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洞を穿ちて察するが如く 氷の解けるが如く  作者: みれにあむ
第一部 王国記篇  第一章 神の名前と祈りの作法
21/95

(21)生命神の神像

 今回含めて三話で第一章終わりそう。

 結局、エイラール様の神像が出来上がったのは、三日後の昼だった。

 正確に言うなら、まだ色を塗ってないから完成では無い。

 でも、神像を彫り終えた時に、ピコンと音が聞こえた訳では無いけれど、ちょっと体を動かし易くなった様な気がするから、きっと「彫刻」とかのスキルを手に入れたに違い無い。そして恐らくスキル入手のボーナスが器用値なのだ。

 五歳児の器用値なんて三とかそんな物だろうから、それが四になっただけでもきっと体感として感じるのだろう。


 つまり、像を一体彫った事で彫刻を得たと考えるなら、即ちこの像は出来上がりという事なのだ。


 生命の神エイラール様は、命を蔑ろにする行為を酷く嫌うから、神像の素材も木では無く石の方が良い。

 手を胸の前で柔らかく組んで、微笑みを浮かべている他には、特に小道具も必要無い。

 つまり、形としては一番シンプル。


 石像故の造り難さも本当なら有るのだろうけれど、無属性魔術の御蔭でそんな苦労は感じなかった。

 初日は丸一日神像造りに費やしたけれど、二日目からは本の少し勉強の時間も取り入れて、午後のトレーニングも再開したから、実質二十時間程度しか掛けてない。これは中々優秀なのでは無いだろうか。

 その秘密といえば自在に形を変える無属性魔術の刃で、二日目にはもう小刀なんて形だけにも使わずに、千枚通しの針先で位置を指し示しながら神像の形を造っていた。

 更に言うと、その彫っている神像の形も、三次元ホログラムの様に創り上げた無属性魔術の幻に沿って刃を入れているだけだから、言ってみれば三次元の型抜きをしている気分。今はまだ無理だけれど、その内、三次元ホログラムを創り上げた時点で、像の形に切り出す事が出来る様な気がする。


 表面なんて鑢をかけなくても映り込む程にぴかぴかだし、彫刻の技とはとても思えないから本当は何のスキルを得たのか分からない。まぁ、悪い物では無いだろうし、シムビス様の像だってそんなに掛からず造れるだろうから、鑑定を得るのも遠い話では無いね。


 それなら今日はここまでにして、夕方落ち着いてから色を塗ろうと思って小部屋を出た。

 出た直ぐ其処で、メイドさんと目が合う。

 何故かメイドさんがファイティングポーズを取る。

 同じくファイティングポーズを取った私に、メイドさんが聞いてきた。


「今日もですか? お嬢様?」

「ん、鍛えるのよ!」


 ぱたりと手を下ろしたメイドさんが、呆れた様に言う。


「古着を幾つか仕入れましたので、鍛える時は着替えて下さいね?」

「分かったわ!」


 良い事だ。

 運動着が無いと思っていた。


 神像を造り始めて二日目、前日にトレーニングをしなかったから使用人達も油断していたのか、私が捕獲されたのは収穫後の畑の中で存分にエビの稽古をした後だった。

 「鍛えているの」だと告げると、使用人達は身悶えした後に、仕方が無いという顔をする。子供の可愛らしさを利用する私。あざとい。

 しかしその直ぐ後に、使用人達による庭の小石拾いが始まってしまって、私はちょっと反省した。これでは丸で私が我が儘娘そのものだ。


 ただ自戒を込めて「我が儘娘」と書いたプレートを首から下げていたら、それも秒で取り上げられてしまう。

 どうやら私の我が儘は我が儘の範疇には入らないらしい。寧ろそんな我が儘も言わないで気を遣われる方が嫌だと言われてしまった。

 前世の家庭環境も今世での五歳までも、そういう甘やかしとは無縁だったから、これが駄目な甘やかしなのか、子供として当然の奔放さを求められているのか判断に迷う。


 とは言え、私にとって都合が良いのも本当だから、胸にしっかり留め置きながら、ちょっと狡く利用する。

 そうでも無ければ他に同年代の子供が居ない館の中で、疲れ切ってしまう程に運動する事なんてとても出来無い。


 古着は有り難く使わせて貰う事にした。


 因みに礼拝堂は只今絶賛工事中。

 職人達が入って、ガタゴト煩く作業している。

 礼拝堂への入り口が狭いから、親方が中に入れなかったというのがちょっと笑っちゃう零れ話だけど、作業自体は滞りなく進んでいて、後一月有れば完成する見込み。それも殆どの時間はモルタルが乾くのを待っている時間だとか。


 実際に左の小部屋から出て右の小部屋から庭に出ると、既にいい感じの屋根が礼拝堂から出る辺りまで続いている。其処を素通りして庭まで出ると、既に何人もの使用人達や、休憩に入った職人達が待機していた。

 庭師のパルックお爺さんも、その中に交じっている。


 お父様とネイサン叔父様が良く言い聞かせたらしい。

 職人達にも、パルックお爺さんのお爺さんの話を言い含めているのだとか。


 私が心配した聖神の教えにも意義が有るのではとの疑問は、職人の親方が鼻で嗤って吐き捨てた。治癒も祝福も聖神ラーオが関係しないなら、あんな糞教会は潰してしまえと。

 そうは言っても教会が無ければ、この国に治癒の奇跡も職能の祝福も根付いてなかったかも知れないのだから、聞いた話だけで判断は出来ない。私はまだ教会の中を見た事すら無いのだから。


 太陽が一番高い時間に成ると、今日が持ち回りで黄色のスカートに履き替えたメイドさん達が、くるくる回ってお祈りする。

 それに合わせてお祈りを済ませたなら、食堂へ移動してのお昼ご飯。メイドさん達がララィラーラ様へ捧げたのと同じ肉詰めの丸いパイが食卓に並んだ。


 古着に着替えての午後のトレーニングでは、付き合って走ってくれる使用人も出て来たけれど、エビの稽古には誰も付き合ってくれない。

 そもそも私もエビの稽古が何の役に立つのか分かっていない。

 それでも普段使わない筋肉を使って、息が切れる程に疲れるのだから、鍛錬にはなっていると信じている。


 まぁ、今日のメインは鍛錬じゃ無い。この位にしておいて上げよう。


 お風呂に入って着替えたら、もう一度小部屋でエイラール様の神像の仕上げをする。

 髪色は金と銀の間。そんな色の絵の具は無いから、黄色をメインに幾つかの色を混ぜて代用する。大丈夫、映り込む程艶々しているから、ちゃんと金銀の髪に見える。

 他に塗るのは肌の色と靴くらい。唇にちょっと紅を差して、確か瞳は赤だった様な。


 悩みつつも「完成!」と声に出すと、丁度扉がノックされた。

 さあ、夕ご飯の終わりに御披露目しよう!

 因みに、魔術の刃を創れても、魔物にも魔力が有るからそれが抵抗となって無双は出来ません。(本人はチートだとか思っているかも知れないけどね)

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