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洞を穿ちて察するが如く 氷の解けるが如く  作者: みれにあむ
第一部 王国記篇  第三章 神罰の雷《いかづち》
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(43)ランク分け試験

 ち……チートにはしないんや!

 ショウ達新人探索者は、探索者ギルドの訓練場へと来ていた。

 二百メートル四方は有りそうな広い敷地には、的や木人が並び、一部には屋根が架かって、訓練用の刃引いた武具が並べられている。

 ショウ達の前に立つのはピスケッタでは無く、ギルド専属探索者のオルカスとザメルだった。


「よ~し! それではこれよりランク分け試験を始めるぞ! 既に聞いていると思うが、二年前に管理ダンジョンが整備されたのを機に、探索者を力量毎にランク分けしている。ランクAは冒険者としての力量を持つと認めた者、ランクBは特に活動に制限を設けない普通の探索者、ランクCは管理ダンジョンならソロも可だが非管理ダンジョンではパーティ推奨、ランクDは管理ダンジョンのみで十階層以上はパーティでの探索許可、ランクEは管理ダンジョンのみで十階層までの許可、ランクFは管理ダンジョンのみで十階層まででパーティでの探索許可、ランクGはランクFの条件に加えてパーティに一人はランクE以上を含まなければならない。

 ランクGは講習での試験が余っ程出来が悪く無い限り付けられる事は無い。大体がランクEかF、優秀な者でランクDだ。

 ランクDまでは納品物の実績でもランクは上がるが、ランクCになると非管理ダンジョンの探索許可を含むからな、ランクアップ試験には試験官が実際の探索に付いて行くぞ。ランクAとBはギルドからの指名依頼を出す目安だから諸々加味して決めていると思ってくれ。

 ランク分け試験では、探索から無事に帰って来れるかどうかを見る。まぁ、魔物を斃す力は重要だな。……ダンジョンで魔物と出会った想定で俺と対峙して貰おうか。

 さぁ、誰から来るかい?」


 その場に説明していたオルカスが残り、ザメルが脇へ引っ込むと、勢い良くガルダー少年が名告を上げる。


「俺だぁあああ!!!」


 にやりと笑ったガルダー少年がオルカスの前で訓練用の剣を構えると、右手に盾、左手に剣を持ったオルカスが、前触れ無く左手の剣を大きく左に振り上げてから、刈り取る様に大振りに振る。


「見えてるぞぉおおお!!!」


 両手持ちした剣でそれを受け止めたガルダーを、しかし容赦無く突き出されたオルカスの右手の盾が弾く。


「ぐはぁっ!?」


 そして体勢を崩したガルダーを、再び横に振り上げられた剣が襲う。


「ぎゃひ!? そっちだけ盾を持つなんて卑怯だぞ!!」


 いや、持っている訓練用の武具は自分で選んだ物だ。

 ガルダーは剣はしっかり受け止めて、しかし盾には弾かれて、何度も転がされては立ち上がり果敢に攻め立てたが、最後は疲労困憊で立ち上がる事も出来無くなった。


「ふむ……判断に迷うな。ランクGと言いたい所だが、突出しないでリーダーの言う事を守る事を条件にFだな。当然お前がリーダーを務めるのは無しだ。

 理由は後で纏めて説明する。

 では、次!」


 その後は、三人組の少年達がそれぞれ名告りを上げて続いた。

 流石にガルダー少年よりも三つ年長の彼らは、態と拙く剣を振るオルカスに付いて行ったが、その後ろ頭には脇に引っ込んでいたザメルが投げたボールが当たり、容赦の無い死亡判定を受けていた。


「ランクFだな。十階層迄で良く訓練し、奇襲に反応出来る様になればランクDには直ぐに上がれる様になるだろう。索敵や気配察知が今後の課題だな」


 同じランクFでも、ガルダー少年とは随分と寸評が違っていた。

 そしてその次に、少女二人組が手を挙げたのである。


「「えっと、私達は二人一緒で」」


 それは有りなのかと既に試験を受けた者達が騒めく中、オルカスはにやりと笑って了承する。


「いいだろう。但しその場合はソロでの力量は分からないから、どちらにしてもランクF以下だぞ?」

「それでいいわ!」

「構いません!」


 そんな遣り取りに、騒めいていた男子達も鎮まったが、試験が始まると三人組は頭を抱えるのだった。


 少女二人はまずオルカスに近付く事すらせずに、直ぐ目の前の空間を両手でなぞる様な動きを見せて、


「ここに岩が有ります」


 との宣言の後に、その後ろに隠れる様にしてオルカスを覗き見たのである。

 ちょこちょこ覗いて、ケニッカ少女が拾った小石をオルカスの右後ろに投げる。

 オルカスは小石が音を立てた方へと体の向きを変え、その隙にそれぞれ盾で身を隠した少女二人が、オルカスの後ろを回り込んで先へ進もうと動く。

 さっとオルカスが少女二人に体の向きを変えると、わたわたしながら元の岩場と想定した場所に戻る。

 飛んで来たザメルのボールをミリア少女が盾で弾く。


「くっくっくっ、ランクFだ。但し、二人の場合もパーティと認め、十階層に到達した時点でランクE扱いで良いだろう。

 お前達も見ていたならその理由は分かるな?

 では、次で最後だな。来い」


 そんなオルカスの言葉を聞きながら、頭を抱えていた少年三人組はぐったりした様子で()ちる。


「無いわ。確かに知らない魔物に正面から向かっていくなんて、無いわ……」

「同じFでも完全に負けた気がする! 三つも歳下の女の子に!」

「って、これは後の奴の方が絶対有利と違うか? もしかしてそれも含めて先に行ったのが間違いだった?」

「本当、最後の奴は儲け物――って、彼奴!? 見てたのと違うんか!?!?」


 少年三人組が驚愕の視線を向けるその先では、ショー少年が気取らない様子でオルカスへと向かって足を進めていた。手には訓練用の槍を持っている。

 半分程足を進めた所で、ショー少年は驚愕を顕わにしてオルカスの右向こうを見る。

 オルカスがふと視線を揺らした時には、ショー少年は殆どその身を地面近くにまで沈めて、盾が邪魔をしてオルカスから死角となる場所へと疾走していた。

 死角にその身が入った途端、手で掬い取った砂を盾の右上へと撥ね上げる。

 それを盾が追ってしまった時には、ショー少年は音も立てずオルカスの背後に回り込んでいて、訓練用の槍がオルカスの盆の窪に触れているのだった。

 さっと離れて様子を窺っているショー少年。

 ザメルがボールを投げる隙も無い。


「くぅ…………ランクDだ」


 オルカスにそう告げられて、漸くショー少年は槍を下ろす。

 見ていた少年少女から「凄い」との声が上がる。


「あー……やりやがったな、此奴め。説明するから一緒に来い」


 そう言ってショー少年を誘い共に歩いていたオルカスだったが、或る場所で隣に居たショー少年を強く押し遣ろうとして――逆にショー少年に引っ張られたオルカスが、膝丈程の落とし穴に足を踏み入れた。

 ショー少年は落とし穴の向こうで笑っている。


「何で! お前は! 落ちないんだよっ!? あー、糞! ランクD確定だ!」

「あはははは、見え見えだよ。もっと旨くやらないと」


 オルカスはそんなショー少年を見ながら、深い溜め息を吐くのだった。

 ガルダーは只のお馬鹿でざまぁとか絡む相手で無いよ。愛すべきお馬鹿に出来ればいいなと思っている。

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