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(5)洞をうがちて察すれば

 五話目だっしゃー!!

 そして再びプルーフィアとして考えてみたわ。

 するとやっぱり直ぐにでも家族仲を取り持たないと、私の望みは叶わないと思ったのよ。


 そうね、まずは何が問題になっているかを明らかにするの。

 これは事象と言うのよ。

 今回の場合は、お母様が私を愛して下さらない事――いいえ、お母様の心の中なんてまだ分からないから、お母様が私と係わるのを避けている事かしら?

 これを解決するべき課題に置いて、どうしてそうなったのかを考えていくの。

 今迄も私はメイド達に聞いてたけど、ちょっと今は自分の頭で考えないといけないわ。

 その手の手法が発展していた前世でだって、偉い大人の人が何日も頭を悩ませていたんだから、ちょっとこれは大変なのよ?

 でも、今これを解決に向かわせられるのは、きっと私だけなんだから、ここは頑張らないといけないのよ。


 そうね、全く関係無さそうなのは、始めに省いてしまうのがいいわね。

 お母様には私に近付けなくなる呪いが掛かっているとか、私と係わらないように脅されているとか、そういう今の私にはどうしようも無いのは置いといて、今はお母様の感情に起因する分だけ考えるの。

 いえ、もう少し省ける物は省ける様に、情報はもう少し整理が必要ね。


 お母様が変わってしまったのが私を産んだ時なのは確かだけど、どうにもね、私にだけ態度を変えた訳じゃ無いみたいなの。

 一番上のジャスティンお兄様はもう十一歳になっていたから中学生くらいだし、その次のアドルフォお兄様は九歳と言ってもどちらかと言えばジャスティンお兄様に付いて回っていたらしいから、お母様が態度を変えてもそれ程影響は無かったみたい。

 でも、当時六歳のヴァレッタお姉様は、突然他人の様な態度を取り始めたお母様にショックを受けて、わんわん泣いて暮らしていたそうよ。

 それをお兄様達が宥めて、お母様にもきつく批難したり遣り合ったそうだから、お姉様はすっかりお兄様っ子になって、お母様にはその分白けた視線を向ける様になって、お兄様達はお母様から懐疑的に距離を置く様になった。

 私はお兄様達やお姉様にちゃんと可愛がられて育ったけれど、どうしても記憶に残るお母様の愛情を求めずには居られなくて、それをお兄様達からは憐れまれて、お姉様からは呆れられた。

 人は一人で生きるものだと、何処か達観してしまったお姉様だから、お兄様達が学園に通う為に王都へ行った後は、私は殆ど放置される事になった。

 お父様が呼んだ教師に学ぶ時以外は、私は好きに散策して、メイド達を論破して、時にお姉様の部屋へ潜り込んでそこで時間を潰した。

 お姉様はそんな私の頭を無言でぐりぐり撫でくり回して、何も言わずに自分の机に戻って自分のやる事をやっている。

 それが私の日常だった。ええ――そうだったのよ。


 思い返してみれば、何処の世界でも姉の振る舞いは変わらないのねと思いつつ、それを言うなら本当に前世を含めて私の家族は問題ばかりねと嘆かないといけないのだろうけど、でも、今回はまだ取り返しがつく筈なのよ。


 整理した情報で、どうしてお母様が私と係わるのを避けているのかをもう一度考えてみるわ。

 一つ目として考えられるのは、お母様が私を嫌いになったから。

 でも、これはちょっと違うと思うのよ。

 私が嫌いだからお姉様の事も嫌いになるの? 何だかちょっと違和感が有るわ。

 もしかしたら私が生まれた時にお父様が何かとんでもない失敗をして、お父様の事を大嫌いになっていたら、私の事もお兄様達の事もお姉様の事も嫌いになるのかもとは思うけど、そんな態度にも見えないのよ。

 お母様が私に対して緊張しているのは丸分かりだから、やっぱり私に対する何かが有ると思うのね。

 寂しいからでも無いとするなら、やっぱりお母様は何かを怖がっているんだと、私は結論付けたのよ。


 そうなると、次は何を怖がっているのかって話になってくるんだけどね、魂と繋がるその前は、それはお腹を切り裂かれた死の恐怖だとずっと思い込んでたわ。

 でも、今考えるとそれだとちょっとおかしいのよ。

 そういう怖さを感じていたなら、お母様はきっとお腹を護る素振りを見せていた筈だわ。

 けれど実際には、お母様は寧ろ知らん振りするみたいな態度を取っていたのよ。

 そういう諸々を合わせて、お母様は何を怖がっているんだろうと考えて考えて考えて、もし私がお母様の様な態度を取るとしたらどんな時だろうと考えて考えて考えて考えた結果得た結論は、思い至った次にそんな訳が無いと自分で否定してしまう様な内容だった。


 お母様は、悪い事をした罪の意識にずっと縮こまっているの?


 例えば私がお父様の大切にしているカップを割ってしまったなら、きっと同じ様な振る舞いをしてしまうと思う。

 でも、そんな事って有る? お母様が叱られるのを恐れる子供と同じだなんて!?


 そうは思っても、他にお母様が怖がる事が思い付かなくて、そしてもしそうならと考えると他の事も色々と説明が出来てしまうのよ。

 お母様は何らかの罪の意識で私と向き合う事が出来無くなっている。そんなお母様がお兄様達やお姉様と触れ合えるのかと言えば、やっぱり私と触れ合う事も出来無いのにという罪の意識で触れ合えたりは出来無いに違い無い。

 そしてそれがまた罪の意識となって、お母様に伸し掛かっているのよ。


 そうすると何がお母様に罪の意識を感じさせているかだけれど、う~ん……こればかりはお母様で無いとはっきりとは分からないわね。

 私が生まれた時に私を怖がってしまったとか、私を抱き締めるのを拒絶してしまったとか、そういう所に有るんだろうけど。


 そもそも本当なら、お父様がお母様をしっかり抱き締めて宥めていれば、お母様だってあんなに思い詰めた感じには成らないと思うのよ? お母様が罪の意識を抱え込んでしまっているというのが正解だとしたらだけど。

 心の底から信頼出来て、何でも打ち明けられる人が居るのなら、きっとその人が支えとなって立ち直れると思うわ。そういう人は私には居なかったけれど、前世で見た本には大体そういう事が書いて有ったもの。


 お母様にとって、お父様はまだ信じ切れない人なのかな。今世のお父様は、前世のそれとは違って、突然激昂して腕を振り上げる事も無いし、酷い言葉を吐き捨てる事も無いし、いいお父様だと思うのに。

 それともそういう物と思っていたけど、やっぱり貴族でも夫が他の女性とも子供を作っていたりするのは、殴られる以上の屈辱なのかしら?

 そうよね。前世なら――う~ん、近代までは色街に出掛ける旦那様を奥様が送り出したりとかも聞く話だけど、でもやっぱりいい気はしてなかった筈よ。


 でも、お父様がお母様を愛しているのは確かなのよ?

 だって、だって……――そうよ、お父様はお母様の事を、ユイリーローズ園の女神様と呼んで恋い焦がれていたんだから!



 ……あれ?

 ぱっと頭に浮かんだそのフレーズは、プルーフィアが知らない筈の情報なのよ?

 何故か赤石祥子が知っていたその情報に、私は折角色々と考えた事が、白紙に戻されたのを感じとったのよ。

 なぜなぜ分析始まるよ(^-^)♪

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