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洞を穿ちて察するが如く 氷の解けるが如く  作者: みれにあむ
第一部 王国記篇  第二章 三つの街と広がり行く噂
36/95

(36)金策

 導入と展開と結びとでの3話にするのが短く区切るこつ? う~ん、まだ良く分かんないね。

 あれから私は二日に一度は街へ出歩いている。

 初めの頃はお母様やヴァレッタお姉様とも一緒に出かけていたけれど、今は大体メイドのカヌレが一緒に付いて来てくれている。


 初めての街歩きの時に分かった事が一つ。

 私は街でお買い物をしようと思っても、お小遣いを貰っていなかったという事だ。

 お母様やお姉様は慌てていたけれど、前世でもお小遣いなんて小学一年生で月に百円、二年生になったら二百円、六年生で六百円で、中学一年生で千円とかそんなんだったから、五歳で貰えていないのに疑問は無い。

 まぁそんな額だとジュースを飲むだけでも無くなるから、大人になってから歯止めが利かなくなって雪崩を起こす程に本に注ぎ込んでしまったのだろうけれど。個人的にはそういう定額制では無くて、こういう事がしたいからお小遣いが欲しいというのを計画を立てて話し合えていたなら、もっと計画性とかそういうのが養われていたのでは無いかとは思う。


 ヴァレッタお姉様もその頃にはお小遣いなんて貰っていなかった筈なのに、何で慌てていたのかと聞けば、後ろめたそうにヴァレッタお姉様は六歳頃までお母様と一緒にお出掛けした記憶が有るからだと言われた。

 それはまぁ仕方が無いし、上げて落とされる方が辛いかも知れないし、もう終わった事だ。だから私は気にしない。

 でも、だからと言って連日の街歩きに二人が付き合えるものでも無く、三人一緒にお出掛けは大体が闇の日の休日だ。

 時々お父様や他にも色々加わるから、大掛かりになるのが玉に瑕だけれど。

 でもそんな日はヴァレッタお姉様も嬉しそうにしているから、まぁ時々ならいいかと思っている。


 何故って、そんなお出掛け用に装った領主一家の中で、私だけ古着で、髪も邪魔に成らない様に引っ括って帽子の中に入れ込んでいるから。

 私が主役の街歩きの筈なのに、場違い感が半端じゃ無いのだ。


 私が街歩きする時は、庭でのいつもの鍛錬が無しになる分、領館の在る丘の麓の門まで馬車道を走っている。丘を二周半しているから結構な距離だ。もしかすると庭を走るよりもきついかも知れない。

 そんな道を走るのだから、やっぱり服装は運動着替わりの古着で、内緒だけれど結構な頻度で転んでもいる。

 「癒し手」のスキルを貰えて、真面目に助かっている。

 魔術で洗って乾かせば、転んだ後も目立たない。

 今迄受け身はごろんと転がった勢いで、最後に畳を叩くものだと思っていたけど、最後じゃ無くて先立って叩かないといけなかったのかなとか分かってしまうくらいに転んでいる。

 もう確かめる事は出来無いけれど、もしそれが本当なら、それを指導してくれなかった先生には、ちょっと一言物申したい。


 因みに、馬車道の小石を取り除こうとするのは私が止めた。

 小石を避けて走る訓練にならないから、そんな事をされるといつか逆に大怪我をすると言って。

 館を出て真っ直ぐ門へ向かうカヌレやお母様達にはいつも負けてしまうけれど、いつか勝って「遅いわよ」とか言ってみたい。


 そんな訳で、私だけいつも古着。

 初めの数回は麓の詰め所で着替えさせられたりもしたけれど、私が自作の腰に着ける道具袋をカヌレに運んで貰う様になってからは、諦められたのか着替える事も無くなった。

 ドレスに道具袋、似合わない。古着に道具袋は違和感無い。


 だって館に居ても街を歩いていても、フォス様に貰った「死兆覚」が反応するのだ。

 余りの煩わしさに尖って危ない柵の先端や浮き石なんかの処理をしていたら、どうやれば熟練度を上げられるのかも分からなかった「死兆覚」の熟練度が上がったのだから、それは処理をして回るに決まっている。

 針や刃物は無属性魔力で創れるから、金槌や木槌、セメント袋に砂袋、木切れ、釘などを道具袋に詰め込んでいる。当然「虚空庫」と同じく使える「虚空蔵屋敷」にも色々と詰め込んでいるけれど、それは人目に晒せない。

 勝手に補修しているから、時々見咎められるけれど、危ないと咎めてぐっと睨み付ければ大抵向こうが折れた。

 序でにお菓子や果物を貰う事も増えた。

 まぁ、基本ぼっちだった前世とは違って、領民と交流する機会にもなっているのだから、胸を張って突き進めばいいのだ。


 でも、いつもカヌレと一緒に歩いているから、きっと若い奥さんと職人に憧れるその息子にでも見られているのだろう私には、その分、領主一家と歩く時には、不思議な物でも見る様な視線が投げ掛けられる。

 居た堪れない。

 でも、人の目を気にしたそんな要らない気を回すのは子供らしくは無くて、五歳までの環境や前世の記憶が悪さをしているのだとは分かっている。

 傲岸不遜や傍若無人が今の私の目標だ。

 まぁ、どれだけ頑張ってそこに近付こうと思っても、行き着ける筈が無いのが分かっているから据えられる目標だ。


 開き直ってその日は家族と散策する日と出来無いのは、私に付いたスキルが「運動」だったからだ。

 「訓練」や「鍛錬」とならなかったのは、強度が足りていなかったのか、それとも数日鍛錬をお休みした日が有ったからか。

 前世で盛んに言われた練習を一日休めば取り戻すのに三日掛かるというのは、スポーツ科学の面からも必ずしも正しくないらしいけど、でもスキルの取得条件と考えると連続何日休まず練習とか有りそうで止められない。

 それに、「死兆覚」を育てるのがいざという時の備えにもなるだろうから、街でだって道具袋は手放せないのだ。


 でも、本当は分かっている。そんな理由で言い訳しながら、私は自分が楽しいからそれをしているだけだという事は。

 生粋のプルーフィアなら今の状況でどんな行動を取るのか今となっては分からないけど、赤石祥子と一つになった今の私はゲーマー的にやり込み重視の方面へ舵を切ってしまっている。

 アクションゲームならBボタン押しっぱなしのタイムアタックに身を投じても、ロールプレイングゲームなら魔王そっちのけでモンスターが全てのレアアイテムを落とすまで次の場所には進まない、オープンワールドゲームならメインストーリーを進めずにサブシナリオばかり進めて満足する。

 そんなプレイスタイルの私からすれば、「死兆覚」という特殊スキルと、「木工」等の生産スキルと、それに伴う運動と、微力ながら街の整備と、更に領民との交流という好感度イベントを同時に熟す方法が有るのなら、そちらに気持ちが傾くのは仕方が無い。うん、仕方が無いのだ。


 家族との交流なら館で毎日しているし、特別なイベントなら他に誘惑の多い街中では無くて、ネイサン叔父様の家が在る湖の畔で魚釣りとかの方が私は嬉しい。

 自分自身の気配は殺して、水の中に居る魚の気配は掴みつつ、魚が食い付く様に餌を操るその技術。釣り上げた魚を捌いて料理するその手際。自分で釣った美味しいお魚を食べる喜び。掛け替えの無い家族との交流。

 うん。魚釣りはとてもいい。


 王国記でも、学園ストーリーは一通り見るしか遊んでいないくらいだから、私に人間相手の気遣いは期待しないで欲しいものだ。

 でも、そうしていると、ちょっと困った事も生じる事となった。


 初めの話に戻るけれど、私にお小遣いは無い。言えばカヌレが預かっているお金から出してくれるけど、無一文というのは心に来る。

 ほら、エリクサー所かハイポーションも使わずに、出来る限りポーションで済ませて、レベルがカンストした時に経験値増加の秘薬やら何やらが倉庫に溜まりまくっている人が、ティッシュやトイレットペーパーやミネラルウォーターを普段からダースで確保している人が、そんな状況に耐えられる筈が無いのだ。


 だから私は先立つ物を求めて金策に走る事にした。

 私が今持っている力で、対価を得るに十分な物。それで真っ当にお金を稼ぐ事は、商売の神シムビス様の御心にも適う行いだ。

 石はフィギュアに、木もフィギュアに、硝子もフィギュアに、他にも要望が有れば硬い物は何でもフィギュアに、そしてフィギュアはお金とならん。


「来たよー」


 その神秘なる金の泉はこのカランカラン鳴る扉の向こうに!

 私はしっかりと体重を掛けて、その直ぐに閉まりたがる扉を開け放ったのだった。

 カヌレは名前だけは出て来た、メイドの中でも生活魔法が使えるメイドです。

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