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洞を穿ちて察するが如く 氷の解けるが如く  作者: みれにあむ
第一部 王国記篇  第一章 神の名前と祈りの作法
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(13)本の少しの強み

 チートにはしない。少なくとも武力チートには。

 そのまま旧礼拝堂の中で、部屋をどうしようか考えていた。

 今は石壁そのままだけれど、モルタル塗って壁の隙間は硝子窓にして、床にも絨毯を敷いたら凄くお洒落な部屋になると思う。壁紙を季節で変えてもいい感じ?

 聖神とやらを祀っていたらしい南側の凹みは、背面のステンドグラスをそのまま扉に付け替えたら、庭への出入りもし易そう。

 靴を脱いで寛ぎたいから、扉の外に庇を設けて、土間の様にしてもいいかもね。

 暖炉を入れる程では無いけれど、そこは生活魔法に期待しよう。


 そんな事を考えていたら、何時の間にかお昼の時間になっていた。


「プルーフィア様、やっぱり此処に居ましたね。昼食の支度が調いましたので食堂に行きましょう」


 迎えに来たシオンに、もうそんな時間に成ったのかと驚きつつ、素直に旧礼拝堂を後にする。


「今日は何か良い事は有りました?」

「ええ。お宝が有ったわ。鑑定出来る人は誰か居るかしら?」

「鑑定……は心当たりが有りませんわね。街の商人でも呼びましょうか?」

「居ないならいいわ。自分で鑑定する時までの楽しみにするもの」

「プルーフィア様は商人になるお積もりなの?」

「商人にならなくても鑑定は出来るわよ」


 言ってみれば、これは私だけの知識チート。尤も、別の国や大陸にでも行けば誰でも知っている事かも知れないけれど。

 シオンの言葉から推測すると、それが商人なら商売の神シムビス様の事を知らなくても、鑑定は出来る様になるらしい。でもシムビス様の事を知る私なら、商人で無くてもお祈りとお供え物で鑑定を得る事が出来る筈。

 私の知る全ての神々から祝福を戴く事が出来たなら、多少は生き易くなるだろう。


 そう、多少だ。劇的にとは行かない。

 そんな無双チートと縁が無いのが、この世界という物だった。


 何れ探索者になるつもりの私の持論を言わせてもらおう。

 まだ鑑定の出来無い私には、この世界にレベルという概念が有るのかは分からないけれど、ゲームではそれぞれのダンジョンやフィールドには推奨レベルが設定されていた。

 推奨レベルよりも自分のレベルが低ければ経験値も多く貰えるが、推奨レベルよりも高ければ殆ど経験値を得られない。そういう設定だと思って欲しい。

 そんな中で効率的に強くなって行くには、常に自分よりも推奨レベルの高い強敵に立ち向かっていく必要が有る。

 それを可能にする為には、レベルの差を引っ繰り返す何かしらの強みを持たなければならない。


 例えば強い武具。

 例えばパーティという仲間。

 例えば鍛えた技量。


 そういう物と較べて、神様の祝福は余りにもささやかだ。

 便利は便利。それは間違い無い。

 でも、鑑定が使えても、数打ちの剣の中での良品を見分けるとか、魔物の性質を予め知るとか、価値の有る収集物を見分けるとか、経験を積めば鑑定が出来無くても何とかなる事ばかり。

 虚空庫も持ち物を気にしなくて良い利点は有るが、ソロに拘らなければポーター(運び屋)を雇えばいいだけだ。

 だからこそ、全ての祝福を集めたとしても、多少の強みに収まってしまう。


 元より未熟児として生まれた為に、同年代より小さく弱いらしいのは大きな弱み。

 魂との合一を果たして魔術師として目覚めたのは大きな強み。

 そこに加える本の少しが神々の祝福。

 本当に貰えるかは、それはこれからのお楽しみ。


 最終的には実家の力を借りて高価な装備を揃えるのも有りだけど、出来れば自分で何とかしたい所だ。

 それは何と言うかゲーマー的に。今日はとても大切な日と勇者が起こされる歳よりも、十年以上も早いのだから、何だって出来る筈。


 でも、流石に五歳で探索者に成れる筈は無いから、それが準備期間になるんだろうと、そんな事を思っていた。



 何時の間にか私がシオンの前を歩いていて、食堂の扉は私が開ける前に控えていたメイドによって開かれた。

 目に映るのは、大テーブルの向こうで戯れるお母様とヴァレッタお姉様の姿。

 タタッと走ってそこに混ざる。

 前と後ろから抱き締められる至福。


「はぁ~~、癒されるわ。私がお仕事している間、プルーフィアもお膝の上にどうかしら?」


 それは中々に心惹かれる提案だ。

 けれどこの時は、むむっと考えるその前に、珍しく食堂に居たネイサン叔父様に遮られた。

 見れば今日はリリカさんも一緒に、夫婦で食堂にやって来ている。


「いや、プルーフィアはこの後俺と一緒に執務室だな」

「今日は私がお手伝い致します。色々とお話も聞かせて下さいね」


 多分私はお父様と朝に話した件だろう。

 そしてお母様は十日溜めた仕事を熟している所だから、この機会にとリリカさんがやって来たに違い無い。

 目は笑ってないけれど。

 口元の笑みが寧ろ怖いけれど。


「皆揃ったから、食事にしようか」


 そんな状況に気が付いて無さそうなお父様の声で、お昼ご飯が始まった。

 この所いつもの様に、私はお母様の膝の上で。

 実に至福。

 最近はヴァレッタお姉様もぴったり椅子を寄せてきて、私の口にあーんをする。

 私もヴァレッタお姉様にあーんのお返しをする。

 誠に至福。


「美味しそうに食べるね。そう言えばプルーフィアは倉庫の移動を見ていたんだったね。何か面白い物は見付かったかい?」


 お父様からもシオンと同じ様な事を聞かれる。

 何故かネイサン叔父様がお父様を呆れの入った目で見ていた。


「お宝を見付けたわよ? 選り分けておいたけど、他のもまだ捨てないでね。

 シャーチお爺様の絵が一杯有ったけれど、お爺様に送らなくていいの?」

「む、お爺様の絵か。確かに送るのも手だな。まぁ、今頃は新しく描いた絵で一杯かも知れないが。

 プルーフィアの見付けたお宝というのも見てみたいな。後で一緒に持って来てくれるかい?」

「誰かが運んでくれるのよね?」

「ああ、言付けておこう」


 そんな会話から始まったお昼ご飯は、いつもより賑やかで、いつもより少し美味しく感じたのだ。

 消えたストックを土日で補うのがこの作品のスタイルですね。

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