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洞を穿ちて察するが如く 氷の解けるが如く  作者: みれにあむ
第一部 王国記篇  第三章 神罰の雷《いかづち》
52/95

(52)RTA

 RTA=リアル鳥アタック。

 現在の深度は鳥の洞窟五階層。

 当初の目標としていた階層だけれど、登録タグに付けられた太陽石の反応からは、カヌレと別れてからまだ一時間も経ってない。


 太陽石は、太陽の光に晒され続けた事で、太陽の有る方向へ光を放つ様になった水晶の様な鉱物だ。夜になってもちゃんと光るから、本当は光は関係無いのかも知れないけれど、これが有るからこの世界でも時間を計る事が出来ている。

 でも、光が下を向いても六時では無く夜中の十二時だ。しかも壁に掛ける時に傾けてしまうと、光が二条になり三条になりとして、そう言う状態を時計が狂ったと呼んでいる。

 狂った太陽石は安価に手に入るから、結構誰でも時計は持っていたりする。


 登録タグの太陽石は、自慢された通りに光も強くて一条だけだ。

 ダンジョンの中でも正確な時間を知れる事に感謝しながら、私は更に先へと進む事を決めた。


 何と言っても、ここまで小鳥は殲滅してきたのだから、帰りは探した所で魔物は殆ど出て来ない。リポップ(再出現)は時間で補充されるので、それを待つならぎりぎりまで潜って、帰りは一気に帰ろうと思う。


 因みに、四階層で二百羽を軽く超える小鳥を投擲で相手をしていたら、ちょっともう腕が上がらない感じになっていて、小鳥の相手は魔術で済ませてしまっている。

 私の無属性魔力は大人程度の力を発揮する。ならば、それを一点に集約すれば、小鳥程度は貫く礫を撃ち放てないだろうか?

 実際弓矢だとかはその原理で矢を飛ばしているのだから、弓矢程度の威力は出る筈と、試してみたらあっさりと出来てしまった。小石を飛ばしているから、どちらかと言えばスリングショット(パチンコ)かも知れないけれど。

 飛ばす石の形で軌道がずれるので、それも荒割りのスキルを応用して数多くの石のパチンコ玉にして、撃ち落とす程度の威力で撃ち出して、落ちてきた小鳥の(とど)めは槍で刺している。

 効率的に魔物を斃して、そして武器の強化の観点でも無駄にはしていない。


 多分魔物も強くなっている筈だけれど、突撃してくる前に撃ち落としているから、全く何も実感が無い。

 一つの広場に一分ちょっとで殲滅して、寧ろパチンコ玉を作るのに時間が掛かってしまっている。


 でも、きっと他のダンジョンではこうは行かない。

 想像していた以上に、鳥の洞窟ダンジョンが私の魔術と相性が良かっただけだ。

 防御力も体力も無く、敏捷頼りな魔物の小鳥。だからこそ私の礫が通じている。

 鎧を纏った様な魔物ならば、軽く弾かれるだろう事は考えるまでも無い。


 結局五階層も十分そこそこで殲滅を終える。

 パチンコ玉を多目に作りながら考えた。

 もしかしたら、その階層の石でパチンコ玉を作っているのも、ちょっとは効果が有るのかも知れまいと。

 小鳥の防御力が上がっていても、同じ階層の石から作ったパチンコ玉ならダメージを与えられる事も有るだろう。


 それなら、低い階層でパチンコ玉を作っても仕方が無いと、私は座って居た岩から腰を上げる。

 そして六階層へ向かうと、その先から見知った兵士が坂道を登ってくる所だった。


「あ? もしかしてショーか? 漸く探索者に成ったんだな。それにしても小せぇなぁ」

「パスッカさん、ちょっと行き成り酷く無い?」

「いや、思わず口に出たがよ、小さくてすばしこいは厄介だってのは此処の常識だから悪口じゃないぜ? でも、ショーはパーティを組んで無いんだな。その分厄介さは目減りするか」

「う~ん……思っていたより鳥の洞窟との相性が良かったから、此処だとパーティは要らないかなぁ。厄介だけど非力でも斃せる魔物のダンジョンって他には何処だろ?」

「おー、言うねぇ。確かに当てられるならそんな感想を持つのかも知れんけど、油断は大敵だぞ? だが確かに非力でもと言われると此処になるか。他は有ったとしても非管理ダンジョンになるだろうな」

「ふ~ん。――ま、管理ダンジョン全部の十階層制覇が済んだら、Cランク昇格に挑戦してみるよ」

「く、慎重なんだか大胆なんだか。管理ダンジョンなら巡回はしているが、怪我をしない様に気を付けろよ」

「分かってるよ。じゃあ、もう行くね」


 何処か気が抜けた様子の兵士と挨拶替わりの会話を交わして先へ進む。

 確かに慎重なだけではいけない。大胆さも持ち合わせていなければ、望みに手は届かない。

 身の安全を最優先にするのは当然だけれど、広場の小鳥を殲滅するタイミングで魔力が半分残る程度にペースを上げようと思う。


 想像して見れば分かるだろうけれど、秒間一発で間に合うシューティングゲームはヌルゲーだと思う。或いは一秒待ってくれるモグラ叩き。秒間二三発に上げたら魔力の回復が少し追い付かないけれど、半分も残れば十分だし、それだけ有れば何か有っても対処出来る。

 何と言ってもダンジョンの中だからか、魔力の回復がとても早いのだから。


 普段でさえ気分次第で気力に満ち溢れている時には魔力の消費を意識させないのに、ダンジョンの中だと丸で格闘ゲームのスタミナゲージが如く魔力がぐんぐん回復する。

 魔術という手札が有るなら、けちっている場面では無いだろう。


 標的に照準を合わせて撃つ。ただそれだけ。時折よよよと横に流れる小鳥も居るけれど、突撃してくるその前なら殆ど動きも無いから、偏差射撃も必要無い。

 魔物の小鳥からしてみれば、不条理の極みだろうか。物音に飛び出てみれば、目下(もっか)には敵対している動きも見せない人影が一つだけ。なのに周りで仲間は落とされていく。気が付けば自身も全身に衝撃を受けて地に落ちれば、槍を持った私が待ち構えているという算段だ。


 話に聞く魔物の小鳥はもっとアクティブに飛び回ると聞いていたけれど、そうなっていないのはやっぱり私が動かないからと推測して、試しに腰の輝煌石に覆いを被せてみる。

 管理ダンジョンだから、完全な暗闇にはならない様に其処彼処に輝煌石の灯りは設けているけれど、一瞬前とは比べ物にならない暗闇が辺りを包む。

 戸惑いの鳴き声を上げる小鳥達。

 うん、鳥目をダンジョンに配置するのはナンセンスだ。


 魂と重なっている私の眼にはしっかり鳥の姿が映っているのに、何故鳥の魔物には私が見えないのだろうかと思いつつも、更に気配を消して私は動けない小鳥達を撃ち落としていった。


 七階層では広場の一つで他のパーティが小鳥達と対峙していた。

 そのフロアの魔物を殲滅したら、次の階層への扉が開くなんて空想を楽しんでいたけれど、邪魔が入ったと残念に思いつつ、パーティの居る広場を残して殲滅したら八階層へ。

 八階層にも一組のパーティが居て、見付からない様に残りの広場を殲滅してから九階層へ。

 九階層には人が居なかったから、七八階層を駆け抜けた分、其処でちょっと休憩を入れた。


 パチンコ玉の補充をしながらちょっと考える。

 普通のパーティは、盾役が小鳥の突撃を受け止めて、弾かれた小鳥に皆で止めを刺していた。

 確かにそれも一つの手だろうけれど、私が真似をしても怪我をするだけだろう。人には向き不向きというものが有るのだ。


 九階層も殲滅して十階層に辿り着いた時、出迎えたのは番人の(なり)――多くの場合、役割の有る者は色付きの前掛けを着けている。番人は青の前掛けだ。――をした騎士だった。


 因みに、グリムフィード領で騎士と兵士の違いは余り無い。

 馬を養える資産家、つまりは貴族かその係累、大きな商家の者が騎士となる事が多い。

 騎乗戦闘の訓練もしているが、多く騎士の役目は伝令となっている。


 つまりは諸々含めてこの場での権限を持つ者という事だ。

 十階層より下に降りる場合は、この騎士の承認を得なければならないのだろう。


 番人の騎士を横目で見ながら死角に入り、其処でまた広場毎の殲滅に入る。

 十階層での広場の数は十。突撃して一度に襲い掛かって来る小鳥の数も十。

 ダンジョンも中盤で確かに強化もされているが、その方向性が数の暴力に偏り過ぎだ。紙装甲に変わりなく、気配を隠した相手に弱ければ、鴨が増えただけである。

 まぁ、鳥だけに。


 他の人に殲滅されてからの回復が間に合ってないらしき、四十羽と数の少ない広場も含めて殲滅し、残っているのは番人の居る下への降り口の広場だけ。

 壁や天井に目を凝らしてみれば、番人が時々処理しているのか、コロニーに隠れている小鳥は五羽と少なかった。


「ここの小鳥も貰っていい?」


 番人に声を掛けると、言葉も無く頷きで応えを返される。

 この周りは輝煌石で明るいから、なるべく素早く処理しなければいけない。


 上がらなくなっていた腕も、暫く休ませた御蔭で十回程度なら働いてくれそうだ。

 最初の一投を隠れていた小鳥に直接当てて、二投目から五投目を飛び出てきた小鳥達に急いで投げ放つ。

 落ちてきた小鳥を槍で突いて止めを刺す。


「見事だな。――お前はカヌレさんとはどんな関係なんだ?」


 もしかしたら番人をしながらもずっと気になっていたのかも知れない。

 そう思うと、どうにも笑いが零れてくる。


「皆、面白がってるよね? 十通り以上の噂を聞いたよ? でも面白いから内緒。知りたかったらカヌレに聞いてね?」

「灯りはどうした?」

「鳥なんだから暗い方が対処も楽だよ?」

「……はぁ。下へ行きたいなら登録タグを見せろよ」

「あはは、まだランクDだから無理だね♪」

「うん? ……ランクと実力が釣り合ってないな」

「鳥の洞窟は非力でも関係無いから、相性がいいんだよ。(おだ)てたってカヌレにいい人だなんて言わないよ?」

「違う! ――ああ、もう、行け! ランクDなら次来る時はパーティで来い。それなら下に通してやろう」

「昨日探索者に成ったばかりだから、暫くは一人で色々試してみるつもりなんだ。ランクCになったら下へ行かせて貰うね」

「昨日……??」


 取り敢えず、自分で設定したステージはクリアした。

 今日の稼ぎはランク一魔石が約二百個。

 ランク二魔石が約八百個。

 ランク三魔石が約千二百個。

 ランク四魔石が約五百個。

 締めて凡そ五十万円。

 時間は二時間半程過ぎたくらい。

 結構全滅条件のタイムアタックとしても、いいタイムが出ていたのでは無いだろうか。


 それに、丁度いい時間だ。

 他のダンジョンでも使えるからと、十分程十階層の石を使って大量のパチンコ玉を作り上げる。

 それが済めば一直線に一階層を目指してぴょんぴょんぴょん。

 五分も掛からず戻ってみれば、カヌレが笑み崩れた男達のアイドルとなっていた。


「俺が盾で止める。そしたらふらふらするから、そこを棍棒でぶん殴れ!」

「気持ち悪い虫だと思って一気に行くんだぞ!」

「そら来た!」


 ――ピチ♪


「うらぁ!」


 ――コンッ♪


「えーい!!」


 ――ポコっ!!


「「「やったぜ! カヌレちゃん!!」」」

「や、やったー♪」


 番人君、出遅れてるよ?

 どうやらカヌレはカヌレで、私が居ない間、宜しくやっているらしかった。

 元OLなプルーフィアは、カヌレの事をちょっと心配しています。

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