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洞を穿ちて察するが如く 氷の解けるが如く  作者: みれにあむ
第一部 王国記篇  第一章 神の名前と祈りの作法
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(17)太陽神の神像

 きょ、きょ、きょ、きょう、は、ば、ばん、バン=アレン帯の誕生日ーーーーー!!!!!

 結局その日は泣き疲れて、大した事は出来無かった。

 庭師のお爺さんに、次の日は半日付き合って欲しいとお願いしたくらい。

 代わりに早くからベッドに入ったから、今日はしっかり目が覚めて、朝ご飯の前に準備はすっかり済ませている。

 手提げの籠に、鋏とナイフ、他には俎板代わりの小さな板切れ。後の材料はお庭で揃う。


「プルーフィア様、そんな大きな挟みで大丈夫でしょうか?」

「うん、切る時はシオンにお願いしてもいい?」

「ふふ、それなら、まぁ、お任せ下さい」


 お母様が、侍女のシオンを私に付けてくれたから、きっと行き詰まる事もない。


「ふーん……私もお昼には戻って来ますから、それまでは待っててよ?」

「う~ん、残念。太陽が一番高い時にお祈りしないと駄目だから、遅刻をしたらそれまでね」

「え~?」


 ヴァレッタお姉様は館が建つ丘の麓で、寄子の子供達と一緒にお勉強だ。

 丘を上がって来るだけだから、直ぐに帰って来れるけど、それがお昼前とは限らない。


 因みに貴族でも無い領民達は、十歳から十二歳の三年間、領に三つ有る各街の学校に通っているらしい。学校で優秀な成績を修めて、十二歳で授かる祝福も優秀なら、王都の学園行きも視野に入るそうだ。

 王都の学園に行っても仕方無いと思うけどね。

 一応十三歳から通う学園は領都にも在って、寄子達や優秀な領民が通うらしい。

 お兄様達が何方(どちら)も王都の学園に通っているのは、実は私を王都に住まわせる計画が有ったのだとか。

 全部、つい昨日ヴァレッタお姉様に聞いた話だ。


 きっと私の事を思って実家と引き離そうとしてくれたのだろうけれど、ゲームのプルーフィアがそうなっていなかったのは、恐らくプルーフィア自身が抵抗したに違い無い。

 でも今世では私は王都の学園に通うつもりも無いし、通わなくてもいい状況になっている。

 う~ん、お兄様達はどうするつもりなんだろう。領に戻ってくるつもりは有るのかな?


 これからは本当に手が足りなくなりそうだから、戻って来てくれたらネイサン叔父様も本当に助かると思うのだけど、そこはやっぱりお兄様達の気持ち次第かな?


 そんな事を考えていたら、朝ご飯が終わっていた。

 スプーンが勝手に口の前へと運ばれてくるんだから、あっと言う間だ。


「早めに帰って来ますから、本当に待っててね!」

「頑張れ~」


 ヴァレッタお姉様を見送ったなら、籠を手に取って庭に出た。



「お嬢様。太陽の様な丸い花という事でしたら、此方(こちら)のニグの花は如何でしょう?」


 約束していた庭師のパルックお爺さんは、曲がった腰を伸ばしながら、黄色い葱坊主の様な花を見せてくれた。

 向日葵(ひまわり)の様な花を期待していた所に予想外だったけれど、確かにこれは太陽っぽい。

 しかも葱坊主と同じで食べられるから、太陽の恵みという意味でも良い選択。

 どうせなら全て食べられる物で作ろうと、畑の中を見て回る。


 ええ、畑。或いは果樹園。

 他領からのお客なんて来ない庭は、美味しく食べられる草木で八割が占められていた。


「お爺さんは丸くて太陽っぽいなら、野菜でも果物でも構わないから持って来て」


 そう私が告げると、パルックお爺さんは一度考えてから、やれやれと果樹園へ向かって歩いていく。

 その間に私は神像の材料を集めよう。

 頭はニグの花で良いとして、足もニグを使えば袴に見えて丁度いい感じ。腕はアスパラガスに似た茎物で。服は何種類かの菜っ葉を重ねよう。胴体に厚みを持たせる為に柔らかめの菜っ葉を巻いて、各所は細く裂いたニグで縛っていく。菜っ葉の服を着せた後も、ニグを帯にしてぎゅっと縛る。


「ねぇ、どう?」

「凄く上手ですわ」


 鋏とナイフを駆使して手伝ってくれていたシオンに問えば、結構な高評価を戴いた。

 でも、これは練習。萎びた神像でお祈りは出来無いから、お昼直前にもう一度作る予定。


「こんなもんでいいかの?」


 丁度戻って来たパルックお爺さんが、籠の中を見せてくれる。丸い野菜や果物が色取り取りに詰まっている。

 緑や青は違うからと取り除こうとしたら、皮を剥けば中身は黄色くて太陽みたいだとの事。

 確かに言われてみればその通りだ。


「しかし、お嬢様は一体何をしようとしておるのかいのう。料理をしたい訳では無さそうじゃが」

「……。

 太陽の神様にお供え物をしてお祈りするのよ?」

「ふぅ~……やはりそうか。その人形は――うむ……。

 やめておいた方がええ。神様にお供えなんぞしても、何もええ事は起こらん」


 下手に話すと巻き込む事になりそうだから、太陽の神様と言葉を濁した。

 パルックお爺さんは、そんな私が手にしていた野菜の人形に目を向けながら、深い深い溜め息を洩らす。

 何か事情が有りそうだと、私はその理由を訊く。


「それはどうして?」

「……もう随分と昔の事になるが、儂の爺様もお嬢様と似た様な事をしとったのよ。

 草花で人形を作ってな、野菜も果物も太陽の恵みじゃと神様にお供えしては感謝の気持ちを捧げとった。

 そんな或る日の事じゃ。爺様が随分と興奮した様子で畑から帰ってきおった。爺様が言うにはラーオ様がお供え物を受け取ってくれたと、目の前でお供え物がすぅっと消えたと、そう燥いどってな、皆してそれは良かったと言い合ったもんじゃよ。

 ……それから半年も経った頃にな、突然爺様が教会から呼び出されたのじゃ。神様にお供え物を受け取って貰えたと言うならやってみせろとな。

 爺様も何十年とお祈りして只の一度しか受け取って貰えんかったものを、そんな無茶な話は無いと言うとったが、教会の奴らは聞く耳を持たんかった。結局やらされた祈りでお供え物は受け取って貰えず、爺様は神問裁判に引き摺り出されて、雷に打たれて死んでしもうたよ。

 爺様の何が神様の勘気に触れたのかは分からんが、爺様が罪人扱いされた後でも太陽の恵みは何も変わらんかったわ。儂にはもう何が何やら分からんが、神様の関わる事には手を出さん方がええ」


 パルックお爺さんの昔語りに、私はシオンと顔を見合わせる。

 小さくシオンが首を振るので、ここでは何も言わない事を決めた。

 因みに夜は今でもお母様とヴァレッタお姉様、それと時々シオンも一緒に眠っている。

 昨日は私が早くにベッドへ潜り込んでしまったけれど、それまでは四人でお喋りしていたから、何が起きているのかは当然皆知っている。


 まぁ、お父様とは違うからね。

 お母様は先の事を考え過ぎて何も出来無くなったのだから、何も考えない人と同じには出来無い。そこは信用している所。

 間違っても洩れてはならない情報が、外に出る事は無いと思っている。


 パルックお爺さんは、その点で言えばまだまだ信用が無い。

 だって為人(ひととなり)を全然知らないから。

 もしかしたら色々と教えた途端、教会に殴り込みに行かないとも限らない。

 いつか教えるとしても、今はまだ秘密の話だ。


「お爺さん、大丈夫よ? お爺さんが忠告してくれたから、もしお供え物を受け取って貰えても言いふらしたりなんかしないわ。それにちゃんと受け取って貰えるかもって思ったら、とっても楽しみになってきたわ。

 ふふ、でもお爺さんも無茶ね。そんな話、教会に聞かれたら大変よ?」

「ふん、年寄りになると我慢なんぞ必要無くなるんじゃ。

 それに儂だって御館様の下で無ければ、口を滑らしたりするものか」


 そんなパルックお爺さんについ噴き出してしまって、和やかに時間が過ぎて行く。

 本当は罪人とされたお爺さんの事を聞きたかったけれど、パルックお爺さんに秘密とする事にした以上、今はまだ何も聞けないから。

 でも、今日の実験は恐らく成功するだろうという確証が得られた。

 ララィラーラ様は、ラー様と略称で呼ばれる事も多かった。

 きっとパルックお爺さんのお爺さんは、偶々正午のその時間に、太陽神のラー様へお祈りを捧げたに違い無い。


 お供え物を受け取って貰えたのは、間違い無く誇るべき事。

 それを罪に貶めたのは、憎むべき罪業だ。

 教会が神の名前を知らないだけなら、それは仕方の無い事と言えるだろう。

 しかし神の名を騙って人を裁くと言うのなら、それは思い上がり以外の何物でも無い。


 その現状を変える一歩の為に、私はララィラーラ様の神像を作る。

 そして練習用の神像が、また一体出来上がる。

 チョコレートの準備は良いかー!!

 では、腰に手を当てて、溶かしたチョコレートを一気にっ!!!!

 くは~~~!!!



 やりませんよ?

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