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洞を穿ちて察するが如く 氷の解けるが如く  作者: みれにあむ
第一部 王国記篇  第三章 神罰の雷《いかづち》
49/95

(49)鳥の洞窟へ

 鳥魔法使いたいねぇ。

「行ってらっしゃい♪」


 という明るい声に見送られて、まずは南北を貫く大通りへ、大通りへ出たら魔境へ向かって南へ真っ直ぐ。


「は~や~い~♪」


 いつも楽しげなカヌレは、ショッピングカートの籠が椅子に成った感じの手押し車に座って、歓声を上げている。

 当然自作。カートの後ろにはキックボードの様に乗り上がれる様にしているから、数回地面を蹴ってはカートに乗って、馬車を追い抜き疾走する。


 うん、ちょっとだけ嘘を吐いた。

 無属性魔力で押しているから、実は乗りっ放しでも問題無い。

 自作と言うにも簡単な、車輪の付いた台車に椅子を取り付けたのと何も変わらない代物だった。


 でも、カヌレと一緒にダンジョンに行くなら、こういう乗り物が欠かせない。これに乗って行ったとしても、どのダンジョンも一時間以上掛かってしまう。行き来する人の多い朝や夕方なら、これに乗っていてももう駄目だ。

 昼から行くならカートを使って漸くダンジョンに三時間潜れるかどうかという所だろう。


「ねぇ、これからはダンジョンに入り浸りになるし、カヌレはお留守番にしない?」

「駄~目~で~す~♪ ショーは無茶をするから一人で行かせられません~♪」

「それならカヌレも探索者に成ればいいのに」

「無~理~♪ ショーが絶対に守れるって言うなら別かも知れないけどね~♪」


 それを言われると、まだ無理だ。仕方が無いけれど、ちょっと悔しい。


 領都グリームの南の端は、魔境から迫り来る森を背後に、探索者ギルドに関係する建物が門の様に聳え立っている。

 買取所と販売所。もしも森のダンジョンが溢れたとしてたら、実際にこの建物が防衛ラインとなり、補給しながら魔物を討つ事になるのだろう。

 既に顔パスに近いけれど、私は登録タグを、カヌレは一般開放講習の修了証を門番に見せて、魔境へと足を踏み入れる。

 私のタグを見た門番が、おっと言う顔をして、にやりと笑って見送っていた。


 森の中に入ると、管理ダンジョンまでは湿原に有りそうな木道(もくどう)が設けられている。

 つまり、カートも走れる。

 偶の隙間は無属性魔力で乗り越えて、舵も無属性魔力を当ててカートの向きを変えて、ブレーキも当然無属性魔力で。カヌレのシートベルトも勿論無属性魔力だ。

 時々私のカートに妬ましげな視線を向けている探索者が居るけれど、盗られた所できっとその後には盗人共々森の中に転がっているのが見付かるに違い無い。


「今日は鳥の洞窟?」

「そうだね。鳥魔法は最優先で覚えたいからね」


 私はカヌレの問い掛けに、そう、これからの予定を口にしたのだった。



 ダンジョンで得られる固有魔法とは何だろう?

 スキルとは何かが違うのだろうか?

 その問いに対して、私はこの五年で一つの推測を立てている。


 まずは普通のスキルについて整理してみよう。


 私のスキルを鑑定で調べると、確かにそこには彫刻のスキルが有った。

 特にスキルを意識しないまでも、リダロッテさんの小物屋に数百、数千、数万と納める中で、どうやら熟練度は止まる事無く積み上げられていたらしく、それで新たに得た派生スキルが「荒割り」である。

 (のみ)をコンと一打ちするだけで、不要な角を纏めて落とす事が出来る無茶な技だ。


 荒割りのスキルを得て、それで気が付いた。スキルは魔法と同じで、魔力を用いて何かしらを為す技なのだと。

 ここで言う魔法とは、鳥魔法に代表される様な、言ってみれば魔力を込めてコマンドを選択すれば発動するコマンド魔法だ。私は結局魔術で火や水を出していたから気が付かなかったけれど、生活魔法も使ってみれば、コマンドで発動する魔法だった。

 そして、「彫刻」自体もスキルには違い無い。もしも私の予想が外れていないならば、彫刻のスキルを使うと、魔力が何かをする筈だった。


 実際問題として、私の場合目立ったスキルを手に入れる前に魔術師として目覚めていたからか、「荒割り」を得るまではスキルを発動する感覚という物が良く分かっていなかった。「荒割り」を得てから漸くそれが強く念じて発動するコマンドだと分かったのだ。

 それと同じ様に「彫刻」を強く念じながら真っ当に鑿と鎚を振るってみれば、魔力での身体強化的に正しい姿勢と道具の扱い方へ矯正する様な力が働いていた。


 うん、御免。気持ちは分かるけれど、それが有ったとしても真っ当な遣り方じゃ五歳に彫刻は無理だったんだ。


 でも、これがスキルの仕様ならば、その求める所は明白だ。根本を探れば、()()()遣り方で、()()()世の中を発展させていく事を望む、神々の意図が透けて見える。

 私の様な初めから応用を利かせてしまう相手は、神々にとっての想定外。料理法を知らずに適当に味付けする飯不味が如き邪道に見えたに違い無い。


 その裏付けとでも言う様に、魔術は使わず素直にスキルに従う様に手を動かせば、それを待っていたかの様に幾つもの派生スキルが手に入った。

 その勢いは怒濤の如く、そして変化は急激に。だからこそ、スキルを得てのボーナスの意味にも気が付いた。


 原作世界の他の地域では、TRPGのキャラクターシートやゲームのステータス画面的にそれぞれの能力値が理解されていたから、私もそれに引っ張られてしまっていたけれど、同じく引っ張られてしまっている私の鑑定で器用値だとかが数値で見えたとしても、それは単純に数値で理解出来る物では無い。

 筋肉だって三角筋だとか上腕筋だとか部位によって種類が有ったのだ。筋力値だって数値で表せられる物では無い。

 知力値だって同じ事。

 前世を憶えている私ならそれは当然の事だったのに、原作世界のファンだったからこそ引っ張られてしまったのだろう。

 まぁ、仕方が無い事だ。


 そんな事に気が付かされたその怒濤のボーナス祭りで何が起きたかと言えば、真っ当に鑿を鎚で一打ちする度に感覚が弾け、一打ち毎に何処にどんな力加減で鑿を打ち込めばいいのかが研ぎ澄まされていくその異常。

 打ち込む程に完成品の姿が精密に脳裏に浮かび上がってくるその不思議。

 鑿の刃先に力が溜め込まれているのを感じながらの一打ちで、脳裏のイメージ通りの切断面を見せて石は割れた。

 私は既に「荒割り」を得ていたからその時新たにスキルを得たりはしなかったけれど、それが恐らく真っ当な手順での「荒割り」を習得するタイミングだったに違い無い。


 つまり、熟練度を上げて研ぎ澄まされる感覚や力という物は、次の段階のスキルに必要な感覚や力を、神々の設定した条件に従って前振りされている物なのだと思う。

 熟練度を百上げれば次のスキルを使える様にしよう。そのスキルに必要な動作を完璧になぞっているなら熟練度を一動作で二十上げよう。下手糞でも頑張っているなら熟練度は一上げよう。全く正しい動きからは外れていたとしても、関係する動作をしたならコンマ一上げよう。

 そんな感じのルールが有るのでは無いだろうか。


 私は全く関係無い動きで「荒割り」を得て、そこから正規の方法に立ち返るという謎のムーブを決めたけれど、逆に言えば神々が決めた手順に則らなくても何とかなるという確証を得たとも言える。

 まぁ、それは今の所、置いておこう。

 私にとって有用なのは、スキルの導きに従えばより効率的に新たな派生スキルが手に入るという事だ。


 彫刻で得た「荒割り」に関わる感覚は、裁縫における「裁断」の役には立たない。

 逆に言えば「荒割り」も「裁断」も出来る様になっていれば、それだけ多くの状況に対応する事が出来る。

 多くのスキルを手に入れれば手に入れる程に、私は万能に近付いていくだろう。

 何故ならスキルも結局の所は魔力を繰る魔法だから、魔術で再現も応用も出来るのである。

 魔法を解き明かして魔術として再構築する。それこそが魔術師の真骨頂に違い無い。


 鳥達の奏でる歌が響く木道の終わりに、とんがり屋根の建物が見えてきたのを目で追いながら、私はそんな事を考えるのだった。

 冒険者になるのです×3が結局更新出来てない。時系列でこの日までにこれをやって~って組み上げている所なので、もうちょっと待ってね。て、予約投稿が回ってくる前に上げられてるかもだけど。

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