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洞を穿ちて察するが如く 氷の解けるが如く  作者: みれにあむ
第一部 王国記篇  第三章 神罰の雷《いかづち》
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(50)鳥の洞窟 ~管理ダンジョン~

 道で小学生を見掛けると偶に頭を抱えてしまいます。私はこんなちびっ子を主人公にしてしまったのかと……。

 近付いてくるとんがり屋根の建物は、鳥の洞窟が管理ダンジョンである事を示している。

 つまり、この建物はダンジョンに入ろうとする外部の魔獣に対する防壁でも有る訳だ。

 尤も、初めて管理ダンジョンに潜る人達は、想像とは違うその有様に戸惑いを感じるのは確実だけれど。


 三角屋根の建物に入れば、其処には木道から続くぽっかり地底へ向かうスロープが。

 輝煌石の灯りが一定間隔で設けられていて、照らし出される洞窟の壁面がダンジョンという異界に呑まれ行くのを感じさせるけれど、幅広になったスロープと行き交う一般人がその光景を完全に観光地へと変えている。

 流石にカヌレには降りて貰って、手押し車はスロープに。

 鳥の洞窟と言うだけ有って、奥には高く広い空間が広がっているから、他のダンジョンよりもスロープで降りる距離は長くなる。

 その広場まで降りているこの通路も結構広々としているけれど、広場に出て目の当たりにするその光景は思わず圧倒される。

 まぁ、広場まで出れば急角度の階段にも分岐しているから、急ぎの人は皆そちらを使って上り下りしているけれど、此処まで来れば階段もスロープも差は殆ど無い。私とカヌレはのんびりスロープで降りていく。


「いつ来ても迫って来る感じが凄いですねぇ~」

「のんびり出来るのは管理ダンジョンだからよ?」

「それなら、ショーの御蔭ですねぇ♪」


 いや、私は提案はしたけれど、その後はお父様達が動いた御蔭だ。

 でも、ちょっと照れ臭くなって頬を掻く。


 そんな鳥の洞窟も一階層目の底まで降りれば、壁際には探索者ギルドの建物が並び、買い取りの他に簡単な食事も取れる様になっている。

 テーブルやベンチが並び、完全にフードコートか何かだ。座って居る人も探索者っぽく無い人が半数近い。

 一際長い列を作っている場所には、実はシムビス様の神像が置いてある。これは私が手を出した案件だ。


 管理ダンジョンなんて言っても、何か稼ぎが無ければ財政を圧迫するだけである。

 特にグリムフィード領は魔石が通貨の替わりとなっている。つまり、ダンジョンと言う造幣局が、領主の思惑関係無しに新札を刷りまくっている様な物だ。領主が税なり何かの形で回収しないと破綻するのは見えている。

 しかし、探索者から直接魔石を回収する手立ては限られている。フードコートも或る意味その一つだ。

 管理ダンジョンに入場料を設けようかという話も有ったそうだが、それをすると一般の人の客足も遠退くだろう。ダンジョンで僅かなりとも一般大衆の力を底上げし、或いはダンジョンに興味を持って新探索者となる者を増やそうとした目論見からも外れる事になる。


 そこで私は探索者達が気前良く稼ぎを捧げる事が出来る様に、あのシムビス様の神像を造った。

 数多くの戯れる神像達を捧げ物にして私がシムビス様に願ったのは、祈れば自身の鑑定結果を見る事が出来るシムビス様の像だった。

 通常シムビス様の祝福を得て鑑定が使える様になるには、私が知る限りでは売り物になる自作の製品を捧げなければならない。尤もこれは生産の神としては確かにと思うけれど、商売の神としては少し条件が厳しいと思うので、他にも何か方法は有るのかも知れないけれど。

 その辺りの条件を全て取っ払って、魔石を寄付して祈れば鑑定結果を視れる様にしたのだ。


 但し、鑑定出来るのは最初に神像を設置した場所で、神像を持ち出したなら神像に付与された祝福は消える。そして視れる鑑定結果は、その人に理解出来る情報となる通常の鑑定とは違って、ABCの記号で大まかに、しかし客観的に見比べられる様に基準を統一する。期間は一年間で、それを過ぎたら新しい神像と捧げ物を用意する。そう言う条件にした。


 そんな祝福の掛かったシムビス様の神像を、伝説の商人シムビス様の像として各管理ダンジョンに設置すると、維持に必要な費用はあっと言う間に集まったそうだ。

 それも当然だ。寄付が結果に影響しないと言われていても、験を担いでそれなりの魔石を寄付する者は後を絶たず、そして思わず響めきが起こる様な鑑定結果を叩き出す探索者というのは、それだけ稼いで余裕が有るから寄付も多くなる。結果、それに(あやか)ろうと、燻っていた探索者達の寄付も多くなる。


 実際は私もそこまで上手く行くとは思っていなかったから、叩き出された結果に戦かれたのは心外だったけれど、今の所このシステムは旨く回っている。

 無理をして死んでしまったり引退する探索者も減った。

 きっとそれには階層毎の魔物の実力も貼り出される様になったのが、大きいかも知れないけれど。


「今日は三時間の予定だけど」

「私の事は気にしなくてもいいですよ? 適当にうろうろしてますから」


 カヌレがそう言うので、店には寄らずに私は二階層へと向かった。

 カートはカヌレの椅子兼荷物入れだからここに残していく。

 行ってらっしゃいの声を背中に受けながら、私はぐっと足に力を入れて走り出す。

 小鳥の鳴き声の響く、鳥の洞窟の中を駆け抜ける。



 鳥の洞窟の一階層は、体育館よりは広くて、グラウンドよりは狭い感じだ。

 その一階層と二階層の間も、入り口との間程では無いけれどスロープで結ばれている。

 二階層も一階層と広さは余り変わらない。店は無くて、巡回する兵や騎士に探索者が居て、次の階層へ進む手前には検問が有る。

 ここには訓練しながら思い思いに過ごしている人達が多い。

 鳥の声は、一階層よりも少しだけ騒がしい。


「レコンさん! ランクD受かったよ!」

「おお! やったな! でも無理はするな」


 顔見知りの兵士に声を掛けて、検問を通る。

 三階層へ向かう洞窟にスロープは設けられていない。

 私は飛び跳ねる様に、岩の下り道を降りていく。

 擦れ違う探索者達が目を瞠るのを見て、「歩法」を頼りに足音を消し、気配を消す。

 そんな事を出来るのも、「歩法」のスキルに従えばチュートリアルの様に正しい技法が分かるからだ。

 全く治癒ポーションも同じ形になる訳だね。


 ぴょんぴょん跳ぶのに使っているのは、彫刻で得た立体感覚を魔術でアレンジした周辺空間把握みたいな感じの感覚と、様々なスキルにおまけの様に付いている身体強化&操作系の力。それがイメージ通りに体を動かすのに随分と役立っている。

 勿論それらが本職な運動とか体術のスキルの力は大きいけれど、塵も積もれば的に全てを統合してアレンジ出来るのは、魔術師としての力が大きい。

 魔術師と言っても一から魔術を組むのは大変だけれど、既に有る魔法やスキルをアレンジするのはお手の物だ。


 三階層に降り立ったなら、虚空蔵屋敷から私の得物を取り出す。

 通路で戦いが出来るとは思っていなかったから、もし魔物に襲われても無属性魔力で追い払って逃げる事を考えていた。

 得物もダンジョンを行くのなら十フィート棒でも欲しい所だが、実際にそんな長物は取り回しも容易では無いと、六尺棒を二つ用意している。

 繋げれば大体十フィートだし、アタッチメントを付け替えれば槍にも鎌にもなる万能道具だ。アタッチメントの種類も豊富に用意済み。

 そして鳥の洞窟で用いるなら、六尺棒に大型の蠅叩きを取り付けた、長柄のラケットが役に立つだろう。

 つまり六尺約二メートルのラケットと、(とど)めを刺す為に同じ長さの短槍を準備する。短槍と言っても私の体格だと普通の槍と遜色ない。

 それらを無属性魔力の手に持たせて準備は完了。魔力が見えなければ、私の横に槍とラケットが浮かんでいる様に見えるだろう。


 三時間の制限で、何処まで行って帰って来れるだろう。

 さぁ、ここからは時間との勝負だ!

 でもほら、転生して行動しない主人公も居ないよね? だから、これでいいのさ!

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