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洞を穿ちて察するが如く 氷の解けるが如く  作者: みれにあむ
第一部 王国記篇  第二章 三つの街と広がり行く噂
29/95

(29)一族大会議

 昨日の更新分、21時時点ので納得行かなかったから、1時20分頃に差し替えてます。

 ケーキ屋を出てからの千文字程度を追加してるので、よろしくお願い致します。

 これも秋会合より前の出来事。


 日付としては九月二十三日水の日。

 領都グリームには、西都リンシャから先代領主ゴリュウ、東都ファイデンから先々代領主シャーチが集い、グリムフィード領の領主一族大会議が開催されようとしていた。

 因みに西都には先々々代領主マーキスも存命だが、流石に政務からは足を洗っていた。


 尚、西都から領都までは十キロ程、東都から領都までは十五キロ少しだ。

 何方(どちら)も馬車を駆って二時間も有れば集まる事が出来る距離に在る。

 とは言っても、行って帰るだけで一日掛かりとなるとそうそう集まる事は無い。近況を語り合い、挨拶を交わすだけでも時間が過ぎる。


 その中を愛嬌を振り撒いて歩くプルーフィアは、何処でも人気者となっていた。

 一緒に歩くヴァレッタも、にこにこしながら挨拶を交わしている。


「ほら、プルーフィア、シャーチお爺様ですわよ?」

「シャーチお爺様! 絵は今も描いてるの? 新しい絵が有るなら、飾りたいから欲しいのよ?」

「おお、そうかい、そうかい。今は山の絵を描いてるよ。プルーフィアも一度ファイデンにおいで。好きな絵を選んで持って行っても良いぞ?」


「ゴリュウお爺様、石を一杯送ってくれて有り難う」

「ははは、いいさ、山で幾らでも拾えるんだ。プルーフィアが石像を造るのに使うと聞いた時は吃驚したけれどね。怪我はしてないかい?」

「うん、大丈夫」

「出来上がったら見せてくれるかな?」

「うん、この後で見せるよ?」

「ははは、それは楽しみだ」


「イサナお姉さん久し振り!」

「え? 良く憶えてたねぇ。お久し振り」

「探索のお話聞かせて?」

「ふふ、いいとも。女性探索者は少ないから、貴重な後輩候補は大切にしないとね」


 勿論プルーフィアより下に第三夫人との娘が居る事を皆知っているが、正妻以外の扱いは当主それぞれだ。誰もそこに口は出さない。

 しかし、従兄弟(いとこ)再従兄弟(はとこ)、甥、姪を連れて来たのは失敗だったかと後に悩む事になった。


 何故かプルーフィアと、一部の探索者をしている者達が残り、連れて来た他の者達が別室に引き上げた後に聞かされたのは、プルーフィアが魔術に目覚めたが、その魂が知っていた神の名が聖神ラーオでは無かった事や、正しい神の名で祈れば神にお供え物を受け取って貰えた事、プルーフィアが造った神像に祈ってヴァチェリーが再び子供を儲ける事が出来る様になった事だ。

 実際にプルーフィアが造ったエイラール像と、続けて造られたエリーン像を確認し、その流れでララィラーラへ捧げる昼の祈りの場を共にして、自らの目で実際に神の奇跡を確認した時、余計な者を連れて来た事を少し後悔したのである。


「これは確かに大っぴらには言えんのう……」

「教会を嫌ってはいても、聖神ラーオ様は信じている者は普通だぞ?」


 実際に、一族に迎えた夫や嫁、それに一族の人間の中にも、教会或いは聖神ラーオの教えに傾倒している者は多い。

 此処に集まった者の中にも、実際にその眼で確かめなければ、何を不敬を言っているのかと話を聞かず相手にもしなかっただろう者が居そうだ。


「まぁ、知ったからと言って今は何も出来ません。精々教会に何かが有っても祝福を喪う訳では無いという事です。但し、それが草の根に広がれば、無意味な教会を不要と断じる機運も高まりましょう。寧ろそれが無い内は、何をしても失敗すると考えた方が良さそうです。

 言ってみれば十年掛けて噂を広げ、その間に教会自身の失態の証拠を掴む。

 最もその間にグリムフィードが攻められればそれはそれで終わりです。東口が攻められたなら西口に逃げる、或いは西口が攻められたなら東口に逃げる。今はその選択しか有りません。両方から攻められたなら逃げ道が無い。その逃げ道を魔境に、大河グラウプルの流れに求める事にしました。

 と言っても、これも開発に十年は掛かる。そこで魔境に呪われたダンジョンが出現した事にして、十年という時間を稼ぐ事としました」


 説明を続けるイルカサルの長所を挙げるならば、最終的にこうと決められた事ならば、堂々と瑕疵の無い様に説明してしまえる事だろうか。

 数々の質問に、イルカサル自身を叩いてきた言葉で返し、最後まで無難に乗り切った。

 この時イルカサルを支えていたのは、視界の隅に見える満足気なヴァチェリーの笑顔だったのだが、兎にも角にも遣り切った。


 そしてその後に何か良い考えは無いかと居並ぶ面々に問うたのである。


「ふ~む……孫が随分と立派になっておるのは喜ばしい限りだが、残念ながら儂には判断が付かんなぁ」

「そうだな。漸く自覚が出て来たという所か。しかしこれは侯爵様にお縋りする他は無さそうだぞ?」

「ヴァチェリーさんが来てくれたのが有り難い限りよねぇ」

「ヴァチェリーさんが居なければプルーフィアも産まれて無くて、その時は……どうなったんだ?」


 兎に角結論としては、経験と人材が不足している、それに尽きた。

 申し訳程度に、呪われたダンジョン候補地の選定と封印の擬装について報告されたが、それを進めるのは良くても、教会に対して明言する形では何も言ってはならない事が確認されただけだった。


 そして続きは秋会合の後となれば、気になる話題に話は戻ってくるものである。


「しかし、プルーフィアの造った像は凄いな。送った石がこんな美事に化けるとは」

「皆で魔術師になれば王都の騎士団も怖くない事無い?」


 ゴリュウやイサナにそう言われたプルーフィアだったが、首を振って否定する。


「お勧め出来ないわ。私は考え無しに魂との合一なんて試しちゃったけど、後でちゃんと本を読んだら、殆どの人は失敗して廃人になる人も多いみたい」

「「「は……?」」」

「あのね、魂と合一すると、魂の記憶が凄い勢いで流れ込んでくるのよ。私の魂は私と良く似た()の心を持っていたからいいけどね、もし十年生きた大蜥蜴の魂とかだったら今頃私はゲオゲオ鳴きながら四つん這いで蠢いていたかも知れないの。運が良かっただけなのよ」


 そんな事とは知らずにいたヴァチェリーやイルカサル含めて顔色を白くする。


「う~ん……もしかしたら魂の記憶も年月と共に薄れるのかも知れないから、若い内に魔術師になろうとするのは分の悪い賭けで、歳を取ってからなら魂の記憶も殆ど残って無くて成功しやすくなるのかも」

「……しかし、そうするとプルーフィアは、魂の記憶の多くを引き継いだ、最強の魔術師となるのかね?」

「ん? 魂の記憶で役に立ちそうな事は全部言っちゃったわよ? ダンジョンに潜らないと魔力は強くならないから、今は宝の持ち腐れね。いつか探索者には成るけど、体も弱くて力も無いから、今は鍛えているところなのよ」

「ふ~む……ならば今のプルーフィアにはどれだけの事が出来るのかね? 参考に教えてはくれんか?」

「そうね、多分だけどダンジョンに潜った事の無い大人の人が、思いっ切り殴るくらいの力は有ると思うの。でも、ダンジョンに潜った事の有る人や兵士の人ならそんなの「痛い」って痛がる程度の事よね? 木や石を切ろうとしたら――これぐらいの刃にしかならないし、鉄を切ろうとしたら――これぐらいかしら? 彫刻には役に立っても、戦う事は出来無いわ」


 これぐらいと言いながら、指三本分の幅と、殆ど指同士が付きそうな幅を示すプルーフィア。

 それを見て「成る程のう」と言葉を溢すシャーチ。


 プルーフィアは神々の祝福を本の少しの強みと言った。実際にこの会議の中でどんな祝福が有るのかを聞いた事で、出席者はその意味を理解している。

 魔術師である事はプルーフィア自身も大きな強みと認識しているが、魔術師になる事がそもそも賭けであり、それもダンジョンで鍛えなければ役に立たないのなら、逆転の一手とは成り得ない。


 成る程、確かにそんな状況では、こっそり積み重ねる地道な努力と、退路の確保しか無い訳だと、居並ぶ面々は深く納得したのだった。

 早く探索者にしたいのじゃ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 再びの誤字報告になります。 但し、それが草の根に広がれば、無意味な教会を不要と断じる[奇運]も高まりましょう。 括弧部分は機運また気運かと思われます。
[気になる点] 誤字報告を受け付けてないないようなのでこちらに 勿論プルーフィアより下に第三夫人との娘が居る事を皆知っているが、[生彩]以外の扱いは当主それぞれだ。誰もそこに口は出さない。 括弧部…
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