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洞を穿ちて察するが如く 氷の解けるが如く  作者: みれにあむ
第一部 王国記篇  第三章 神罰の雷《いかづち》
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(41)探索者登録

 章題は縦書きPDFに反映されないからここに書くよ。


第一部 王国記篇  第三章 神罰のいかづち

 秋をもう直ぐ迎える或る闇の日の昼過ぎ。

 探索者ギルドの新規登録窓口に姿を現した少年は、登録用紙を手に窓口の職員を見上げていた。

 その少年を見下ろして、職員は暫し動きを止める。


 二年前にグリムフィード領に在る探索者ギルドは体制を大きく変え、十歳を過ぎれば探索者としての登録が出来る様に成っている。

 但し、八歳から入れる一般開放されたダンジョンで、駐在している騎士か領兵か冒険者の認定を三つ以上貰わないといけない決まりだ。

 資質も体の成長も人それぞれだからこそ設けられた決まりとは知っているが、目の前の少年はその趣旨に反して、寧ろ漸く八歳になったばかりの様に小さい。


 職員は愛想笑いを浮かべながら差し出された登録用紙に目を落とし、そこで「あ」と声を上げて顔の強張りを解いた。


「ああ、君がショー君か。確かに認定印が…………うん、まぁ、三つ以上だな。講習は二時から二階の大会議室だよ」

「有り難う。これから宜しくね」


 声もまだ可愛らしく、しっかり着込んだ革鎧が丸で似合わない。

 しかし耳に聞こえる噂を信じるなら、あれで中々兵士や現役の探索者が梃摺る程にはしっこいらしい。


 丁度ダンジョンが一般開放された二年前から、殆ど毎日母親らしきメイドと一緒にダンジョンに入り浸っていたと聞いている。その時八歳になったばかりだとするなら、確かに計算は合うだろう。

 週毎に入るダンジョンを変えて十二のダンジョンを満遍なく。観光もしていたのかも知れないが、手隙の監視人を見付けては教えを請い、立ち止まる事無く駆け回っては出現する魔物を残らず刈り取る勢いだったらしい。


 つまり、あの小さな少年は探索者に成る為にダンジョンで訓練していたのだ。それも二年間、殆ど休む事も無く。

 事実、認定印は三つで良いというのに、用紙の隙間を埋めるかの様に十二の印が押されていた。十二のダンジョンで一つずつ。認定印の脇には、押した人間のサインと日付も書き込む事となっているが、数えてみればそちらは十二を遥かに超えていた。


「ピスケッタさん、何にやにやしてるんですか? 珍しい」

「む、笑ってたかい? ふふ、確かに笑っていた様だな」

「本当に珍しいわね。面白い新人でもやって来たの?」

「ああ。――そうだな、認定印の台紙は確か登録用紙と一緒に保管していたな。あれは本人に返しても良いとは思わないか? 登録してしまえば不要だろう?」

「はぁ……でも、本人も欲しがるかなぁ?」

「いやいや、これはどう見ても記念品だろう? ――おっと、丁寧にな。持ち主にとっては宝物だぞ」

「お? お~……おおお!?」


 同僚の驚愕をその目にして、ピスケッタは声を上げて笑うのだった。



 そんな窓口の遣り取りも知らず、二階に上がった少年ショーは大会議室の扉を開ける。

 二時まではまだ三十分近く在ったが、大会議室の中には既に六人程の姿が見えた。


 ショーと同じく十歳に成ったから登録しに来たと見える少女が二人。

 体付きはがっちりしていても子供っぽさを隠せない少年が一人。

 学校の卒業を控えて時間を持て余している雰囲気をした年長の少年三人組。


 ショーも合わせると七人。新規登録の受け付けは週に一度闇の日と定められているとは言え、毎週これでは直ぐに探索者が溢れてしまいそうだ。

 実際に探索者の数は増えているとは聞いていても、きっと今日はその中でも豊作の日なのに違い無い。


 そう見て取ったか、ショーは適度に周りが空いた席へと腰を下ろした。

 背負っていた鞄を隣の椅子に置いて、メモを取る為の紙束を取り出した後は、別の紙束を取り出して何やら頻りに手を動かしていた。


 それが気に食わないのか、「ちっ」と舌打ちした大柄な少年が立ち上がり、ショーへと体を向けて言い放つ。


「おい、ここは探索者に登録する奴らが講習を受ける場所だぞ」

「ご丁寧に有り難う。偶々とはいえ同じ日に探索者に成るんだ。これから宜しくね」


 顔を上げて大柄な少年と目を合わせて一つ頷いたショー。

 しかし大柄な少年は目を剥いて、鼻から荒々しく息を噴いた。


「巫山戯んなよ!? お前、そんなんで探索者に成るつもりかよ! 探索者を舐めんじゃねぇ!!」

「ん? 十三歳に成る前で此処に居るんだから、君と同じで三人の認定を受けているよ?

 見た目で侮るなんて探索者らしく無いね。兵士希望なのかな?

 探索者としてやっていくつもりなら、前衛が居て、中衛が居て、後衛が居て、それとは別に斥候が居るものだよ? 斥候は小柄ですばしこくて気配を殺して動くのが得意な人に向いているね。

 君はまだ探索者を知らないみたいだから仕方が無いけれど、そんな態度だと腕のいい斥候は誰も仲間になってくれないから、気を付けた方がいいね。

 まぁ、罠みたいな魔物や、気配を殺して隠れている魔物、それから採取だとかを考えなくてもいいダンジョンにだけ潜るつもりなら構わないけど、それはやっぱり兵士を志望しているって事じゃ無いかな?」

「はぁ!? はぁ!? はぁ~~!?」


 期せずして、この遣り取りが二人のこれ以上無い自己紹介になっていた。

 片や脳筋――と言う程には体もまだ出来上がっていないから、この時点では只の馬鹿。

 片やその馬鹿を何気負う事も無い普通の遣り取りで封殺する俊英……の卵。

 態々“卵”と評を付けたのは、現時点で何も実力が分からないからだ。実力も無くこの振る舞いなら、卵も或る意味、種類の違う馬鹿に違いない。


 馬鹿の少年とは顔見知りだったのか、二人の少女は顔を見合わせてこそこそと喋り、三人組の少年達は何処か感心した視線を小さなショーへと向けている。

 ショー自身も既に視線を外して自分の作業へと戻った。


「ふ、ふ、ふん!」


 それを見て大柄な少年も、周りを気にしながら自分の席に戻ったのである。



 結局その後は追加の無いまま、講習の時間を迎えた。

 扉を開けて入って来たのは、新規登録の対応をしていたピスケッタである。


「うん、全員揃っているね。私は案内及び新規登録者担当のピスケッタだ。基本的には受付窓口の一番端で暇をしているから、何か質問が有れば訊きに来るといいよ。依頼の受け付けや採取物の買い取りは出来無いけどね」


 何処の世界でも同じだろうが、受付窓口が並ぶ場所に案内窓口が無いと酷い混乱を招く事が有る。

 それが無くても通常の買取窓口を担当しているのが見目麗しいお嬢さん達となれば、問い合わせの名目で居座ろうとする痴れ者が湧いて出る。

 それを躱す為にも、見目麗しくないおっさんが案内窓口に座っているのだ。


 尤もそれで痴れ者達が案内窓口に並ぶかと言えば、結局買い取りの(てい)を装ってお嬢さん方の窓口に並ぶのだが。


 今ピスケッタの前に雁首揃えるのは、そんな探索者の流儀に染まっていない真っ新な探索者達だ。

 探索者に成る少女も二年前から増えてきて、探索者の在り方自体が変化しつつ有る。

 その初々しい成り立ての探索者へと、ピスケッタはいつも通りの言葉を告げる。


「では、探索者で有る為の講習を始めようか」


 その声を掛けた時に集中する真剣な眼差しを、ピスケッタはとても気に入っていたのである。

 週一とは言ったが、書き上がったなら上げないとは言ってない。

 ……投稿する時間を変えたら別の時間帯を縄張りとしている人も取り込めるかな?

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