。


「ランクC試験は、管理ダンジョン全部十階層まで潜ってからにするんですって」

「ははは……犀の河原は他の探索者も居る分、そう簡単に全滅させられない筈だが――もしかして他人の居るダンジョンは全滅対象外か? 案外早くに申請が出て来るかも知れないなぁ……」

「それよりもスピンボール・ルーレットだ。日誌には誰の姿も無いのに何時の間にか全滅していたと有る。どんな奴か俺も流石に気になるぞ?

 ……もしもランクC試験の申請が出されたなら、俺に回してくれ」

「ギルド長直々の試験? それはまた注目されるでしょうね」


 そんな話をした後は暫く大人しく、しかし次の土の日にはジュエルスター洞窟の低階層から光が消えた。あの、一つ壊すだけでも工具を幾つも駄目にする、割に合わない魔物で知られているジュエルスター洞窟でだ。


「誰がやったかは想像が付くが、どうやったんだ? 固有魔法が伝わっているからには昔は斃し方も知られていたのだろうが、秘匿されていたのか今は誰も知らん筈だぞ?」

「斃し方を見付けたんでしょうかねぇ?」

「あ、でも、ほら、ギルドの解剖図鑑もショー君なんでしょ? 秘訣とか有るのかも?」

「解剖図鑑? ――ああ! 何処かで名前を聞いたと思ったら、あの解剖図鑑の著者か! 成る程、それなら納得だな。あの図鑑には多くの探索者が助けられている筈だ」

「斃し方、ギルドに売ってくれませんかねぇ」


 その次は水の日。巣穴のダンジョンでトラブルが有ったと聞いて、ふて腐れた様子をした当事者の兵士から話を聞いていると、もう一人の当事者としてやって来たのが件のショーだった。

 この時アロンドは、漸くにして理解した。

 何故オルカスがにやついていたのかを。噂の新人が成し遂げた破竹の快進撃の裏に在る物を。

 しかしそれを表には出さず、アロンドは当事者二人の話を聞く。


「――だから、巡回の兵士にも新人講習受けさせた方がいいんじゃ無いかなって。それと、ちょっと指摘されたからって、馬鹿にされたとか思う根性はどうかと思うね」

此奴(こいつ)! 此奴めぇえええ!!」

「……成る程、確かにおかしな奴だな。兵士の調練はストロン家か? 彼奴らは何をやってるんだ?」

「何故そいつの肩を持つんだ! は! やはり探索者なぞ底辺の奴らだ!」

「……成る程、講習は受けている筈だが、此奴が聞く気が無かったのかも知れんな。取り敢えず牢に入れて、後はストロン家に任せるか」

「馬鹿な! お前にそんな権限有る筈が無い!!」

「何か憐れになってくるなぁ。探索者ギルド長は領主の弟だよ? 分かってる?」

「なっ!?」

「序でに言うが、此奴も兵士に命令出来る立場の人間だぞ? どういうつもりで兵士をしているのか知らんが、偉ぶれるからとでも思っているのなら大間違いだ。お前の首が繋がっているのは此奴の温情だと思え」

「この人に破産させられた人も結構居てそうだけど?」

「……仕方が無い。面倒な話だが調査せざるを得んな」


 呼び出されたストロン家の者に兵士が連れて行かれるのを見送ってから、アロンドは男装した姪へと話し掛ける。


「で、オルカスは知っているのか?」

「さっきの兵士の事?」

「では無く! ――いや、知らない訳が無いな。大暴れしている様で何よりだ」

「ふふん♪ 有言実行だね!」

「……まぁ、そうだな。

 色々と聞きたい話は、もうそれこそ山の様に有るが、流石に兵士一人しょっぴいて知らん顔も出来ん。後で詳しい話を聞かせて貰うぞ」

「お疲れ様~」


 アロンドは気の抜ける声に送られて、しかしその日は結局領館まで話を聞きに行く事が出来無かった。

 そして次の日の夕方には、口元をにまにまとさせた受付嬢から、ランクC試験の試験官として指名されている事を知る。


「ぬふふ~、慕われてますねぇ、ギルド長♪ 信用出来る試験官ですって♪」


 エルザの口調が乗り移ったかの様な受付嬢に苛っとする。エルザ以外でその口調は激しく不快だ。


「他の受験者は組み入れるなよ。最短で土の日の朝からだな」

「あー! 特別扱いでしょうか!?」

「馬鹿を言え、こんな奴と一緒に試験を受けたら、他の奴らは潰れるだろうが」

「おお! 納得!」


 まぁ、話を聞くのは試験の時で良いかと、アロンドは一つ溜め息を吐くのだった。

 これを書いたのは4/16なので、ストックが約一ヶ月分!

 という事で、暫くは冒険者に成るのです×3に注力しても問題無さそうだ。(投稿された時はどんな状態になってるんだろうなぁ?)

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