(35)外出許可
二章が終わったら週一更新にしよう。いや、本当。
「どういう事だ!?」
「どうしてそんな事に!?」
お父様とお母様が悲鳴の様な声を上げたのは、やはり「グラ森の挨拶」について。
つい正直に魔境へ行った事を話してしまったけれど、もしかして拙かっただろうか。
でも、こういう所で誤魔化したりはしたくない。
お父様とお母様には、ここぞとばかりにヴァレッタお姉様が話をしているけれど、ヴァレッタお姉様も実は結構言われるまでは忘れていたと思う。
もう二十日近く前の事だもの。
ネイサン叔父様も頭を掻きながら弁解しているから、私が何か話す必要は無いだろう。
「グラ森様もそうだけど、誰が大河にグラウプルと名付けたのかしら? きっとグラウプルの畔に在る森だから、グラ森とか名付けられたのね。そう言えば、スイラ様にはお祈りを捧げたけど、グラウプルにお祈りするのは忘れてたわ」
「お嬢様、大河の畔はどんな所でしたか?」
「凄い綺麗で、神秘的で、本当に神様が出て来そうだったわ! そしたら本当にフォス様が目の前に来てくれたの。とてもとても嬉しかったのよ!」
「フォス様?」
「死の神様よ? 死や老いの悪いイメージで人払いする事についての御免なさいと、私の魂を私の下へ連れて来てくれた事のお礼を言ったら、来てくれたのよ。クッキー上げたら頭を撫でてくれて、きっとその時に祝福も賜ったのね。
あ! 死の神様だからって怖がらないでね? 死んだ後に迎えに来てくれる優しい神様なのよ? 祝福だって死に繋がる危険を見える様にしてくれているので分かるでしょ?」
皆集まって喧々囂々としていて、家令とメイドしか暇にしていないから、その二人と私はのんびりお喋りをする。
因みにアクトー領から来てくれているジーゴさん達は居ない。まずは生活環境を調えるのの序でに、街を見に行っているらしい。
それに、魔境?
それは私が行く必要が有って、安全はちゃんと確保されていて、そして何より私が行きたかったから行ったんだ。
あの後にも呪われたダンジョンまで何度か行っているらしいアロンド叔父様に話を聞いたけれど、私以外の人が神様に祈りを捧げても、中々お供え物を受け取ってくれたり願いを聞き届けてくれたりはしないらしい。
それで何故かを考えてみると、属性神や土地神は、実は人の言葉が得意では無いのかも知れないという事実に行き当たった。
属性神や土地神は、人の世に人の姿を取って遊びに来る神では無い。何と無く手足が有る様に見せていても、水だったり炎だったり――森だったりする存在だ。
言葉が通じる筈が無い。
そんな神々にも祈りを届けようと思うなら、魂からの祈りを込めなければならないのだろう。
それが出来るのが真面な神官や巫覡であり、そして魂との合一を果たした魔術師もまた、その素質を持つに違い無い。
即ちあの時私を連れて行ったアロンド叔父様は正解だったのだ。
今は呪われたダンジョンの開発も、私が居なくても進められる様にと頑張っているらしいけれど、いつかまた私も魔境へ行くのだろう。
あの素晴らしい魔境の奥地へ。
ただ、そんな想いを誰しもが分かってくれる訳でも無い。
「プルーフィア! 何故そんな危ない事をしたんだ!」
私はお父様の方を見ない。
ネイサン叔父様が非を認めて謝ったのなら、今こんな風にお父様は私に怒鳴ったりしていない。
だから私は間違ってない。
「何も危なくなんて無いわ。少しでも危ない事が有れば、アロンド叔父様が私を連れて行く筈が無いもの。それに私を必要とするなんて相当切羽詰まっていたのよ? 領の一大事なんだから、私に出来る事が有るなら当然手伝いに行くわよ」
「それは大人がする事だ! 子供が気を回す事じゃない!!」
「違うわ。魔術師の私じゃ無いと駄目だったのよ。それは後から分かったんだけどね。ネイサン叔父様もアロンド叔父様も、そこは流石と言うしか無いわ。私が行ってなかったら、今頃全部台無しにされてたのよ」
お父様は、まだ私の言葉を聞こうとはしてくれないのだろうか。
まだまだおかしな考えが抜けてなくて、優先順位が狂った儘なのだろうか。
そんな私の気持ちも、無理矢理肩を掴んで引くその力に掻き乱される。
「話をする時は、此方を見なさい!」
「……!! そんな事言って、お父様こそ私を見ようとしないじゃない!
私は私の役目を果たしてきたわ! アロンド叔父様に護られながら魔境の森を抜けて、大河グラウプルの畔まで行ったわ! 立ち入り禁止を無視して乗り込もうとしている人達が居て、水の神様に助けて貰って追い返したわ! これからずっと人払いしてくれる様にもお願いしてきたのよ!
野営では蛇も食べたし、河の畔で美味しいお魚も食べた。名前の知らない森の神様が居る事も確かめたし、死の神フォス様は目の前に現れてもくれたわ!
大冒険よ? 大冒険をして来たのよ!
でも、街に戻っても、街の事なんて何も知らないわ! だって一度も行った事が無いもの! 今日一日でジーゴさん達の方が詳しくなっちゃったわよ!!
スキルにも「グラ森の挨拶」なんて有って、魔境の神様はグラ森の神様って分かって、どんなスキルか分からないけど祝福だってくれてたのよ? それで何を怒るのよ!?
魔境へ行ったのが悪かったの!? アロンド叔父様が護ってくれるって分かってたのに。アロンド叔父様を信用しないで突っ撥ねてたら良かったの!? グリムフィード領の一大事だって分かってるのに!
お父様が何を怒っているのか私には全然分からない! お父様は私を館に閉じ込めておけば満足なの!? そうね! それなら私の相手をしないで済むものね!! 私はお父様の事が全然分からないわ!!」
私は子供だと、この時強く思った。
拗ねるし、剝れるし、癇癪を起こすし。赤石祥子の記憶が有っても、やっぱり五歳のプルーフィアなのだ。
絶対に自分は間違ってないと思ってるし、どうしてって思ってるし。
赤石祥子な部分の私も、そんな私に仕方無いと寄り添っているのを感じていたけど、私はここで欠片も譲る気にはなれなかった。
だけど――
「……済まなかった」
――そんな風にお父様が謝ってくるとも思ってなくて、だからその瞬間には酷く吃驚した。
そう言えば、良く考えると怒り方もいつもとは何処か違った。私はお父様がこんなに感情を見せたのには憶えが無い。
まぁ、この後は諸々有耶無耶になってしまったんだけどね。
私は興奮しきっていたし、お父様もお母様もヴァレッタお姉様も負い目が有ったみたいだし。
何にしても、只の癇癪じゃ無くてそこに筋道という味付けが有れば、それは結構強いのだろう。
何と言っても魂の叫びだ。流石にこれには魔術師である事は関係してないと思うけれど。
でも、次の日になって漸く私は自分の扱いが少し変わった事を知る。
「まぁ、街には行ってもいいだろう。但し、必ず誰かを付ける様に」
これから冬に入る所で、それだけが少し残念だったけれど、こうして私は街歩きの許可を得たのである。
ユニークアクセスとか見てると、最新話を見に来てくれているのが大体ブックマークしている人と同じ位。最新話以外を見ている人が居る様に見えるから、ブックマークしてない隠れ読者が居るのかと思っていたけど、最近違うのではと思い始めてる。
全話保存とか繰り返してる人とか、前の話を見返している人とかが実は居るのでは。隠れ読者なんていなかったんや?
ぬぬぬ……毎日更新でも読者は増えないし、何だか予想が外れた気分。




